Thesis
昨年7月から、茅ヶ崎にて商業タウンマネージメント構想策定作業部会の委員として、茅ヶ崎商業タウンマネージメント構想(茅ヶ崎TMO構想)の策定にかかわってきた。今回は、約1年間の茅ヶ崎での活動とこの活動を通してのTMO(タウンマネージメントオーガニゼーション)について考察する。
茅ヶ崎のことやTMOの考察を行う前に、TMO(タウンマネージメントオーガニゼーション)の制度やこの制度が作られた背景について説明する。
1.背景 ~まちの顔が失われていく~
全国、すべてのまちに中心となる場所がある。その中心となる場所(中心市街地)は、さまざまな都市機能を集積し、経済社会活動を展開する場として、また、長い歴史の中で文化、伝統を育むコミュニティの中心として、地域の発展に重要な役割を果たしてきた。しかし、近年、急速なモータリゼーションの進展、消費者のライフスタイルの多様化や人口の郊外への移転、これに伴う商業施設や公共施設の郊外移転等都市機能の郊外分散が進んでいる。この結果として、街の中心部において空き店舗が増加し、大型店も中心部から退店する動きがみられるなど既存商業集積の魅力が相対的に低下し、商業機能の空洞化が深刻化しつつある。これまでも各地の商店街等で顧客吸引力を高めるため様々な取り組みをしてきたが、個々の商業集積・商店街レベルでの努力では解決が困難な問題が多く、中心市街地の再活性化は、全国的に取り組むべき緊急の課題となっている。(タウンマネージメント推進協議会HPより引用)
この中心市街地の衰退の問題は、何も日本国内だけの問題ではない。アメリカ・イギリス・イタリア等々の先進諸国においても起こっていた。たとえば、イギリスではTCM(タウンセンターマネージメント)という方式で中心市街地の活性化に取り組んでおり、日本でも看過しえない問題として取り組もうと意識が醸成された。
日本において、平成10年7月に中心市街地整備改善活性化法(正式名称「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」)が施行され、経済産業省・国土交通省・総務省・農林水産省・警察庁・文部科学省・厚生労働省・内閣府で構成される関係省庁連絡協議会も設けられ、中心市街地の活性化に取り組む市町村の支援体制を整えるように、国を挙げて中心市街地の活性に取り組んでいる。
2.TMO(タウンマネージメントオーガニゼーション) ~地元住民のまち運営組織~
TMO(Town Management Organization)とは、商店街、行政、市民その他事業者等の地域を構成する様々な主体が参加し、広範な問題を内包するまちの運営を横断的・総合的に調整・プロデュースし、中心市街地の活性化と維持に主体的に取り組む機関である。
中心市街地活性化法において、TMOの組織となりうる機関は次の4つと定められている。
この項以降では、私がTMO構想の策定にかかわった茅ヶ崎における取り組みを説明する。
1.茅ヶ崎の概要(茅ヶ崎の基本計画概要書から引用)
(1)茅ヶ崎市の概要
茅ヶ崎市は、都心から約50kmの神奈川県中央南部にあり、湘南地域の中心部に位置する面積35.76km2の都市である。市域は、相模湾に面した平地とその背後に広がるなだらかな丘陵地からなり、年間を通じて穏やかな気候に恵まれ、古くから別荘地や療養地として発展してきた。
人口は、約22.5万人(平成15年5月現在)、高齢化率は12%で、近年の人口の伸びは鈍化傾向にある。また、他都市へ通勤通学する人の割合が高く、湘南のリゾート的な要素を持った住宅都市である。
(2)中心市街地の概要・現状
中心市街地では、中高層マンション等都市型住宅の立地が進みつつある一方、空店舗、空テナントや平面駐車場等の低・未利用地が存在し、中心商業・業務地としてさらなる土地の有効利用と都市基盤整備が必要となっている。
商業面では、市外への消費者の流出や地区内の商業地の格差、空店舗の増加が顕著であり、大型店出店による来街者の動線の硬直化や、それに伴う既存商店街での買物客の減少も顕著にみられ、今後の商業活動の停滞が危惧されている現状にある。
この認識の下に、まず茅ヶ崎市の行政において基本計画が策定された。
2.構想策定について
茅ヶ崎市は、平成13年度にJR東海道線茅ヶ崎駅を中心に東西約1.6キロ、南北約1.2キロの面積約190haを中心市街地として設定し、中心市街地を「海とみどり、ふれあいの生活文化を育む中心拠点」と位置づけて、基本計画を策定し、昨年4月に国に提出した。
