Thesis
1.はじめに2.カールヘンリク.ロベール「ナチュラルステップ基礎セミナー」
1.はじめに
ナチュラルステップ設立準備委員会では、来年秋の設立をめざし、その第一歩として11月3日~8日、創立者のカールヘンリク.ロベール氏を招聘し、東京と大阪で幾つかのセミナー.シンポジウムを開催した。
ロベール氏来日中のスケジュールは、以下の通りである。
かなり過酷なスケジュールであったが、ロベール氏ははじめての訪日に満足そうだった。聞けば彼は、スウェーデンにおける空手のチャンピオンであり、「いつか日本に行ってみたい」と子供の頃から思い続けていたそうである。
今回の訪日は、短期間でアレンジしたわりには、人も集まり、ひとまずは成功であったと考える。
私自身は、準備委員会のスタッフとして、インストラクター養成の第一段階である「基礎セミナー」をはじめ、東京での環境マネジメントトップセミナーを除く全てのセミナーに参加した。
今回は、ナチュラルステップ.アメリカからも、スーザン.バーン氏という、ナチュラルステップの環境教育を、今年の2月から三菱アメリカに導入するコンサルティングを行っている女性が来日し、幾つかのシンポジウムで講演を行った。
スーザン女子が来日したことで、参加者は、スウェーデンにおける幾つかの企業の事例と、アメリカにおける企業の事例をまとめて知る事が出来、大きな刺激を受けた。
日本能率協会主催のセミナーのアンケートをみると、その他の講演者と比較しても、ロベール氏の講演に対する評価は高く、「国際的で日本にはない発想」「哲学的で感銘を受けた」などの感想があがっていた。
今後はこれらのアンケート結果等を参考に、日本の市場を把握しながら、いかにナチュラルステップの環境教育を日本流に咀嚼していくか、皆でアイディアをだしあい、具体的なプログラムを作成していく予定である。
現在企業では、国際標準としてのISO14001の認証取得が急ピッチで進んでおり、ISOの中では従業員への階層別環境教育の必要性がうたわれている。
ISO14001は、マネジメントシステムを構築することであり、「企業は何をめざすべきか」を明確にするものではない。それに対し、ナチュラルステップの環境教育は、基本的なシステム思考や、将来の企業がめざすべきビジョンを提唱するものであり、ISOとは相互補完関係にあるとの見方が、スウェーデンやアメリカでは強くなっている。
私自身は、ISOの勉強も継続しているので、このテーマで環境教育プログラムを作ってみたいと考えている。
2.カールヘンリク.ロベール氏による「ナチュラルステップ基礎セミナー」
次に、4日、5日と行われたナチュラルステップ基礎セミナーについてである。
今回の基礎セミナーの参加者は約30名。費用は3万円である。
将来インストラクターをめざす場合には、この基礎セミナーを受講していることが前提となっている。
私は、ナチュラルステップの基礎セミナーを受講して、ますますその環境教育プログラムに興味を持った。
ここでプログラムの内容について、簡単にまとめてみたい。
基礎セミナー一日目は、
といった内容にそって行われる。
それぞれの段階における講義の内容は、次のようなものである。
1.導入
人間の生活は、自然の循環の一部へ統合されているが、それをささえているのは、太陽をエネルギー源とするさまざまなプロセスである。中でも重要なのは、水循環および動物と植物の間になりたっている化学的物質循環である。
自然界の物質循環がたもたれているのは、生命に必要な栄養物や、さまざまな排出物がこうした永遠の循環のなかで合成され、分解されているからである。この自然界のバランスを保つ動き、「ホメオスタシス」が、人間の生活をささえる基盤であるが、それが今、脅かされつつある。
入手が困難になっていく天然資源、減少する緑、生態系循環への漏出が続いて、高濃度化する分子単位の廃棄物(分子ゴミ)、これらの負の遺産に対し、何らかの策を講じる必要があることは明白であり、これ以上問題を先送りすることはできない。
地球の歴史を振り返ってみれば、10億年前にはじめて地球に単細胞が誕生し、それから気の遠くなるような歳月をかけて、オゾン層が出来、人類が誕生した。
人類はこの進化の歴史を凄いスピードで逆戻りしており、地球を太古の状態に戻しつつある。
(1で確認されたこと、物質は消滅しない、物質.エネルギーは拡散するなどの科学的な原則、自然の循環)
2.循環思考
それでは、我々の行動のどこに問題があるのか、考えてみよう。
ナチュラルステップは、どうすれば現在の「持続不可能な社会」から逃れられるのか、そのシステムを作り、これを企業や自治体に提唱している。
まずこの部屋(あるいは一つの美しい庭)を例にとってみると、この部屋を破壊してしまうのは、次の3つの方法がある。
これらの状況を回避するには、次の条件が必要不可欠である。
私達の住む現代社会と言う「持続不可能な社会」をとらえる際に、重視しなければならないのは、「全体を見る視点」である。
経済学者や多くの政治家は、増え続ける一方であるごみの山を見て、議論をしている。しかし、その反対には掘り尽くしてしまった資源、深く掘るためにますます必要になるエネルギー、劣化する地球といった現実がある。(一枚の絵による説明) 企業や自治体は既に、税金.資源や廃棄物処理費用の上昇、保険会社や金融機関の条件の強化などが、自分達の日常生活に影響を与えていることに気づいている。
ここから、「持続可能な社会」を構築するために、我々がめざさなければならないビジョンが導かれる。
即ちそれは、
である。
このようにごみの山、下流から問題をとらえるのではなく、問題の根源である上流から問題を認識することで、全システムをカバーし、将来的な壁にぶつかることを回避することが可能になるのである。
Thesis
Hiromi Fujisawa
第15期
ふじさわ・ひろみ
どんぐり教育研究会 代表
Mission
環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)