論考

Thesis

月例報告

「日本を巡る局地経済圏構想の行方に関する研究~アジア経済発展の新局面」について
              (中間報告 第3回)
The interim report No.3 of *The study of prospect of Sub-Regional Economic Zones around Japan : The new situation of Asian economic development*
Khabar pertengahan tiga: *Penyelidikan di sekitar masa akan datang Daerah Ekonomi Bawah Lingkungan di sekeliling Jepun : Kedudukan baru di kemajuan ekonomidalam Asia*
<購噐壓晩云巓律議蕉何将蔀袈律議念殻議冩梢《冉巖将蔀窟婢議仟蕉中》>(及眉嶄余議烏御)
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標記の研究について以下のとおり報告する。
About the above study, I report as follows:
Di sekitar ke atas penyelidikan, saya khabar berikutnya daram bahasa Jepun dan bahasa Inggeris:
購噐參貧議深臥,厘和中喘晩囂才哂猟烏御。

摘要(Summary)

1 局地経済圏発生理論(試論)
Theory of the birth of Sub-Regional Economic Zones (Essay)
局地経済圏は以下の9つの諸要因を背景に形成されると考えられる。

<「地域経済圏」形成の仮説モデル>
◎市場的インセンティブ
○ 生産コスト減

  1. 生産要素代替
  2. 地理的取引費用の逓減
  3. 民族・文化的繋がり
  4. 市場拡大効果

◎ 政治的インセンティブ

  1. 相互開発作用
  2. 地域の政治的安定
  3. 辺境地開発

◎ 形成推進環境

  1. 政治の経済化
  2. 地方分権・地域主義

It is thought that Sub-Regional Economic Area is formed with following ninepoints for the background.
 

◎Market Incentive
○ Depressing Cost of Products

  1. Supplement of Factors of Production
  2. Depressing Cost of Trade
  3. Cultural and Ethnic Relationship
  4. Magnification of Market

◎ Political Incentive

  1. Effect of Mutual Development
  2. Regional Political Stability
  3. Development of Frontiers

◎Environment to Promote

  1. Political Change to Point to Economic
  2. Authorizing to Districts and/or Localism

 2 事例検証
Inspection of some cases in Asia

(1)シジョリー グロース・トライアングル
Singapore-Johor-Riau Growth Triangle
 シンガポールを中心にマレイシアのジョホール州、インドネシアのリアウ州(特にバタム島)で構成した局地経済圏。最も早く始動し、成果を挙げた経済圏であり、その分、将来、局地経済圏がその形成構造的に抱えるであろう問題(ナショナリズムとマーケッティズムの衝突)を既に表し始めている。

(2)北方グロース・トライアングル
North Sumatra-West Malaysia-South Thailand Growth Triangle
 インドネシア・スマトラ島北部、マレイシア北部、タイ南部で構成された局地経済圏。 シジョリーGTに比べ、生産要素の補完関係が弱い分、今後のマレイシアを中心とした国家による地域開発の拠点創りが必要とされている。

(3)東部アセアングロース・エリア
Mindanao-Sabah Sarawak-Brunei-Sulawesi Growth Area
 フィリピン・ミンダナオ島、マレイシア・サバ・サラワク州、ブルネイ、インドネシア・スラウェシ島で構成された局地経済圏。生産要素の補完関係がかなり弱く、民間主導の開発は望まれず、アジア開発銀行を中心とした国際地域開発プロジェクトの様相を呈している。
 その中で、最近開発中のマレイシアのラブアン島(中央政府直轄地)における金融センター(オフショアーマーケット)はこの地域の開発の拠点として注目されている。

(4) その他の局地経済圏(概観)
 Others(General Survey)
 中国の改革開放政策と共に興隆した2つの局地経済圏、華南経済圏、両岸経済圏、1997年の香港返還を期に変化の兆しが見える。一方、東西冷戦の終了と共に顕在化したバーツ経済圏、経済重視の国際環境の下、ますますの発展が望まれている。

(5) まとめ
Conclusion
 局地経済圏を各ポイントごとに3段階に評価(優、良、劣)し一覧表にまとめると以下のとおり。

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)
シジョリーGT
北方GT
東部アセアンGA
華南経済圏
両岸経済圏
バーツ経済圏

3 日本を巡る局地経済圏構想の行方
The future of Sub-Regional Economic Zones around Japan
   取り纏め中

4 結語~アジア経済発展の今後の展望及び日本の対応
Conclusion~The prospect of Asia economic development and the correspondenceof Japan
   作成中


「日本を巡る局地経済圏の行方に関する研究~アジア経済発展の新局面」
(中間報告 その3)
The interim report No.3 of *The study of prospect of Sub-Regional Economic Zones around Japan : The new situation of Asia economic development*

 1 局地経済圏発生理論(試論)
Theory of the birth of Sub-Regional Economic Zones (Essay)

前月報告を参照のこと(付加分のみを示す)。
Please refer to my report of last month.

