論考

Thesis

「小学校と教育委員会」(2)

月例報告5月分でもご報告した通り、5月の一ヶ月間は川島町立伊草小学校で研修し、その後7月の一ヶ月間は川島町の教育委員会の各部署で研修させていただく、という貴重な体験をさせていただきました。
 今回の月例報告ではその後半部分、教育委員会での研修の様子についてご報告します。
 川島町は人口約23000人の町です。小学校6校、中学校2校、幼稚園は町営のものが1つと私営のものが1つあります。
 今回の研修では教育長様はじめ皆様のご配慮で、専門分野である小学校教育にとらわれず、管理課、学校教育課、生涯学習課、給食センター、勤労福祉会館、図書館、海洋センター(町民プール)、と川島町の教育委員会の殆どすべての部署を見せていただくことができました。
 その間、自分でつけていた記録をもとに研修内容をご報告させていただきたいと思います。

6月30日月曜日 管理課
 管理課に一週間の予定で配属。管理課は学校施設の管理が主な仕事であるが、いわば教育委員会の総務課のようなものである。課長、課長補佐、係長、課員一人、の四人。 但し、今年の初めに学務課が二課に分かれて管理課と学校教育課になったばかりで、依然管理課と学校教育課とは同じ部屋にあるため、私は両方の仕事を掛け持ちでさせていただくことになった。
<課の主な仕事>
・鈴木課長本庁(町役場のこと)にて決済
・入札(伊草小学校 改修工事について)
・伊草小学校にて児童による傷害事故につき教頭及び教諭から教育長、学校教育課長へ報告
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し。これは女性職員の仕事、というのが不文律。電話番。
・台風8号通過後の状況報告を各校からとりまとめ。殆ど異状なし。報告書作成。
・今年度の教育要覧づくり。
・ホイールリフレクター(交通事故防止用に自転車の車輪につける反射材)を各校に配布。
・生命保険、信用金庫勧誘員、建設業者、各校の用務員等、人の出入りが多く、お茶出しに追われる。
 入ったばかりなので、どの人にお茶を出すべきでどの人には必要がないか、よくわからなくて苦労する。お馴染みの人などは突然今日に限って知らないオネエチャンにお茶を出されてえらく恐縮されたりする。

7月1日火曜日 管理課
<課の主な仕事>
・備品購入
・幼稚園改築工事について
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し、電話番。
・文部省、埼玉県教委、比企教育事務所、埼玉県南教育センター等から配布されてきた配布物受け付けの手伝い、各校へ振り分け。
 夥しい数の配布物を各校に振り分ける。美術館の特別展の案内ポスター、県主催の環境セミナーのお知らせ、そして多いのが県の各課、室、そして連盟等からの研修会や大会等に各校の担当者を派遣することについて「御配意願います」という要請である。
 実際には各学校の先生方が校務分掌に基づいて出張していくわけだが、5月の伊草小学校の研修で先生方が校務分掌を二つも三つも兼務して苦しんでいることを聞いているので、そのツケが結局子ども達にまわることを思い、複雑な思いがする。先生方は忙しすぎるために子ども達とコミュニケーションをとる時間の余裕が殆どないのだ。
・エンゼルプランアンケート回答作成
・学校管理費等各校別抽出
・「平成八年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」各校からの回答を集計。
 二校について前回調査と数字の整合性に問題あり、学校教育課長による各校への再ヒアリング。
 役所の仕事においては「整合性」が非常に重要視されることを知る。
 この統計調査は文部省中学校課→県教育改革室長→比企教育事務所長→川島町教育長→各小中学校長、とまわってきて回答はその逆の順路を辿って文部省に戻る。ものすごい日数と沢山の人のエネルギーが費やされている。

7月2日水曜日 管理課
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し、電話番。
・学齢簿のチェック、作成。
 前年度中に転入、転出、住所変更、姓の変更等があった小中学校の児童、生徒をチェックし、学齢簿の追加、削除、書き換えなどをし、今年度の学齢簿をつくる。中学に進学した子どもについては2つの中学校の名簿を参照しながら二校に振り分け、新しい学齢簿をつくる。学齢簿の記載内容は子どもの名前、生年月日、住所、家族構成、前に在籍していた学校名等。これを基礎として来年の各校の学級数、職員数などが算定されるわけである。
 川島町在住の児童、生徒約4000人の学齢簿をチェックするわけで、大変に手間と時間のかかる仕事である。また全ての児童について必要書類がきちんと揃っているわけでもない。どこに行ったのかわからない子ども(つまり学齢簿があるのに名簿に記載されていない子ども、また名簿に名前があるのに学齢簿が行方不明の子ども等)に関しては学校に問い合わせたり町役場から書類をもらったり、どこかに挟まっていないか探したり、結局他の通常業務もこなしながらではあるが、約一週間かかった。
 これは実際には学校教育課の仕事だが、私が「何かお手伝いすることありませんか」と管理課だろうが学校教育課だろうが構わず聞きまくるのでこの仕事をいただいたのだろう。生涯学習課の某係長さんが覗きにいらして「研修生にこんな仕事させていいんか!?」とギョッとされるが、私としては信頼していただいているような気がして悪い気持ちはしないのが正直なところである。
 詳しいことは児童のプライバシーに関わることなので書けないが、児童を取り巻く家庭環境、社会環境の一端が見えて非常に勉強になった。
・町役場に川島町例規集の教育委員会分を取りに行く。

