Thesis
4月13日水曜日、この日韓国では、第16代国会議員選挙が行われた。水曜日ではあるが投票のため公休日となったこの日、私は新千年民主党の候補者事務所で1日を過ごした。
選挙のための休日ということもあり選挙への関心も高いのでないかと思われたが実際はそうでもなかった(16代選挙 57.2%)。日本同様、選挙の度ごとに投票率は下がる一方である(75.8%→71.9%→63.9%→57.2%)。韓国というと学生デモのイメージがあるが、実際韓国で生活してみるとデモをしている学生を見かけることは難しい。大学内は、静かで学生達は恋愛にスポーツに熱心で日本の学生となんら変わらないと言った様子である。多くの人から韓国は政治離れが深刻であると何度となく聞かされた。
しかし、そんな中、今回の選挙で大きく脚光を浴び、韓国国民に強く影響を与えたものとして落選運動を挙げる事が出来る。この運動は主に納税歴・前科歴・軍隊に行ったか、及び親族の子弟が軍隊に行ったかを調査し政治家として相応しくない候補者を選び、彼らを議員として当選させないようにしようという運動であった。落選運動は複数の市民団体が各々行ったため、基準がハッキリしないなどの理由によりある団体では名前が挙がった候補者が別の団体では挙がっていなかったりと問題もなかったわけではないが政治離れが進む韓国で大きな影響を国民に与えた。実際名前が挙がった候補者の約70%が落選している。
この市民運動の動きは日本にも影響を及ぼしている。次期衆議院選挙での落選運動を進めている市民運動があるくらいだ。
ところで、今回の選挙でしきりに聞かれた言葉に『386世代』という言葉がある。これは現在30歳で、80年代に大学に通い、60年代に生まれた若者のことを指して言う言葉である。政治家の老害が叫ばれる日本同様、韓国も今までとは違った新しい世代が国会に行くことにより政治を変えなければならないという意識があり、また一方で、若い政治家を候補者として擁立することにより党のイメージアップを図ろうという党側の理由も手伝って多くの『386世代』が立候補し当選を果たした。この選挙によって全議員の約6%が『386世代』の議員になった。この数字は今までの韓国の政治から考えてけして少ないものではない。
また、今回の選挙では韓国政治の悪と言われる地域感情が残念ながら大きく国民に影響を与えた。選挙1ヶ月ぐらい前までは地域感情に左右されることなく投票しようと言っていた政治家もいざ選挙となると自分の有利なようにこの地域感情を使って選挙運動を展開した。国民自身、地域感情が韓国政治にとって悪いものであるということは十分わかっているのだが、頭と行動は違うようである。多くの有権者が候補者の政策を元に投票するのではなく地縁によってどの政党に所属しているかを元に候補者を選んでいた。ある人によると、この地域感情は20年たってもなくならないだろうと嘆いていた。
さて、前述のように今回は若い政治家が今まで以上に誕生したわけではあるが、これは韓国にとって良い選択となるであろうか。『386世代』の快進撃は、この若い政治家が国を良い方向へ動かせると国民が判断した結果なのか。それとも、今までの政治にはない若かさのため何かしてくれるではないかという期待感からなのか。いずれにしても重要なことは政治家にとって柔軟な考え方が出来るという意味で『若さ』が必要であるということである。しかし、それ以上に国を動かすに足るだけの覚悟、能力を彼らが備えることが必要である。政治家は税金によって雇われている。だから、しっかりした仕事をしなければ税金の無駄使いになる。それだけではなく、国としての信頼や方向性までをも失うことになりかねない。したがって、今回の『386世代』の当選が若いだけという期待感から選ばれ、彼らに国を動かす覚悟、能力が落選したベテラン議員よりも欠けているとしたら大きな損失を韓国は被ることになるであろう。
国会議員になろうとするからには国家としてのビジョンを掲げ、将来の韓国をどうするのかを訴えていくべきである。全体として今回の選挙を見ると、個々の候補者は、地元に関連する問題を多く語ったように見受けられた。しかし、今、国民は『未来』を語れるリーダー・政治家をなにより求めているのではないであろうか。
これは韓国だけでなく、日本の政治にも言えることではあるが。
『若いだけで選挙に勝つことほど怖いものはない』とある議員から聞いたことがある。私にとって大きな課題は、議員になるための覚悟・能力をつけなければならないということである。そのための一歩をここソウルから歩み始めた。
<参考>
50代 | 87名 | 38.4% |
60代 | 67名 | 29.6% |
40代 | 60名 | 26.5% |
30代 | 13名 | 5.8% |
70代以上 | 0名 | 0% |
計 227名 国会議員総数 299名 |
女性の当選者は地域区で5名、比例区で11名 全体の5.9%
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Yoshio Gomi
第20期
ごみ・よしお
三得利(上海)投資有限公司 飲料事業部 事業企画部
Mission
日本の対アジア政策を考える