論考

Thesis

月例報告

<摘要>1 調査:中国における観光政策の概要把握2 清華大学経済管理学院において授業聴講開始3 漢語水平試験(HSK)及び中間試験受験4 情報:将来予想される中国難民

<詳細内容>1 「中国における観光政策の概要」 調査先:中国国家旅遊局     日本交通公社等日系の旅行社駐在事務所     駐中日本大使館     中国旅行社(CTS)

 調査結果:

  1 観光行政組織

   所管。また、1988年には中国観光政策の最高調整機構として国務院内に「国家観光事業委員会」を設置。旅行業部門の審議と部署間の業務協助を担当。  2 観光の概況及び政策

 これまで、観光業は無煙工業という言葉もあり、毛沢東同志時代にはなかなかその必要性が認められなかったが、トウ小平同志の指導により1978年「第11期3中全党大会」で「経済活性化のための改革、開放政策」が採択されて以来、観光産業が成立した。中国観光産業の始発は1978年だと言える。当時の観光による外貨収入では世界で41番目の位置だったが、1993年の観光収入は47億ドルで世界で15番目の数字を上げている。1985年ごろ宿泊の問題が起こったが、その後解決(現在では高級ホテルについては供給過剰気味)され、85年から1993年の間に外国人観光客は年平均13%で増加している。特に、1989年、天安門事件の影響で観光客は大幅に減っているが、1990年以降は続いて年40~50%という急激な増加率を示している(以上、データは国家旅遊局 統計資料)。 ここ数年の間に、旅行社も増え総数で4506社になった。その他、以前は食事の場所などで外国観光客に十分なサービスができていなかったが、現在では「定点」と定め、毎年テーマを決め観光産業、観光商品の充実に努めている(1993年:中国山水風光の旅、1994年中国文物古跡の旅、1995年中国民俗風情の旅、1996年中国レジャーの旅)。

  3 日系旅行社、駐中日本大使館、中国旅行社の見方

 以上、中国国家旅遊局における取材及びその他情報収集の結果をまとめてみたが、ここまでの内容から大多数の人は中国観光の明るい将来を予想されることと思う。そこで、中国観光の現場の声を併記しておきたい。 まず、外国人旅行者数であるが、国家旅遊局発表のものは訪問目的別に統計を取っておらず、ビジネス等による訪問も併せた形でデータを発表している。1990年以降の外国旅行者の激増は、ビジネス客の激増が影響しており、国家旅遊局の観光政策は影響していないという。具体的には、場当たり的な催しやガイドの質向上、国内航空料金の2重価格性是正などへの未対応など国家旅遊局の怠慢な姿勢を指摘する声が強かった。特に、国家旅遊局の身内とも言える中国旅行社(国家旅遊局直轄の中国最大の旅行社)からもこうした声が聴かれたのは特筆に値する。 こうした、国家旅遊局の表向きの華々しい観光政策(観光年等)と実際の行政のギャップの原因については以下のような声が聞かれた。

(1)国家旅遊局が省の旅遊局をコントロールできておらず、国家が省の意向により動かされており、政策のバランスを失っている。

(2)国務院内は日本政府以上に立て割り行政が進んでおり縄張争いも激しい。国家旅遊局は他の官庁の協力を得られていない。

(3)そもそも現在の指導部に観光立国という観念が薄い。

  4 日本の中国に対する観光分野での協力

 政府レベルではまだない。2年前から年1回日本の運輸省と中国の国家旅遊局が会合を持っているに過ぎない。 今後の調査見通し:

 伝聞による中国の観光の現状はほぼ掴めたので、今後は代表的な観光地及び観光開発地を視察し、21世紀に向けた観光振興の必要性を中国を例にまとめ、中国国家旅遊局及び日本大使館との議論を深めて行きたい。2 「清華大学経済管理学院」

 岡田塾頭との約束である中国人一般学生の授業聴講を今月から始めた(ただし、6月 中旬から夏休みに入る)ので報告する。 沙葉客員教授のご援助で経済管理学院のマクロ経済を中心とした講義が聴講可能となった。清華大学といえば、中国の副首相である朱ヨウ基同志の母校であり、彼は現在ここ経済管理学院の院長も務めている。1989年の天安門事件から早6年が経つが、その時中心となった北京大学の学生に対して思想教育をするため人民解放軍への入隊が義務づけられた(2年で廃止)。その結果、当時の新たに入学する学生は北京大学を嫌い、清華大学に入学したという。現在彼らは修士過程の学生となっている。ちょうど私が聴講している学年である。この中から未来の中国のリーダーが生まれるのは間違いなさそうだ。3 「漢語水平試験(HSK)」

 1年後の語学レベルを測るために、その基準として今回「HSK」を受験した。

英語で言うとTOEFLに値する。 人民日報によると、4,000人以上の外国人が受験した。去年と比べ、90%増加している。1988年から始まり、100カ国から延べ35,000人の人が受験している。中国経済の状況を 反映して、中国語の学習熱は益々盛んになっているようである。 また、清華大学では中間試験が行なわれた。口語97点、聴力79点、読み81点、報刊80点とあまり良くなかった。期末試験をもう少し頑張らないと、後期、高級班への進級が 難しいだろう。4 「将来予想される中国難民」

 「北京週報」の巻頭に中国難民に関する社説があったので、ここにまとめておく。特に、今年のアソシエイトがこの難民問題に取り組んでいるので参考になるのではないだろうか。特に、数値を中心にまとめる。 現在、中国の余剰労働力は1億3千万人にのぼっている。主に、農村の余った労働力で、その数は1億2千万人で、農村労働力の約25%を占めている。余剰労働力発生の原因については、 1 農村人口の基数が大きく、増加速度が早いこと。今世紀末には、農村余剰労働力は約2億人に達する。

 2 農業労働生産性の向上。

 3 農業産業の構造が不合理で、第2次、第3次産業が遅れ、就業条件が相対的に不足している。全体的にみて、第3次産業の比重は27%しか占めていない。

 4 穀物栽培の収益が低いため、離農現象がますます顕在化している。

 5 都市化の水準が低い。中国では26.2%でしかない。

 では、この問題をどう解決するのか。農村余剰労働力を解決する鍵は、広大な農村にある。 1 余剰労働力を組織して、荒れ地を開墾する。穀物栽培に適した荒れ地が三千余万ha営林に適する荒れ地が八千万ha、利用できる砂地が六千万haある。

2 郷鎮企業を積極的に発展させる。

3 小都市、町の建設を加速させる。

4 都市経済の発展も適当な農村労働力を必要としている。

5 職業訓練を行なう。

といった、解決策を提示し、中国は農村余剰労働力問題を解決する能力を持っているとし余剰労働力が大量に国外に流出するようなことは起こり得ない(以上「北京週報」 から)と結ぶ。 余剰労働力の原因を第3次産業の未発達に求める観点は、観光立国の推進の必要性を語る際にも使える(観光業等サービス業の労働力の吸収力は高い)。 また、今後、国有企業倒産に伴う失業者の増加は都市部では問題になり、農村余剰労働力問題の解決を都市、小都市、町に頼るという議論は成り立たない。よって、もっとも考えられる対策は「新国土創成」ならぬ「余剰農民を組織しての新たな耕地の開墾」であろう。しかし、現在政府レベルでその動きはまだない。

                     既に真夏の日差し差す留学生楼にて

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高橋幸也の論考

Thesis

Koya Takahashi

高橋幸也

第15期

高橋 幸也

たかはし・こうや

Executive Vice President, Panasonic Energy of North America

Mission

企業経営、管理会計、ファイナンス、国際経済

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