(中略)

7月7日月曜日 学校教育課
 今日から一週間、学校教育課に配属。学校教育課の業務内容は学校の中の児童、生徒に関することである。課長(指導主事)、係長、課員一人の三人。
 ただ私自身に関して言えば、管理課配属であった先週と同じ机をそのまま使わせていただき、仕事も学校教育課と管理課の仕事、そして研修生としての「視察」をかけもちでやらせていただいている。
<課の主な仕事>
・児童、生徒の就学に関すること。
・県に事故の報告。
・書類の受け付け、各校に配布。(各校の用務員さんが毎日取りにくる。)
・県に提出する書類の作成。
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し、電話番。
・学齢簿のチェック、作成。
 ようやく今日で終わった。
・10:00~13:00 教育長とともに給食センター視察。給食センターの職員の方全員と一緒に給食をいただく。
 所長と栄養士の先生にOー157対策、メニューの選定、先日台風で学校が半日になった際のご苦労などについてお話を伺う。

7月8日火曜日
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し、電話番。
・書類受け付け、配布手伝い。
・新たな転出児童の学齢簿処理。
・生涯学習課へおつかい、会議室どり等。
・「資源回収、古紙仕様についての依頼」ワープロ打ち。

7月9日水曜日 学校教育課
・午前、学校教育課長による八ツ保小学校の学校訪問に連れて行っていただいた。ここで月例報告6月分にも書かせていただいた素晴らしい学級に出逢い、興奮する。
 学校教育課長によれば学校訪問の目的は、(1)新任の先生の授業を見て指導すること。(2)先生方を知ること。県の研修などに推薦するときなど、先生一人一人のやりたいことや適性などを知っていることが必要。(3)養護学校や特殊学級のある学校等に行った方がいい子どものいる学級を見ること。どの学校に行かせるかは親の判断だが、子どもに合った学校に行かせるように理解してもらうのは教育委員会の仕事。
・午後、川島中学校の見学。校長先生と歓談の後、授業見学。丁度授業参観だったのでうまく紛れ込むつもりが、中学生の親としては少々若すぎたらしく、却って浮く。
 5月の伊草小学校での国際交流会のときに一緒に通訳をしたグレゴリーさんが1年生のあるクラスで英語の発音を教えていた。彼は川越で英語教室を経営しながら川島の中学校でALTをしているのだ。喜びの再会。
・課に戻り、保育料減免調査票の地区別振り分け。

(中略)

7月14日月曜日 生涯教育課
 今日からの一週間は生涯学習課で研修。常勤は課長、課長補佐、係長二人、社会教育主事、主任、課員三人の計九人。
<私の仕事>
・午前中、教育長、学校教育課長とともに三保谷小学校での月一回の校長会にオブザーバーとして出席させていただく。
・秘密会の間、三保谷小学校の特殊学校の三人の子ども達と遊ぶ。
・課に戻り、お茶出し、電話番。
・親子陶芸教室用名札づくり。

7月15日火曜日 生涯学習課
<課の仕事>
・教育委員会主催の各種講習会、講座の企画、運営。
・公民館、運動場、プール等、生涯学習関連施設の管理。
<私の仕事>
・そうじ、お茶出し、電話番。
・スポーツ指導員の研修会のパンフレットづくり。
・プールそうじ。
・夏休み水泳教室電話申し込み受け付け。

(中略)

7月22日火曜日 図書館、生涯学習課
・生涯学習課で打ち合わせの後、図書館へ。
 小さい頃、本が大好きで、図書館は世の中で一番好きな場所だったので、そこで働かせていただけることが嬉しくて仕方がない。開館前の図書館に居る、ということがあんまり幸せで、興奮して顔が赤くなってしまう。
 一日だけの研修だったが、エプロンを着けて図書の発注、登録から貸し出し、返却の手続きの仕方まで全て一通り経験させていただく。素晴らしい一日であった。
 図書館職員の方は利用者が少ないのが悩みと仰るが、その分大都市の図書館では予約待ちで一杯、というようなベストセラー本やCDがずらりと並んでいて驚く。今日は夏休み最初の平日なので小中学生の利用がとても多かった。
・13:30より、川島町からオーストラリアに派遣する中学生13名の前で講話。オーストラリアの学校の話、コミュニケーションをとるコツなど。

7月25日金曜日
・月に一度の教育委員会にオブザーバーとして出席させていただく。出席者は教育委員長、教育委員5名、教育長、管理課長、学校教育課長、生涯学習課長。
 ここで今年度の教育委員の教育委員視察の訪問先について意見を求められ、打瀬小学校を紹介させていただく。結局、11月に訪問することになった。
・今日が研修最終日ということで各課にご挨拶。とても面白い人たちに囲まれて夢のように楽しい日々を送らせていただいたことを皆さんに感謝する。

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白井智子の論考

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Tomoko Shirai

白井智子

第16期

白井 智子

しらい・ともこ

NPO法人新公益連盟 代表理事

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