Thesis
11月8日から27日までカンボジア訪問をしてまいりました。今回で丁度10度目の訪問となりました。主目的は1)バッタンバン州サンカール郡、アンロンビル小学校開校式の開催、2)第1回七五三基金カンボジアスタディツアーの実施でした。今月は小学校開校式と サヤプール幼稚園宿舎建設プロジェクト(9月にレポート)について報告させて戴きます。
1.アンロンビル小学校開校式
カンボジア北西部に位置するバッタンバン州は、蜜柑の産地として、長く続いた内戦で は激戦地として、そして帰還難民が大量に戻った州として有名である。バッタンバン州の サンカール郡では最大のアンロンビル小学校(生徒数1,749名)の建設が、今年度プロジェクトでは最大の資金を投下したものであった。これまでも何度かレポートした現地NGOでは最大の『開発のための仏教(以下BFD)』が事業パートナーであった。
これまでに訪問した学校は数知れないが、建設以前のアンロンビル小学校は最も老朽化 が進んだ部類に属していた。5教室あるのだが、端から端まで一直線に見通すことができた。場所によっては空も見えた。所々、崩れそうな梁やドアを認めることもできた。その 他、教師の質や村人の様子などのヒアリングを行い、今年度学校建設プロジェクトを当校 に決定した。
問題は資金であった。寄付予定者の予定額を超えたのである。まずは円高。昨年は1US$ =85円であった。ところが実施予定期の為替レートは1US$=110円前後であった。また、カンボジア政府が森林伐採を禁止したことにより木材の値段がはね上がった。また、木材を 使用して作る煉瓦等の値段も1個当たり80リエル(昨年)から120リエルに高騰した。こう した理由により、今年度プロジェクトはUS$35,355との数字になった。
BFD代表のヘン・モニチェンダ師とも相当議論したが、“建設後間もなく崩れ始める他の校舎(おおくは建設資材のごまかしによる)とは違い、資材は良質のものを使い、建設 に際してはしっかりと監視し、学校関係者一丸となって建設を進めよう。サンカール郡に おいて最大かつ最高のアンロンビル小学校を実質的にもシンボルとしても最高にしよう。 それが、子供達だけでなく住民達にとって精神的にプラスになるであろう。”、と最終的 に合意した。またそうした経緯を寄付者にも理解して戴いた。
建設中、生徒の参加は勿論であるが、村人や教師も夜間に至るまで協力体制をとり、建 設資材の盗難予防に務めていた。そして11月に学校は完成。16日に開校式を迎えた。
その前日、BFDの本部にて12時過ぎまで準備をしていたが、その時スタッフよりカンボジア王国政府より、七五三基金に国家建設功労第1等勲章を授与されることを教えられた。驚きと戸惑いとが交錯した。思いも狙いもしていなかったことである。大変名誉な事で はあるのだが、不思議と浮かれることもなかった。只、BFDスタッフが我が事のように喜んでくれたのが嬉しかった。
そして当日、08:15より開校式が行われた。カンボジア側よりキー・ロム・オーン国会 議員、バッタンバン州知事、州教育省長官、サンカール郡郡長、開発のための仏教副代表 、その他多くの来賓が、日本よりは在カンボジア日本国全権大使、内藤城氏((株)内藤 城 社長)他9名の列席によって式は進められた。日本から招いた寄付者から、生徒に180 0本のボールペンと1800冊のノートを手渡して戴いた。そして私も勲章を授与された。
昨年もそうであったが、テープカットの後、教室で学んでいる子供達に出逢う瞬間が最 高に嬉しい。それを見ている先生や現地関係者の笑顔も溢れんばかりである。校長先生は 私に言った。「皆さんのお陰でこんな立派な校舎を持つことができました。今度は私達の 番です。皆さんの善意を無にしないよう、子供達が常に希望を持って生きられるよう私達 は頑張ります。また学校に来て下さい。」、と。
2.サヤプール幼稚園児のための宿舎建設プロジェクト
21日に、帰還難民の子弟を対象にしたサヤプール幼稚園の宿舎建設資金の贈呈を行った 。本件は前回の訪問(8月)の際、BFDよりプロジェクト申請を受け取ったものである。建設費総額はUS$5,562(日本円換算レート/US$1=115.65円)であったが、多くの方々のご協力により2ヶ月で資金集めを終える事ができた。
宿舎に寝泊まりする事になる子供達は、幼稚園に通う子供達の中でも特に貧しい家庭の 子供達である。私自身、何度も彼らの家に足を運んでみた。帰還難民の生活は今でも非常 に厳しく、日々食するものはお粥である。副食物を口にすることは希で、道端に生えてい る草をお粥に入れているのがやっとなのだ。
BFDではそうした子供達に食事を与え、幼稚園に寝泊まりさせているのだが、幼稚園のコンクリート製の床に茣蓙を敷いて寝かせる毎日であった。それが体にいいはずもなく、 毎日のように発熱する子供が見受けられた。
そうした状況を打開するためのプロジェクトが宿舎建設である。“一日も早く!”とは 思っていたものの、今回の訪問までの2ヶ月で全額そろえられるだろうか?との不安を抱えながらの資金集めであった。
本プロジェクトには多くの方の協力があった。PHP総合研究所が進める「PHP思いやり運 動」に本件の援助申請を行い、10万円の援助を得ることができた。また、6月に講演した 京都市立梅小路小学校では、学校側を始めPTAが七五三基金に賛同して下さり、全校生徒による空き缶拾いを開始した。全校生徒はその活動がカンボジアの貧しい子供達の宿舎を建てるこ とに繋がる事を理解しつつ空き缶を拾ったという。喫茶店を営むPTA副会長さんは、店に募金箱を置いて協力して下さった。
多くの方々の暖かいご協力により、11月の初めに資金集めを完了することができた。今 年、最も嬉しかったのはこの瞬間であった。しかしそれは私だけではない。それまで七五 三基金より数倍大きい数カ国のNGOに援助申請をし、断られてきたBFDスタッフである。特に、幼稚園長のタン・チンヒエンさんを初め幼稚園の先生達の喜びはこのレポートで伝えきれない。宿舎は来年2月末に完成する予定である。子供達だけでなく、スタッフも安心して眠ることができる日も近い。
Thesis
Takashi Horimoto
第13期
ほりもと・たかし
Mission
東南アジア 援助・開発・国際協力