論考

Thesis

イメージと資金集め

昨年11月より自分が中心となって設立の実務を行ってきた沖縄アクターズスクール関西マキノワールドポップス大阪校、りんくう校も2月1日に開校し、開校記念のB.B.WAVES(沖縄アクターズスクール生のトップグループ)ライブも2月13日無事に終えることができた。ほっと一息ついたところでこれまでの活動やここ最近の世間の動きの中から感じることを雑感として記しておきたい。

1 りんくうタウンの戦略の失敗

 関西空港プロジェクトの失敗は、数え上げればきりがない。

 ちょっと風が吹くと電車が通れなくなる橋。24時間空港でありながら、夜中の交通機関がない、旅客が時間つぶしにいられる場所がない。高すぎる連絡橋の通行料(往復で1800円)。漁業補償、地域の漁民への対応のまずさ。遅々として進まない二次開発、等々。

 もちろん、経済の低迷や大阪府の財政の悪化などの“不幸な”要因もあるが、それぐらいの予測もできないものがこれほどの大規模開発を手がけること自体が間違いだったのだろう。未だ利用法の定まっていないがらんとした土地が広がるのを見るにつけ、足下の定まっていない日本の開発(特にバブル期の)のあり方を考えさせられる。

 関空開発の失敗を肌で感じさせられたのは、外国からの賓客を迎えたときのことだ。商談の前にネイルショップとバーバーに行きたいという要望を受け、宿泊先のホテル(五つ星らしい)に問い合わせたが、ホテル内に店がない。夜、気の利いたレストランで会食をしようとしても近くにそれもない。奈良、京都への観光基地としては不便だし、かといって、楽しめる場所、賑わいがりんくうにあるわけでもない。結局、“お客不在の開発”だ。

 東京都の臨海副都心開発(レインボータウン)への提言でも記したが、日本の臨海開発には、

1 海を生かした開発になっていない
2 ヒューマンスケールの楽しい外部空間が確立されない

という2大欠陥がある。

 これらの欠陥は、結局まちづくりにマーケティングがないために起きる。マーケティングを行うこと、対外的にどういうイメージを作り出すかということ、これらはまちづくりにとって不可欠の要素である。(多くのプランナーはこのことをよく理解している。問題はプランナーにあるのではなく「監督官庁の理解不足や縦割り行政によって住民やプランナーが自由なまちづくりができない=まちづくりが行政のものになっている」ことにあるのだが。)

 エンターテイメントの世界とは、まさしく観客の反応がリアルに伝わってくる世界だ。しかし、イメージを伝えることや観客の反応を掴むことにたけたエンターテイメントのスタッフは、いままで箱の中でしか活躍してこなかった。エンターテイメントを箱の中からまちへあふれ出させることが、まちづくりを変えるひとつのきっかけになるのではないか。

2 イメージ戦略と資金集め

 石原都知事の提案した銀行税が各地で波紋を巻き起こしている。乱暴な意見ではあるが、分権推進派からみればひじょうにもっともな提案でもある。このニュースを聞いて行政にもできそうなマーケティングと地域開発戦略をひとつ思いついた。

 高齢者に優しいまちづくりを総合計画に載せている自治体は多い。しかし現実には財政の逼迫によりその実現はなかなか難しい。介護保健の導入は(私が以前から指摘してきたように)特に中山間地の高齢者に大きな負担を与え、その割には将来に向かっての高齢者のためのまちづくりを進めようとしてもその財源にはならないという欠陥がある。

 小さな自治体はPFIで高齢まちづくりを進めたらどうか。それも、町民、村民から集めるのではなく、都会に住む50前後の世代を中心に、リタイアしたあとにその自治体に住む権利を債権で売ればいいのである。「生きがい、死にがいのある地域づくり」をイメージとして売り、その資金をもとに基盤整備を行う。過疎も解消できるし、人口が増えれば介護産業を中心としたプラチナマーケットが形成される。行政が住民を選ぶことになるという反対意見もあるかもしれないが、国民年金でも積み立てていない人は給付を受けられないのだから、それと同じだと思えばよい。
 問題はただひとつ、そこまでマーケティング力のある政治家、行政スタッフがいるかどうかだが・・・。

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栗田拓の論考

Thesis

Taku Kurita

栗田拓

第16期

栗田 拓

くりた・たく

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まちづくり 経営 人材育成

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