論考

Thesis

デンマークの環境教育 その2

1 デンマークの農業大学

 今回は、デンマークがリードをとり、EUレベルで試みようとされている、大学間での新しい環境教育の取り組みについて報告したい。
 前回のデンマーク訪問では、国立農業高等学校のジョンポーター教授を訪ねた。
 この学校は、1856年に設立された、由緒ある農業専門学校である。
 デンマークでは、大学は5つしかなく、それも大学院大学となっており、日本のイメージとは少し違うようである。この国立農業高等学校は、大学という名前ではないが、日本で言うところの大学に相当するもので、デンマークでトップレベルの質を誇っていると聞いた。
 ヨーロッパでは、常に優秀な研究者の行き来が行われており、ポーター教授も実はイギリス人で、環境管理学の専門家としてデンマークに招かれてきたという。
 現在、この大学では、環境によい農業のありかたを研究、教育するために、総合的な教授法をつくりあげるプロジェクトが進んでおり、教授もそれに参加しているとのことだった。

2 大学間での相互協力

 現在、進んでいるプロジェクトの中には、オランダ、スイス、イギリス、スウェーデン、デンマークなどの国が協力して、「環境共生型農業のコース」を作り上げるというものがある。
 このコースでは、1学期をデンマークで、そして2学期をドイツの大学で単位をとることが可能になると聞き、驚いた。
 授業の内容は、農業だけではなく、上級学年になると、ビジネスや農業経営、流通など幅広くなっていく。このコースは5年間で、3年で学士が、残り2年で修士が取得できるとのことだった。
農業のメインは、「環境によい農業のありかた」で、生態系や資源管理など、実習を交えながら学んでいくそうである。
 デンマーク政府は、このコースに、途上国から留学生を受け入れており、このお金は毎年、ダニーダ(デンマーク援助基金)というファンドから出ている。
 ここで学んだ人たちの就職先であるが、直接農業従事者になるケースは少なく、市町村の環境政策課につとめたり、環境関連のコンサルタントになるそうである。
 また、途上国の農業を指導する卒業生も多いと聞き、感心した。

 このように、デンマークでは農業そのものが大きな環境破壊をひきおこすという認識のもとに、持続可能な農業のありかたを懸命に模索しようとしている。
 日本では、「農業はエコロジカルな産業」と信じている人が多いような気がする。
 しかし、除草剤の中に含まれる除草剤や成長抑制剤などをみれば分かるように、現在の農業は多くの問題を抱えている。今後は、補助金一つにしても、いかに「持続可能な農業」へのきりかえをすすめていくか、という新たな視点が必要ではないだろうか。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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