論考

Thesis

再び、「地域とはなにか」

フェローとしての活動を始め、そろそろ1年になる。今年度の私のテーマは「地域の主権化と地域経営」。そして、「いろいろみる」という活動方針でここまでやってきた。
今月は、これまでの活動を振り返りつつ、「地域とはなにか」ということを考えてみたい。

 本間さんに、「地方主権云々という現在のテーマをさらに深めて、自然環境と人間環境の両面から、自己組織系としての地域システムを創るビジョンとして、まとめていったら良いのではないかと思うのですが・。」とコメントをいただいた。私の説明不足だと思うが、多分私のフェローテーマと同じことをおっしゃっているのだと思う。

 私が最終的なテーマとしているのは「生態学的(発想に基づいた)地域の創造」である。ただ昨年の実践審査会に臨む際、この言葉はまだまだ塾内でさえ理解され難いのだなぁと思い、前述のような言い方にかえた。
(ちなみに、「地域主権」という言葉もあのころはあまり定着してなかったように思う。地方分権とか、地方主権とかの言い方はもちろんあったが。ほぼ同時期にPHPの江口克彦氏が地域主権論という本を出されて、その後ぐらいからか、認知度が上がったような気がする。)

 それでは、私がいう「生態学的地域」とはなにか。それは、地域というものを細胞cellと捉えましょうということである。そして、幾つかの細胞が集まって組織をなし器官を形成するように、目的によって組み替えられる自治体ネットワークの多重体として国家(= 一生物個体)を捉え、外交や軍事や貿易という現象を、心理学や社会学(群衆心理学や「群れ」におけるつつきの順位など)から比喩的に捉え直せないかという考え方のことである。(この辺の発想の原点は、12月分の月例レポートをご覧ください。)

 この考え方を突き詰めるために、3つの中テーマを設定した。

 

1 

地域はどのような機能を持つべきか——–cellとはなにか。

 2 

地域の領域(行政区割り等)はどのように決められるべきか——-cellの単位の決定。 

3 

国家の構成の仕方———-単細胞生物から多細胞生物への進化。

 根底にあるのは、人間が生き物であり、自然のルールにしたがって生きている以上、社会システムも自然のルールに従わなければいけないはずであるということ。そして、一つ一つの細胞の積み重なりから人体(約10万の細胞からなるといわれる)はできているということ、つまり基本単位は細胞だということである。

 それでは、地域はどのような機能を持つべきか。そのことを考えるに当たって、まず単細胞生物の持っている機能を思いつくままに挙げてみよう。

 情報の交換、捕食、消化、老廃物の処理、排泄、移動、増殖、(光合成)、情報の維持・次世代への伝達、etc——
 そして、私が現在考える地域とは次の最低要件を満たすものである。

 

1 

(食糧供給・水循環・エネルギー供給・廃棄物処理・財源などに)ある程度の自立性をもつこと。———–個体(肉体)保存・自己保存ができること。 

2 

住民の意思、社会環境の変化に応じてスムースに自己変革できること。——-フィードバック機構の存在。最適化できること。環境適応能力。 

3 

情報の受発信・加工能力があること。————思考能力のある地域。意思の伝達ができる地域。 

4 

教育力があること。内部での情報交換ができること———DNAの存在。種の保存。

 ここまででは、まだばくっとした話である。次回のレポートにはもう少し詳しい内容を載せたいと思う。

 現在私は、札幌市の操車場跡地の再開発のプロジェクトに参加している。守秘義務があるので詳しいことはここには記せないが、現実とまだかけはなれている私の考えかたの一端でも、実際の形に落とせないかと模索中である。

入塾してから「将来は政治家になるのですか」と聞かれ、答えに窮することが多い。政治家(議員)になるつもりは今のところない。しかし私は、国家という生き物のありかたを解明する生態学者に、そして病を直す手助けをする獣医にはなりたいと思っている。「日本をかえる」ためにはどうしたらよいのか。日本を生物だと捉えるのならば、その生物の一つ一つの細胞の「DNAに該る部分」を書き換えるのが、本当の解決策ではないだろうか。

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栗田拓の論考

Thesis

Taku Kurita

栗田拓

第16期

栗田 拓

くりた・たく

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まちづくり 経営 人材育成

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