論考

Thesis

細胞都市序説7「地域の自立と地方分権」

「細胞都市(cell citu)構想」とは、「持続可能な開発」や「地域情報化」といった概念を包含し、拡張したものである。都市のシステムや地域のシステムを構築していくにあたって 、「生物としての人間が、個体として、種として生存し続けることを可能とする環境を維持し続けること」を基本原則とし、この原則から逸脱しない範囲で経済・社会開発を行うことを目的としている。

 現代社会における最大の問題は人口爆発であり、それによる食料危機、エネルギー危機、環境危機は近い将来必ず起こる。これからは、地方分権の流れに象徴される多様性と地域の独自性を主張する時代であるが、同時にこういった地球規模の諸課題に地域レベルでの対応をせまられる時代、いいかえればグローカリズムの時代でもある。

 しかし果たして現在の地方自治体は、この来るべき時代に対処しうる体力とシステムを持っているだろうか。行政府は、専門分化されすぎた政策分野間の軋轢の為に、地域をひとつのシステムとして捉えた立体的な施策を行うことができず、市民にあるべき地域の将来像を提示することもできず、危機と困難の時代に於いては無用の長物と化すであろう。

 自治体の成長を促すべき国家政府自体が自治を妨げ、中山間地域の健全な自立を阻み、国土を疲弊させ、そしてそれが地方から金と人材を失なわさしめるという悪しき循環を生んでいる。

 地域の自立にはいくつかの段階がある。
 第一段階は、食料・水・空気などの自立が図られ、生存環境が守られていること。第二段階は、エネルギー・廃棄物処理・財源の確保が行われていること。そして、第三段階が社会保障制度の充実である。
 これらの全ての段階を通じて課題となるのが、地域がいかに施策の自主決定権を持つかという問題、地方分権の問題である。
 幸い明日(11日)、地方分権に関してお話させていただく機会に恵まれたので、文末に、そのレジメを掲載しておく。

 1 地方分権って何?

「これまでの国と地方の役割分担を見直し、県や市町村の創意工夫によって、住民のニーズにあった地域社会をつくるため、権限や財源を地方に移すこと」
平成5年6月  地方分権の推進に関する衆参両院決議
平成6年12月 地方分権の推進に関する大綱方針の閣議決定
平成7年5月  地方分権法の制定  有効期限5年
総理府に地方分権推進委員会を設置(H.7.7.3)

  機関委任事務 地方公共団体の執行機関、特に知事及び市長村長を国の機関とし、これに国の事務を委任して執行させる仕組み。地方自治法別表によれば、現在項目数で561(うち都道府県379、市町村182)に及び、これは都道府県が行う許認可の8割、市町村が行う許認可の3~4割を占めるという。

第五次全国総合開発計画について 多極分散型国土の形成  国土軸 交通、通信他の基盤によって拠点都市間を結ぶ軸  地域連携軸 定住都市圏が重なりあって形成される軸県で行っている許認可の根拠法令  355(明治時代6、大正17、昭和306、平成26 )

2 なぜ今地方分権なのか——世の中が、世界が大きくかわったから

国内・国外に問題が山積
●中央集権型行政システムの制度疲労 脳神経ばかりが発達した生物
中央主権→復興期、高度成長にあったシステム 世の中が、変わった
危機管理—–阪神大震災の教訓
●変動する国際社会への対応 国際調整課題への国の各省庁の対応能力を高めるため、各省庁の国内問題に対する負担を軽減する。
経済等のボーダーレス化に伴う国家管理政策の破綻
●東京一極集中の是正
産業の空洞化過疎過密   都市に人口を集中させる政策(家族を集めるつもりが、次男三男が集まる)
●少子化・高齢化への対応
少子化・高齢化・情報化・国際化などにより経済社会が大きく変わってきていること
●個性豊かな地域社会の形成
多様化する行政ニーズへの対応
国家財政の悪化  国家債務500兆円
東京詣で解消のため

3 地方分権で何がどうかわるのか

 新しい国と地方の役割(地方分権推進法・地方分権推進委員会第一次勧告)
 地域の実情にあった地域づくり
 東京一極集中の是正—首都機能移転

4 私たちは何をするべきか

 グローバルな視点とローカルな視点を両方持つこと
 自己責任が求められる時代に
自己責任原則の住民自治

5 終わりに

 民主主義と地方分権

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栗田拓の論考

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Taku Kurita

栗田拓

第16期

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