Thesis
1996年4月。知識も人脈も殆どない中、どうやって活動を進めていくのか、不安だらけのままフェローとしてのスタートを切りました。しかし、お陰様で皆様のご指導とご協力をいただきながら、国内外の教育現場で貴重な体験をさせていただくことができました。また色々な方々との出会いに恵まれた一年でもありました。松下政経塾建塾以来の精神である「自習自得」「現地現場主義」の意味をかみしめながらの活動でした。
3月と4月の月例報告では、今年度の活動の総括と、それを受けて来年度どのように活動を展開していくのか、ということについてお話しさせていただきたいと思います。
・、今年度の活動
今年度の活動目標は大きく分けて下記のようなものでした。
それぞれについて説明させていただきます。
それも「視察」とか「研究」といった名目では本当のことは何も見えてきませんし、先生方の本音を聞かせていただくことができません。できるだけその学校の活動の中に長期間「参加」することを目標にしました。
たとえば千葉市立打瀬小学校では「先生か生徒、どちらかをやりたい」とお願いした結果、学校ぐるみで小学校5年生の転入生に仕立て上げられ、一緒にドリルをしたり、お絵描きをしたり、という生活を2ヶ月間過ごしました。(塾報11月、12月号「23歳、2度目の小学校生活」参照)
この経験は現場のみなさんにも面白がっていただき、共感を持っていただく、という意味で役立ちましたし、また子どもと遊んだり話したりすることを通じて「子どものころはこんなことが人生をゆるがすような大事件だったんだ!」というような実感がよみがえってきて、とても勉強になりました。これからもずっと子どもの視点を失わずに研究をしていきたいと思っています。
また、学校をよくしようという情熱ある校長のもと、悩みを抱えるクラスに敢えて入れていただく、という経験もしました。子どもたちが明るさを失い攻撃的になっている、それに対して先生も自分にも責任の一端があることをわかってはいてもどうしたらいいかわからない、というクラスで補助の「先生」として子どもや先生と一緒に悩みながら学校に通いました。
たとえ便宜上であれ「白井せんせい」と呼ばれる存在となると、自分の一言一言が子ども達に与える影響も少なからぬものがあります。子ども達に対する対応を瞬時に考えることは自分にとってはとても勉強になりますが、同時に最低限子どもに取り返しのつかないような心の傷を与えないように、緊張の連続でした。
学校の実態調査をすることが目的とは言っても、その究極的な目標は小学校を良くし、子どもたちや先生方に幸せな学校生活を送っていただくことにあります。当然、学校現場に入れば、自分の研究材料を集めることよりも、子どもや先生の環境をこわさないこと、できれば良くすることが第一の優先課題です。
これらの調査結果をメディア等にて発表し、その反応をいただいて気付いたことですが、小学校の教育政策についてこれだけ議論が活発になっているにも関わらず、専門的な研究者は殆どいません。そのため私が外国で現場に入り込んで得た情報は思った以上に高い価値を認めていただき、政治家、文部省、財界等各方面からお問い合わせをいただいて、自分の活動の幅を拡げるきっかけにもなりました。
松下政経塾生という立場で時間と資金をいただいて思う存分に動き回れることを心から有難く感じた一年でした。
長年どうしても会ってお話を伺いたいと思っていた方がたまたま研修している公立小学校に視察に来られる等の幸運な出会いにも恵まれ、お陰様で期待していた以上のネットワークができました。
の四段階のうち、二段階目までを目標としていたのですが、結果として3段階目の途中、つまり仮説を提示する段階まで到達できたと考えています。
4月分の月例報告では、その絞り込むポイントについての仮説、これらの活動を通じて現時点で得た問題意識と、そこからどのように活動を展開していくつもりか、ということについてお話しさせていただきたいと思います。
Thesis
Tomoko Shirai
第16期
しらい・ともこ
NPO法人新公益連盟 代表理事
Mission
教育・ソーシャルセクター