論考

Thesis

ジーメンス.ニクスドルフ社の環境戦略

1ジーメンス.ニクスドルフ社の概要

 5月に私は、ドイツのパターボーンにある、ジーメンス.ニクスドルフ社のリサイクルセンターを訪れた。
 ジーメンス.ニクスドフル社は、ジーメンスグループにおける売上高ナンバー1の企業であり、年間売上高は130億DM(約9100億円)、従業員は34,000人である。
 同社のパソコンは、ドイツ国内ではナンバー1、ヨーロッパではナンバー5のシェアを誇っている。
 またジーメンス.ニクスドルフ社は、ドイツ国内でもさきがけて積極的にリサイクルに取り組んでおり、BUND(ドイツ環境自然保護連盟)による電子機器メーカーの環境評価テストで、トップの評価を受けている。

 ジーメンス社には、グループ全体の環境政策と、それぞれの企業独自の環境保護に関するガイドラインがある。また同グループでは環境問題に対して、マネージャーと技術者が応分の責任を負担している。財務に関してはマネージャーが担当し、マネージャーから相談を受けた技術者は、個々の課題に責任を持つのである。

 同社の環境保護に関するコンセプトは、次のようになっている。
 まずは研究開発、生産、利用者、リサイクルの正の循環を作り上げる事である。同社では、リサイクルしやすい素材や、製造過程の研究に力を入れており、リサイクル過程における様々な問題点は、研究開発部門にフィードバックされ、製品開発やデザインにいかされている。
 リサイクルは、製品の使用後に考えるのではなく、設計段階から考慮する必要が在ると言うのが、同社が経験則から得られた結論なのである。

2.ジーメンス.ニクスドルフ社のリサイクル

 それでは、中古のコンピュータがどのように回収、リサイクルされるかを見てみよう。 ユーザーは不要になったコンピュータを、ドイツ国内の各地方にある指定の回収場所に持って行く。引き取りは基本的に有料(1個あたり20~850マルク)であり、それぞれの製品ごとに引き取り価格が決められている。但し、1995年以後に製造された、ブルーエンジェルつきのエコプロダクトに関しては、引き取りは無料である。
 これらの製品は、リユースできるもの関しては、中古品としてそのまま販売される。

 次に、修理すれば中古品として使えるものに関しては、リサイクルセンターではなく、それが生産された工場に持って行く。これは、造った人が最も効率良く直せると言う発想に基づいている。
 最後にこれらが不可能なものについては、リサイクルセンターに運ばれ、部品.素材のリサイクルにまわされる。解体後、部品として再利用出来るものは、ジーメンス社でそのまま利用するか、他の業者に引きとられていく。
 リサイクルセンターは、敷地面積は9000平方メートルであり、80名の従業員が作業をしている。
 このセンターでは、ドイツ国内で売られた製品のみを扱っており、国外や他者の製品は取り扱わない。
 全体の中で、中古品としてリユースされる割合は10%である。これはもっと高い割合になるべきと考えるが、製造メーカーとしては新型を出したいというジレンマもある。
 素材としてのリサイクル率は、約70%にも達しており、その内訳は金属50%、包装3%、プラスチック2%、ボード8%、CRT7%、その他)となっている。
 最終的に廃棄されるのは、重量換算で全体の15~20%程度だが、2000年にはこれを10%にダウンさせる目標をたてている。
 この目標を達成するために重要なのは、リサイクルに向かない素材を初めから使わない事である。
 これまでにも素材に関しては、様々な研究開発と改善が行われ、包装材については完全に再資源化出来る素材になっている。
 又ミックスプラスチック(分別出来ないプラスチック)を発生させない為、設計段階から極力接着剤を使わず、簡単に取り外しが出来るよう工夫がなされてきた。
 問題はコードや、金属コーティングのプラスチックなどのミックスプラスチックである。以前はクリスマスツリーなどに再加工する、同社で言うところの「ローレベルリサイクル」を行っていたが、今は燃料として焼却している。
 プラスチック対策としては、例えばコンピュータの外部カバーには、カバーの製造や材質に関する表示をし、使用するプラスチックも6種類に限定している。そして、リサイクルセンターでは、赤外線センサーによる分別処理ラインを開発.設置し、容易に分別が可能となっている。
 またこれらは積極的にリサイクルされており、新製品のボックスの25%は、再資源化されたプラスチックによって造られている。またこのほうが、若干ながらコストも安くななると言うのである。

 このようにジーメンス.ニクスドルフ社では、早くから環境対応に取り組んできたが、これを「企業にとって、当然の社会的責務」であると考えている。
 コストやPRのためではなく、地球環境を守るために、全ての企業がこの問題に取り組むことの重要性を強調しているのである。
 そして同社は、それぞれの企業が自社の製品を回収することを「義務化」することを政府に訴えている。しかしながら他企業は、「任意による回収」を主張しており、「電子機器に関するリサイクル」政令は現在もまだ、検討段階にある。

 ジーメンス.ニクスドルフ社は、環境への対応も含めた総合的な競争をし、またそれを消費者に評価されたいと望んでいる。
 同社には、日本からもメーカーの視察が訪れた事もあるが、コスト等の問題も含め、同社の取り組みを持ち帰る事には消極的であったと言う。
 しかしながら、政府に対し「より厳しい」規制を要求する、ジーメンス.ニクスドルフ社の姿勢に、日本企業も多くを学ぶべきではないだろうか。

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吉田裕美の論考

Thesis

Hiromi Fujisawa

藤沢裕美

第15期

藤沢 裕美

ふじさわ・ひろみ

どんぐり教育研究会 代表

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環境問題 特に環境教育(森のようちえんなど)

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