Thesis
七五三基金の活動概要作成に際し、カンボジアの各種データを収集しました。カンボジアが発展途上にあると改めて実感したのは、データ収集に際してでした。問い合わせをしたのはカンボジア大使館・外務省・日本カンボジア協会・アジア研究所・国際協力事業団・国際協力推進協会等々。カンボジア大使館を始め、多くの機関が有効なデータを有していませんでした。
結局、私のカンボジア人脈に動いてもらいました。3つのソースからデータを手に入れたのですが、それぞれで多少の違いがありました。統合してカンボジア王国の最新データを整理しましたが、それと国連や世界銀行などのデータとが違っていたのも理解できないところでした。今月はこの作業を通じて感じた事について所感を述べ、最後にカンボジアの各種データを示したいと思います。
以前、月例報告でカンボジア王国財政大蔵大臣(当時)サム・レンシー氏の外務省訪問に際し、外国と関係を持つ省庁には国別ランキングなるものが4段階で存在することをレポートした。勿論カンボジアは最低ランクに位置しているであろうし、2国間援助でわが国は第1位であるにせよ、日本にとってカンボジアの重要性が低いことは容易に予想できる。しかし、サム・レンシー氏の訪問が非公式であったにせよ、最低ランクそのままに対応した外務省に疑念を持たざるを得なかった。アジアの時代を叫びながらもそれに対応しているとは思えない。
カンボジアPKOの時、お金だけの貢献はダメだ!日本はお金だけだ!と言った論調をよく耳にした。私も人的貢献をすべきと思う。しかし、その論には資金協力を否定するが如きニュアンスがあったのではないか?選挙監視員としてカンボジアPKOに参加し、わが国の資金がどれだけ役立っているかをこの眼で見てきた。それに対する正当な評価はなかったように記憶している。
問題を多く抱えているとは言え、世界各国に絶大な貢献をしているわが国のODAに関して国民が余り良いイメージを抱いていないのは政府とマスコミに責任がある。額では世界一であるのに、国民が多少なりとも誇りを持てないのはここに理由がある。なぜODAをするのか、政府に明確な理念があれば国民にも伝わるはずである。そして政府とマスコミが実状を伝えれば、ODAへの評価も生まれてくるであろう。
顔が無いとは日本外交を表した言葉であった。わが国はカンボジアへの第1位の援助供与国である。日本が重要な地位を占めていることは間違いない。現地紙である「プノンペン・ポスト」「カンボジアン・デイリー」を読むと、わが国の援助供与の記事のみが紙面に踊っている。冒頭に述べたカンボジアのデータ取りに際し、ある機関ではこう答えてくれた。
「残念ながらカンボジアに関する最新データはありません。政府機関や経団連などのミッションが組まれれば、先だって基本調査がなされるのですが....」。
これを完全に否定することは私にもできないが、これでまともな外交ができるのだろうか?一体どんなアイデンティティを持って日本は進むのか、いまだ明確でない気がするのは私だけではないだろう。
アジアの時代といわれて久しい。しかし、日本は自らアジアの一員であるとか無いとかの議論を未だに続けている。ナンセンスという他はない。如何にも考えていますが如きスローガンを免罪符的に使う事を今すぐにでも止めるべきである。アジアのみならず世界が求めていることは何であるのか、そして日本はどう行動するのか真剣に考えるべき時は当に過ぎている。玉虫色の外交姿勢が許されたのは日本の国力が小さかった頃の話なのだから
カンボジア王国各種データ | |
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人 口 | 989万人(1994 世界銀行) |
成人識字率 | 59%(1994 国連開発計画) |
乳幼児死亡率 | 5歳までに1000人中193人が死亡(1993 カンボジア開発省 |
人間開発指標 | 173ヶ国中147位(1994 国連開発計画) |
平均就学年数 | 2年(1994 国連開発計画) |
国民一人当たりGNP | US$170~230(1994 世界銀行) |
(*以下、カンボジア計画省1995、アトラスエコ1996〔フランス〕)
面積 | 181, 035平方キロ |
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人口密度 | 1平方キロ当たり52人 |
産業別労働力人口 | 産業別国民総生産 | |
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農業 | 60% | 45% |
工業 | 20% | 27% |
サービス業 | 19% | 27% |
鉱業 | 1% | 1% |
1985 | 1990 | 1993 | |
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乳幼児死亡率 | 216 | 200 | 193 |
Thesis
Takashi Horimoto
第13期
ほりもと・たかし
Mission
東南アジア 援助・開発・国際協力