論考

Thesis

「夢の惑星」は今

ドリーム・プラネット・インターナショナル・スクール(沖縄県恩納村)が開校して1年が経とうとしている。多くの人気歌手を生んだ「沖縄アクターズスクール」のマキノ正幸校長が設立者だが、運営は白井智子塾員(松下政経塾16期生)が「自分の夢っを探し表現するために好きなことをやらせる」という教育方針の下に行っている。白井さんに「夢の惑星」の1年間について聞いた。

―― 開校して1年ですね。

子供たちの成長のスピードにびっくりしています。「自分さえよければそれでいい」と思っていた子どもたちが1カ月で「他人のためになることを」と考え出したのには、もう感動でした(笑)。考え方が変わって来るのです。他の子の悩みをなんとか手助けできないか、とか。何より、彼ら自身が求めていたのだと思います。毎日全体ミーティングをして、あなたがずっとおかしいと思っていたことはこういうことなのでしょうとか、私が種明かしをする。そして、私だったらこうするけれど、と付け加えてみる。一人一人の相談にのることと全体で話し合うこととを繰り返すうちに彼らの顔つきが変わってきました。
今、135人の子供たちがいます。毎日全員で集まって、授業はこうしようとかこういうルールを作ろうとか話し合うのです。最後は必ず私が話をします。きれいに飾ることなく、今学校が抱えている問題とか、生々しい話をするように心がけています(笑)。子供たちが考えていることに向かって私なりの考え方をぶつけて行くのです。義務教育として認められないここに、政治家の団体とか国の審議会とか、見学の方が随分来ました。

―― 「自由」を履き違えることはありませんか。

「好きなこと」と「好き勝手」は違う。「自由」と「自分勝手」も大違い。そこがこの学校の一番大事なところです。「自由」と「自分勝手」の違いにはむしろ普通の学校より厳しく接しています。学校が出来る時に反対運動がありました。子供たちは「自分たちがやっとみつけた場所」を守るために一生懸命です。タバコや無断外泊などのルール違反は、他の子供たちの前で罪を認めたとき、それも1回だけチャンスが与えられる。

―― 今後はどんな運営を。

最初の半年は正直なところ、精神的なベースをつくるのに必死でした。どんな状況にあっても前向きでいられる自分を子供たちがもつことです。それができてきて初めて「やはり消費税の計算ができなきゃまずいよね」とか「世界のいろいろな宗教について知りたい」とかいう意見が出てきました。今、ドリーム・プラネット版の学習指導要領、つまり、うちの卒業生は最低限ここは押さえていますよ、というのを子供たちとつくっています。もうひとつ、子供たち一人ひとりのやることが違ってきたので、ネットワークを生かして様々な情報を共有することです。コンピュータ上に子どもたちが集めてきた情報を全て集約していきます。

―― 最後に、政経塾での体験は役立っていますか。

この学校は私の人生そのものが反映されています。だから私が人生で関わったことは全てここに凝縮されています。中でも、壁にぶつかったときに「松下幸之助さんだったらどう考えるだろう」というのは私の核になりました。子供たちが「校長だったらどう考えるだろう」と言うのを見て、子供たちの中に、私を通して幸之助さんの考えが生きていると、何かとても温かい気持ちになります。

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白井智子の論考

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Tomoko Shirai

白井智子

第16期

白井 智子

しらい・ともこ

NPO法人新公益連盟代表理事

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教育・ソーシャルセクター

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