論考

Thesis

世界で二番目のエコロジービル

1はじめに

ごみ、食糧、リサイクル、エネルギー。今や地球環境問題は、待ったなしのところまできている。
前回のレポートでは、「未来食」を提唱する、大谷ゆみこ氏を紹介した。今回は、名古屋市北区に半年前にオープンした、世界で二番目の環境共生ビル「グリーンフェロー」を通して、「21世紀の新しい住まい」を考えてみたい。

2「住まい」と「建築」のエコロジー

私は現在、政経塾での活動を通して、さまざまな人にお会いする中で、「21世紀の人と地球にやさしい暮らし方」や「21世紀を輝かせる仕事」を模索している。
今月は、「おしゃれで楽しく、人が集い、都会の中でエネルギーや水、食糧の自給を試みる、日本ではじめての環境共生ビル」を訪問し、オーナーの牧村氏から多くの示唆を得る事が出来た。
エコソリューションネットワーク株式会社の代表でもある、牧村好貢氏は、学生時代から水俣病などを通して環境問題に関心を持ち、社会の矛盾に直接たちむかう仕事がしたいと考えつづけていたと言う。
大学を卒業後、海外技術者研修協会を経て、家業の機械メーカーの経営にあたっていた氏は、その傍ら世界各国を歩いて、環境問題の研究と情報収集を続けていた。
そして研究を続けるうちに、「企業社会の長所と市民活動のそれをあわせもつ方法で、環境問題解決のための実践を行う必要性」を感じたと言う。
具体的なきっかけとなったのは、イギリスにあるCATを見学したことである。
CATは、「エコロジーのディズニーランド」とでも呼ぶべき、自然エネルギーや適正技術を、楽しみながら体験することができる、環境教育を中心としたエコパークである。
氏は、日本版CATをつくりたいという夢を持ったが、それには時間とお金が足りない。そこで、相続した名古屋の土地を活用し、都市で応用できる環境共生技術をすべてつぎこんだ、「環境共生ビル」グリーンフェローを構想し、半年前からこのビルに住み、さまざまな形で情報提供を行っている。
建物の概要は、鉄骨のALC造り5階建てで、建設費は1億円。坪単価は80万円で、通常のテナントビルと比較すると、20%ほど高い。しかし、省エネ効果やアメニティ、ゆとり部分などを考えれば、それほど高くないと牧村氏は考えているそうだ。

牧村氏の説明の後に、1階から5階まで、時間をかけてこのビルを見学させて頂いた。
屋上には、「アーバンパーマカルチャー」を実践するべく、(パーマカルチャーとは、パーマネント アグリカルチャーの造語で、持続可能な社会をつくるデザイン体系を意味する)屋上菜園がつくられ、果樹や野菜など、食べられるものだけで緑化されている。太陽光、風力、雨水の利用はもちろんのこと、室内で使われている建材、塗料、壁紙などはすべて、リサイクル素材か天然素材である。
このビルを建設するにあたり、牧村氏は「建物のLCA」を徹底的に考慮したと言う。
そして、慎重に吟味した結果選ばれたのが、国産の天然木、間伐材、和紙、植物性塗料、天然接着剤、炭化コルクの断熱材、再生紙の壁紙、コルクの下地、竹、桧のフローリングなどである。
主な環境共生要素は、屋根緑化、屋上菜園、壁面緑化、多数の環境保全建材の使用など、多岐にわたっている。
これだけ建物全般にこだわったのは、世界的にも珍しいらしく、今では環境先進国ドイツなどからも、見学にくるそうだ。
家具からキッチン、トイレまで、すべて細かい配慮がなされている。
キッチンは、桧の間伐材を利用した、パネル状態の状態ノックダウン方式で、分解、組み立てができる。移転しても再使用できる、「100年キッチン」なのである。

桧の感触が心地よいだけでなく、親から子へ、何世代にもわたって愛用できるこのキッチンは、多くの人に愛されるのではないかと思った。

3エコソリューションネットと5s

現在、牧村氏の会社、エコソリューションネットワークでは、これらの商品の普及、販売、コンサル、カルチャーセンターの企画などを行っている。
その目指すビジョンは、5s運動(Slow,Small,Self,Sustainable,Sharing)運動を通して、日本中にエコシティ、エコビレッジを数多く作ることである。
このように、「社会の問題を解決するために、ビジネスをたちあげる」動きは、今後ますます増えてくるのではないだろうか。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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