論考

Thesis

デンマークの環境教育

1 デンマークの環境教育

 ヨーロッパの環境先進国で行われている環境教育の見事さには、訪問するたびに驚かされている。
 将来世代が生き残るために、今何をなすべきか、何を伝えるべきかを長期的に考えているこれらの国と比べると、日本は例えば廃棄物対策一つとっても、対策が場当たり的で、長期的視野に欠けるように思う。
 世界でもっとも環境意識が高い国のひとつといわれるデンマークでは、1994年に新しい法律が導入され、「すべての教育に環境への配慮をいれる」という方針が決定された。そして、歴史にも生物にも化学にも物理にも、すべての教科に環境を入れることが、指導されたのである。
 日本では、環境教育といえば、ゴミの分別やリサイクルだという考え方が一般的ですが、デンマークでは少し違う。
 例えば、小学5年生むけのカリキュラムでは、川をめぐって利害の異なる立場(開発したい人、したくない人など)に分かれ、互いにインタビューによる事前調査をした上で、ディベートを繰り広げる。これによって、デンマークの子供たちは、自分の意見を主張し、相手の意見をよく聞くという力を身につけていくのですが、これはもう、子供たちを個の確立した市民に育てる教育といっても良い。

2 エスラムーゴ環境教育センター

 1960年代の終わり頃から、デンマークでは企業の廃棄物の不法投棄などによる地下水汚染が深刻になってきた。そこで、この頃からデンマークでは、市民が中心となって、デンマークの自然を回復させようという運動が始まったのである。
政党もこれらの動きをみながら、環境問題をとりあげるようになり、全国に150の自然学校が作られ、そこで自然を守る活動が継続的に行われるようになった。
 この自然学校(ネイチャースクール)は、国と自治体の助成によって運営されており、そこで誰もが鳥の観察をするなど、自然の生態系の仕組みを学ぶことができる。また、この自然学校とは別に、広い意味での環境教育のための「環境学校」というものが、デンマークではやはり行政の支援をうけて設立されている。
 この環境学校には、通常大学院を卒業した生物学者が数名勤務しており、学校の子供たちばかりでなく、学校の先生もここで研修を受けている。
 私が訪問した、コペンハーゲンから車で2時間ほど走った、エスラムーゴーという場所にある「環境教育センター」では、6名の生物学者がスタッフとして働いており、教材の開発やワークショップの実施など、さまざまな活動を行っていた。
 このセンターは、学校の先生にかわって子供たちに授業をしたり、川の生物を調べるワークショップに連れ出したりできるよう、専用の「環境バス」を持っている。この環境バスに乗って、子供たちは実験をしたり、フィールドに出かけて行くのである。
 私もそれに乗ってみたが、「となりのトトロ」に出てくるネコバスのようで、とても楽しい気分になった。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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