そして、次の段階として昨年7月から茅ヶ崎商工会議所(TMOを担う団体)を中心としてTMO構想を策定することとなり、私は、松下政経塾が茅ヶ崎にある縁から、この策定に委員としてかかわることとなった。
大きく分けて以下の3つの組織で構想策定に当たった(組織の順位順)
昨年7月から取り組んできた構想が完成したので、その内容を紹介する。
1.テーマ ~“あい”のまち 茅ヶ崎~
TMO構想のテーマは、「“あい”のまち 茅ヶ崎」である。これは議論の末、以下の6つにまとめられ、その上で4つの基本方針が定められた。
|
ここからは、1年間の活動から見えてきたこと、疑問に思ったことを書いていきたい。
1.TMOの役割
TMO制度は、今まで商店街が商店街単独で活性化に取り組んでいたことを、中心市街地というエリアの限定はあるが、単独ではなく、一つのエリアとして取り組むところに大きな意義があると思っている。
単独でないということは、それぞれの商店街の足並みがそろうように調整しないといけない。利害調整を行う必要性がある。この役割を果たすものがTMOであり、一役割と定義づけられている。
商店街を含めて中心市街地の活性化には、商業者だけでない人たちとの連携が必要であるが、広範な連携を可能とする意味で、各商店街が個別にやるよりも、TMOが窓口になってやるほうが、商店街も連携を取りたいと思う側も効率的でいいのではないかと思われるし、その役割を果たすべきだと思っている。
それ以上に思っているのは、中心市街地としてエリアを経営する機関としての役割を果たすべきだと思っている。
中心市街地のリーダー的機関としての役割を果たして、ある程度主体となってまちづくり・まちおこしに取り組むべき機関であるのが、TMOではないかと私は思っている。
2.タウンマネージャーってマネージャー?
中心市街地活性化推進室ホームページにタウンマネージャー養成研修事業と派遣事業の説明には以下のとおりに書かれている。
<養成研修事業の支援概要>
中心市街地において、各種事業を一体的に行う上で戦略的な指導・助言を行うことのできるまちづくりの専門家の養成を行います。
<派遣事業の支援概要>
中小企業総合事業団に登録された中心市街地活性化に関する各分野の専門家を長期にわたり派遣し、まちづくり期間(TMO)の組織体制の整備、商業ゾーンの方向性、商業機能の整備、ソフト事業の実施等に係る指導・助言を行います。 タウンマネージャーは、中心市街地活性の指導・助言を行うと書かれている。しかし、マネージャーは指導・助言を行う人のことをいうのだろうか。マネージャーは、中心市街地の経営者ではないのだろうか、経営とはまちづくりの指導・助言だけではないはずである。そういった意味で、指導・助言がメインだとするとマネージャーというよりもコンサルタントといったほうがふさわしいのではないかと思っている。
中心市街地の活性がうまくいくためには、やはり私はそのまちに張り付いて経営するマネージャーが必要だと思っている。
実際に神戸ながたTMOの東氏は、国の制度としてのタウンマネージャー(全国最年少)ではあるが、神戸の長田に張り付いて活動している。東氏とお会いさせていただき、神戸ながたTMOの責任者としてまちおこしの話を聞かせていただいた。JR西日本新長田駅の南部一体の約6つの商店街を束ね、まちおこしの企画を立案したり、各企画については、独立採算制で資金調達をし、進めていくことを行っている。また、6つの商店街の調整というようなこともやっている。やはりタウンマネージャーは、指導・助言よりも、実際の企画立案や資金の調達といったこと等々のまちおこしの責任者として活動しなければならないんだと痛切に感じた。
私も今後、茅ヶ崎TMOの中心市街地活性の取組みに関わりながら、マネージャー(経営者)としてのタウンマネージャーになって中心市街地の活性の経営に当たりたいと思っている。これから、ふさわしい人物になれるように取り組んでいきたい。
昨年7月から、茅ヶ崎でもとから茅ヶ崎の住民でないにもかかわらず、委員に加えていただき、活動させていただいた商工会議所をはじめとする茅ヶ崎TMOの皆さまがた、そして私を派遣してくださった松下政経塾には、非常に感謝している。これからも茅ヶ崎の活性ができるように私なりに尽力していきたい。
Thesis
Kentaro Ebina
第22期
えびな・けんたろう
大栄建設工業株式会社 新規事業準備室 室長
Mission
「ノーマライゼーション社会の実現」