Thesis
本報告は2000年12月分の月例報告の続編である。
前報告において、私は、2001年7月執行予定の参議院議員選挙の予定候補者の活動を新規開店のレストランのシェフに例えて描き出した。今月もその例を用いて政治と選挙の現実について考えてみたい。
■ コースメニューが決まらない!
新規開店の店を切り盛りするにあたってもっとも私が気にかけていたのは、コース料理のメニュー構成、すなわち公約としての一連の政策であった。後援会入会用のパンフレットを製作する中で、松井孝治氏とともにこの政策案を徐々に煮詰めていったわけだが、この作業は非常に困難を極めた。納得のいくコースメニューがなかなか組めないのだ。下記に参考として、たたき台として作成した当初の政策案(以下、当初案)を転載する。
<当初案(パンフレット用)> |
以上が当初案だが、簡単に分析するとこうだ。
まず、非常に網羅的で、一般的な用語を多く用いている点に気がつくだろう。「経済の活性化」「行財政改革」「福祉・雇用政策」「政治のリーダーシップ」「教育改革」など。味に例えて言えば、まったく新鮮さにかける味である。どこかで耳にしたようなメッセージだ。この政治家なりの「色」に欠ける内容である。
そして、観念的である。よりよいシステムへの変革がメッセージの核心だが、具体的にどんな形にしたいのか、結果どうなるかが、まったくもってあいまいであった。
以上のような批判を踏まえて、以下の案に現在のところ落ち着きつつある。
<2月上旬時点での政策案(パンフレット用)> |
私は変えたい
私が約18年間の官僚生活で痛感したのは、しがらみにまみれたタテ割りの官僚組織や族政治では、この国に求められている構造的な改革は成し遂げられないということです。 必要なことは、中央統制の官僚政治から国民本位、地域主権の民権政治への「大政奉還」です。 私、松井こうじは、通産省という巨大官僚組織を「脱藩」し、独立自尊のこの京都の地から、国政への歩みを始めました。 目指すべき社会は、国民一人一人が、大組織の歯車ではなく、自らに誇りをもち、互いに信頼し合える社会の形成です。 政治や行政から何をしてもらえるかではなく、国民が政治や行政をどのように変えていくのかが求められています。 私は次の5つの分野においてこの国の政治を変えていきたいと考えています。
<松井こうじ 5つの主張>
主な変更点は以下のとおりだ。
一つ目は、本人に国政を志すにあたっての思いをつづってもらった点である。政策の羅列では見えない、政治家としての決意の部分から、野党から国政を目指す松井氏が、これまで与党に多かったいわゆる官僚出身政治家と大きく一線を画することがよくわかる。なぜわざわざ安定した職場である中央官僚を辞めたのか。なぜ畑の違う政治家か。なぜ業界団体の支援のない野党から国政を目指すのか。松井氏が政治で仕事をしたいと手を挙げる意味を有権者に理解してもらおうとすることは非常に重要である。
二つ目は、政策分野を絞ることである。松井氏はもともと政策に関して八方美人ができるタイプではない。彼の目標は身体を張って、政治・行政・経済の各システムを国民の手による自律的なシステムに変えることだ。もちろん他の政策にも重要性を感じるものがある。しかし、各重点政策の理解を深めるべく、ここでは最も伝えたいメッセージに絞ることにしたのだ。
次に、それぞれの重点政策を極力ひとつのキーワードで表現するように心がけた。当初案での問題点の一つは具体性であった。当初、誤解を恐れて踏み込んだ表現を恐れていた。しかし、自分の生活とどう結びつくのかできる限り具体的に示さなければ有権者の理解は難しいのではないかという考えから、「道州制」や「首相公選制」など議論のある表現も用いた。とはいえ、この点は現時点では十分ではない。
そして、現状の問題点と、あるべきかたちを対比することで理解しやすくなるようにつとめた。短く言えば、官から民へ、国から地方へ、守るべきを守り、変えるべきを変える、といったフレーズに集約できようか。
以上の改善点によって、ずいぶんメッセージ性のはっきりした内容になってきた。
とはいえ、限界もある。先に述べたように、教育政策など、およそ具体的とはいえない部分も残っている。また、日々の暮らしや仕事に代表されるような、それぞれの現場を抱える有権者には様々な政策分野まで継続的な関心をもちつづけることは難しい。システム改革のような大きなテーマはとっつきにくいという意見ももっともである。パンフレットの政策を読む人がどれだけいるのかという悲観的な意見もある。
■ しょせんメニュー、されどメニュー
たしかに、以上のような公約としての政策はしょせん単なるメニューに過ぎない。非常に忍耐を要する作業だ。しかも多くの有権者は「メニューに偽りあり」のレストランが多いことをすでに体験として知っている。そういう現状だけにメニューを吟味する目は厳しい。多くの人は見向きもせず店の前を通り過ぎていく。そんな厳しい現状であっても、松井氏は政策という料理を口にしてもらわなければ、見かけではわからないその料理のもつ本当の味が伝わらないのだ。
私はこの松井氏と考えたメニューの試作品を作って、多くの人に試食してもらい、大いに品評してもらうことにした。松井氏と目指す「国民の手による自律的なシステム」とは、いわば自分の舌でうまいまずいが判断できるということだからだ。そのための議論の場を今後極力多くもつことにしている。今後その試食会の模様も報告していくつもりである。
Thesis
Takashi Kii
第19期
きい・たかし
衆議院議員/福岡10区/立憲民主党
Mission
政治、とりわけ外交・安全保障及び教育 在塾中