論考

Thesis

自然をいかした持続可能な地域社会への挑戦

1.はじめに

 先日国連大学において、「ゼロ.エミッション&パーマカルチャーシンポジウム」(株式会社ヒューマンルネッサンス研究所主催 国連大学 ジャパンエコロジーセンター後援)が開催された。
 会議の冒頭には、成田重行ヒューマンルネッサンス研究所代表が、オーストラリアにおけるパーマカルチャーの実践活動などを紹介しながら「個の自立と全体の調和を考えながら、自分達の手で街づくりをデザインする、新しい地域社会のありかたを考えていきたい」と挨拶。戦後の経済成長の中で失われつつある、資源循環型の生活や地域経済を、もう一度再確認するという今回のシンポジウムの意義を明らかにした。

 パーマカルチャーとは、(パーマネント アグリカルチャー カルチャー)を合成した言葉である。一般的には、多様な要素を互いに協力しあう関係に配置し、生態系が本来持っている生産力を最大限に引出しながら、持続可能な生活環境を生活者自らが作っていくデザイン体系であるとそう理解されている。
 今回来日したビルモリソンが、パーマカルチャーの体系化に着手したのは1974年、今では発祥の地であるオーストラリアだけでなく、世界中に普及しつつある。
 日本においてもパーマカルチャー.ジャパンが設立され、「安全な食べ物を自分でつくること、農地や里山などを修復し豊かな風土を再生すること」などを活動の柱とする、意欲的な取り組みが始まろうとしている。

2.パーマカルチャーとは?

 次に今回のシンポジウムで行なわれたビルモリソン氏による講演であるが、氏の実践活動に基づくそれは、大変興味深いものであった。
 以下講演の内容について、その概要を述べてみたい。

  持続可能なシステムとは、「システムの生涯を通してそこで生産されるエネルギーが、自らを維持するのに十分であるもの」と定義され、これ以外にはない。
 60年代の後半、こうした持続可能なシステムの考え方が出てきた。v また60年代には、世界にどれだけ有用な植物があるかなども少しずつ分かってきた。 アジアでは30~40の品種が生産されているが、実際は3万種類の有用な植物があることが分かっている。
 さらに70年代の初めには、現代農業の欠陥が次第に明らかになってきた。
 例えば日本が輸入している大豆を作るために、アメリカでは大規模な塩害の被害が出ている。また世界各地では、有用な森林を伐採して大豆畑が作られている。そこでは、3日おきに殺虫剤をまき、36種以上の農薬を使用している。 昔は大豆というものは、水田の畦道に植えていたものである。
 日本の食欲をみたすために、他の国々で深刻な環境破壊がおこっている。
 日本向けの大豆がメキシコでどうやって作られているかを知れば、皆食べる気がしなくなるだろう。
 しかしこのような生産は、もう限界にきており、そう長くは続かない。
 これからは、生態系の仕組みをまねた農業、社会システムを作っていく必要が有る。
 具体的には、3~4千種の食物を実験的に栽培し、食卓には常に50種以上がのっているような形でリスクを分散し、世界の食糧危機に備えなければならない。

 このような取り組みが、70年代後半オーストラリアのタスマニアで始まった。
 そして「パーマカルチャー1 2」と題する本が出版され、タスマニア大学で2人の教授による授業も始まった。
 90年には教授は数千人にまで増えている。
 今パーマカルチャーの実践者は、世界中で増え続けている。
 その理由は、こうである。
 私達は初心者に72時間のコースを用意し、それを終えた人に認定書を授ける。
 そしてその人達は、地域に戻ると、自分が先生になって教え始めるのである。
 パーマカルチャーは、都市部でも砂漠でもアマソンでも、人が住んでいる所ならどこででも始められる。
 必要なのは信念だけである。そして妥協をしないこと。
 そこからくる人生の満足度は、何よりも素晴らしい。

 パーマカルチャーは都市部においても、次のような取り組みを奨励している。
 「どのような街にも使われていない土地が有る。
 公園、ベランダ、家屋の表や裏など。このような場所をパーマカルチャーの手法で、食べることができ、装飾的にも美しい食物を配置することができる。」
 そのほか、様々な手法でエネルギー利用の効率化をはかり、自然エネルギーを最大限に利用することなどが出来る。 また新しい郊外地区を設計することもできる。
 アメリカのデイビスにあるビレッジホームや、オーストラリアのクイーンズランド州にあるクリスタルウォーターズは、そのように作られている。

3.山形県長井市におけるレインボープラン

 山形県長井市におけるレインボープランとは、地域資源を活用し、循環型の経済を作っていこうとする意欲的な試みである。
 長井市の人口は3万7千人。5000世帯が街に、4000世帯が農村に住んでいる。 レインボープランは、「街と農村、生産と消費、20世紀と21世紀に3つの虹をかけよう」という意味を持っている。
 具体的には、長井市の全家庭から出る生ゴミを一括して堆肥化し、それを近隣の農家で使い、とれた有機野菜は地元の幼稚園や病院、一般家庭で消費するというサイクルをつくろうとするものである。
 これまでは大都会に運ばれていた長井市の農産物を、地元の人に食べてもらうことを優先することで、新しいつながりが生まれている。
 レインボープランでは、「安全、安心、自然の栄養」を重視し、これまでの「みばえ、規格、」を重視する価値観からの転換をはかっている。
 またこの「生ゴミリサイクル」のシステムに参加することで、消費者は「土づくり」にも参加していることになる。
 レインボープランは、96年冬から本格的に動き始める。
 この動向を私も注意して見守っていきたい。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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