論考

Thesis

エココミューンの実践

1スウェーデンのエココミューン

 エココミューンのネットワークは、1990年、16のコミューンによってスタートし、95年には「エココミューン機構」として、20のコミューンの参加を得て正式に発足した。
 そして、1998年現在では、この組識に加入するコミューンは、58にまで増えており、さらに少なくともその倍に相当する数のコミューンが、加入の準備をしているという。
 エココミューンとなるに必要な条件は、「ナチュラルステップの4つのシステム条件を、将来的にみたすことを宣言し」「これを実現するための行動計画を持っている」ことである。
 ナチュラルステップでは、これらのエココミューンと科学者の間で、100人ほどの見解を統一し、「アジェンダ21コンセンサス文書」を作成した。
 また、ナチュラルステップでは、全国のコミューンと協力して、「グスタフ国王環境コンペ」(自治体の環境コンテスト)を開催しているが、ここで表彰されているのは、ほとんどがエココミューンであるという。

2エココミューンとなるためのプロセス

 エココミューン機構では、これまでに培ってきた経験から、エココミューンとなるためのプロセスを、以下の段階に分けて説明している。

1 知識の普及

(全体をみる視点、システムアプローチ、エコロジカルスキル)

2 問題発見

3 変革のための気づき

4 実行

5 未来に向けて、構造の変化(グリーンエコノミー)を志向する

 多くのコミューンでは、コミューンの職員の勉強会や、地域のスタディサークルの中で、何度も何度も「未来に向けた議論」を繰り返す中で、「持続可能な社会」のイメージが少しずつつかめてきたと言う。
 エココミューンの代表的な推進者である、報告者のLahti氏は、「ぞれぞれの地域、組識が、オリジナルな解決策を持つ」ことの重要性を主張しており、ナチュラルステップや、アジェンダ21は、これをサポートする役割を持っていると位置づけている。
 まさに、「地球規模に考え、地域から行動する」であるが、かけ声だけでなく、実際にアクションをおこしてきたのである。

プロジェクトをすすめるにあたっての、キーとなる要素は、

1 一人一人のもつ知識

特に全体から部分をみる視点や、システム的なとらえかた

2 一人一人のもつ経験

3 情報

どこでサポートがえられるか ネットワークの構築 パイオニアプロジェクトなど

4 態度

勇気 忍耐 ユーモア 批判をしない

5 参加と民主主義

相互の信頼感 対話の重視

である。
 そのためには、ライフスタイルを変えることで、事態が改善の方向に向かっているという実践を、少しでも多くつんでいくことが重要であるという。

3エココミューンのめざすもの

 エココミューンは、最終的には、世界の貿易システムや、経済構造の変化を含めた、「グリーンエコノミー」を志向し、これを地域から提案し、情報発信していくのが目標である。
 現在でも、「地域にある資源を、最大限有効に活用するシステムを、いかに作っていくか」に着目し、「地域の資源や、リサイクル資源を使ったグリーンキャビン」や「有機農業の実践農場」を中心とする、グリーンツーリズムを展開するなど、多くのアイディアが地方から生まれている。
 このように、ビジョンとそこに至るまでのプロセスが明確であるという点において、スウェーデンにおけるエココミューンの取り組みには、多くを学ぶことができるだろう。

Back

吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

Mission

環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

プロフィールを見る
松下政経塾とは
About
松下政経塾とは、松下幸之助が設立した、
未来のリーダーを育成する公益財団法人です。
View More
塾生募集
Application
松下政経塾は、志を持つ未来のリーダーに
広く門戸を開いています。
View More
門