Thesis
1月20日アメリカ大統領就任式が行なわれ事実上ブッシュ政権が動き始めた。ブッシュ政権は、共和党の伝統的スタイルである相互主義を基調とした政策を打ち出すことを発表、主要人事も保守色の濃いものとなった。
北朝鮮政策の基本は、前任のクリントン大統領の包容政策を否定するものではなく、それを尊重しつつも相互主義をより重視した政策を行なうというものである。
日本の場合、日中・日米関係が安定している現在、アメリカの強攻策によって、日本の立場が試される時が来ると考えている。朝鮮半島を中心として、中国・アメリカが自国の勢力争いを行なっている。その際に、両国が日本を自分側に持ちこみ味方にしようとする。そうなった時、日本はアメリカにつくのか中国につくのかを日本独自の路線で行くのか選択を迫られる時が必ず来る。これは、日本だけでなく韓国にも言える。そのためにも、どうするかを考えることが今重要である。
ところで、北朝鮮の金正日総書記がまた突然動きを見せた。極秘訪中である。彼は、昨年6月の南北首脳会談を前にした5月末にも中国を訪問している。
今回の訪中の目的は何であろうか。前回は南北首脳会談を前に、そして、今回はブッシュ氏就任式前ということで、友好国の中国と今後どう対応していくかを協議するという目的。また、アメリカに対して中国との連携を見せることも大きな目的の一つであると言える。
この訪中の報道を韓国内で見ていると、多くがこの訪中は北朝鮮の変化の証であると報じている。
多くのマスコミは中国の改革開放政策を学ぶために訪中したと捉えているのに対して、一部では次のようなことを報じている。北朝鮮は、今回、中国を訪問したがこれは中国の改革開放を北朝鮮でも実施する準備のために行ったのではなく、昨年6月以降、進められてきた政策の最終確認のために訪中したというのである。北朝鮮は、昨年1年間経済開発政策を行なってきたという。これによると、経済開発地域は、ピョンヤン・ナンポ・ウォンサン・ハフン・シニィジュであり、地域別に育成産業が異なっている。シニィジュは機械工業団地にナンポは軽工業生産及び加工団地になっている。情報技術産業と金融中心地はピョンヤンにそして科学技術団地はウォンサン・ハフンへ置かれることにになるという。
現在、北朝鮮は韓国との間で中国のような経済特別区を共同で創設しようという動きがある。それは、38度線からすぐの北朝鮮のケソンである。しかし、このケソンが前述の経済開発特化地区には入っていない。これはどういうことであろうか。ケソンは北朝鮮にとっては韓国との交渉上の見せ掛けと言うことではないか。もしそうならば、北朝鮮はやはり変わっていないと言える。内部的には変わっているのかもしれない。しかし、体制維持のために対外交渉をするという点では昔となにも変わっていない。
北朝鮮は2001年1月1日、党報・軍報・青年報共同社説を通じて『新思考』というものを発表。21世紀は激変の世紀、創造の世紀であると規定したが、前述のように考えればこれが何を意味しているのか、注意深く見守る必要がある。外部的なパフォーマンスに過ぎないこともあるからだ。
ところで、今回の訪中では、改革開放を目指す北朝鮮と報道されたが、ここで、中国で成功した改革開放を北朝鮮版として行った際に成功するかを考えてみたい。結論から言えば、北朝鮮版改革開放は決して上手く行かない。それは、改革開放政策を始めた中国の当時と現在の北朝鮮を比較してみればわかる。20年前の中国と現在の北朝鮮とは大きく異なっている。当時中国の人口の70%が農村で生活しており農村改革から推進し農業生産を画期的に伸ばし、その成果を企業改革に応用した。一方、北朝鮮は工業化を大きく推し進めようとしている点で大きな差異がある。また、当時、中国の経済特区を作る際に、故郷の中国に華僑資本が投資しそれが中国の巨大市場を狙う外国資本を引き付けた。 一方、北朝鮮では韓国に当時の華僑資本ほどの役割を大きく期待することは難しい。また、国内市場が小さいため外国資本家にとっては魅力的ではない。そのため、外国資本を期待することができない。北朝鮮にとっては、外国資本家に北朝鮮で生産基地を作りたいと思わせることをしなくてはならず負担が大きいといえる。
このようなことを考えると、中国のようにうまく行くと考えることは大きな間違いであるとわかる。
改革開放が期待できないとなれば北朝鮮はどの道を進むべきであろうか。北朝鮮の体制を維持しつつ進める改革開放は失敗の結果しか残されていないのは前述した。北朝鮮がとらなければならないのは、体制転換の道である。北朝鮮にとってはこの道しか残されていないのである。
Thesis
Yoshio Gomi
第20期
ごみ・よしお
三得利(上海)投資有限公司 飲料事業部 事業企画部
Mission
日本の対アジア政策を考える