●注1:「輸出促進策と輸出志向型開発政策の関係」

 輸出促進策と輸出志向型の開発政策は同義ではない。
 輸出志向型の開発政策は、保護主義的な輸入代替型の開発政策と対比され、その自由化政策を以って特徴とされる。
 つまり、輸入代替型の開発政策は自国経済の保護を優先し、より高度な国際レベル経済的効率を無視した政策であるのに対して、輸出志向型の開発政策は自国の経済を国際経済の中に解き放ち国際レベルでのより高度な経済的効率を追求する政策である。
 ただし、比較優位にない自国内の幼稚産業(ただし、将来比較優位を持つことが期待できる産業)の当初の保護育成を目的とする輸入代替型の開発政策は一定の効果を挙げている(比較的規模の大きな国内市場を抱えた日本の自動車、コンピュータ、カラーフィルム産業等や1950年代の台湾の衣料、雑貨産業)。

 しかし、一般に自国内市場の規模の大きな国においては有効ではあるものの、市場規模の小さな国では自ずと限界がある。
 その結果、一定の国際競争力を持たない時点での輸出志向型の開発政策の実施の際には、強力な輸出促進(優遇)策が採られる。典型的なものとして、シンガポールのジュロン、台湾の高雄、韓国の馬山、中国の経済特区などの輸出加工区(保税区)などが挙げられる。

 ここで注目されるのが、静学的には自由貿易は世界経済の厚生を高めるということが言えるが、動学的には必ずしもそうとは言えないということだ。
 なぜなら、その国の比較優位は生産技術の変化によって時代とともに変化するからだ。ただし、それには生産技術の向上のチャンスが無くてはならない。完全な自由貿易はそうした芽を摘んでしまう。戦後、一定時期続いた日本の保護主義的な政策がなければ、果たして日本の自動車産業は現在のような比較優位を得られたであろうか。

●注2:「垂直分業と水平分業」

 垂直分業とは、生産要素の価格差による比較優位に基づいて貿易が行われる段階であり、一方、水平分業は生産要素のは殆ど価格差がなく、あくまで技術差に基づく比較優位によって貿易が行われる段階を指す。

●注3:「海外直接投資理論」

 海外直接投資により生産要素(資本や労働など)が国際的に移動可能であるとすれば、資源配分の効率性が高まる(勿論、比較優位に則った貿易によっても結果的に資源配分の効率性は高まる(「要素価格均等化定理」)。
 ただし、あくまで比較優位に則った貿易が存在して初めて発生する現象であり、その国のその財における比較優位は維持され、それに則った貿易も維持される。)

 つまり、絶対優位を持つ生産要素が結び付けられる結果、それによって生産された財の国際競争力が増すことになる。ただし、実際には、海外直接投資によっても、生産要素の移動は制限される。つまり、移動費はゼロにはならない。よって、経済原則どおり、コスト逓減への方向、つまり移動費の掛かる生産要素を保有している国への直接投資が行われ、その国からの輸出が生じることになる。
 移動費の無限大のものとしては土地が挙げられ、労働も社会的コストの高いものとして挙げられる。

●注4:「地方と地域の用語使い分け」

 本レポートでは、「地方」と「地域」を以下のように使い分けることとした。「地方」は特に国内における地方政府(または一地域)、つまり中央政府(または国家)に対置するものを表す。
 これに対して「地域」は国家の枠組みを越えた数カ国に跨った「地方」の集まりを集合的に捉えたものを表すこととした。

2 事例検証
Inspection of some cases in Asia

前月報告を参照のこと(付加分のみを示す)。
Please refer to my report of last month.

(2)北方グロース・トライアングル
North Sumatra-West Malaysia-South Thailand Growth Triangle

(経済的成果:Economic Fruits)

 インドネシアの北スマトラとアチェ、北マレイシアのペラ、ペナン、ケダ、プルリス、南部タイのソンクラー、サトゥーン、ヤラー、ナラーティワート、パッターニーを含む18万平方キロメートルの面積に、2200万人の人口を擁し、実質GDPは約100億ドルの局地経済圏である。
 1993年に3カ国の共同開発プロジェクトとして構想が打ち上げられた。観光、交通・通信インフラ整備、資源開発等で協定が結ばれているが、マレイシアのランカウイ島(マレイシア中央政府による単独開発)における観光開発以外はまだそれ程域内開発は進んでいない。

(市場的インセンティブ:Market Incentive)

<1>生産要素代替:Supplement of Factors of Production

 北方GTはインドネシアの広大な土地と豊富は石油・ガス資源、安価な労働力、タイの農林業資源、マレイシアの土地、労働力不足と工業技術が補完関係にある。
 また、マレイシアの海洋性の観光資源、タイの文化歴史的な観光資源、インドネシアの雄大な自然といった観光に関しても補完性が認められる。

<2>地理的取引費用の逓減:Depressing Cost of Trade

 タイ及びマレイシアは道路(ハイウェイはない)及び鉄道(マレー鉄道)によって結ばれている。両地域とインドネシアのスマトラ島の間には、マレイシア資本のフェリー会社による高速フェリーが就航している。毎日1便から4便ほどある。
 マレイシアのペナンを中心としたもので、ペナンからインドネシアのメダンまでが約5時間、ペナンから同じくマレイシアのランカウイ島までが約2時間、ランカウイ島から対岸のタイのサトゥーンまでが約1時間、ランカウイ島からタイのプーケット島までが約2時間という距離である。併せて空路も開設されている(ペナン~メダン、ペナン~ランカウイ)。
 ただし、最近、メダンの外港から市内までの10キロの区間が高速道路化されたものの、その他のスマトラ島内の道路交通網の整備の遅れが目立つ。

<3>民族・文化的繋がり:Cultural and Ethnic Relationship

 インドネシアとマレイシアとは同系の民族であり、また、タイ南部にはマレー系イスラム教徒が住んでいる。
 ただし、タイの一般住民、つまりタイ族の異教徒であるイスラム教徒に対する見方には厳しいものがある。また、他の東南アジア地域同様、3カ国に跨る華人のネットワークも見逃せない。

<4>市場拡大効果:Magnification of Market

 マレイシアのペナン(1099人/平方キロメートル)以外は何れも一平方キロ当りの人口密度は300人に達せず、また、何れも国家の中央から外れた言わば辺境地であるため、その1人当りのGDPも低く(例えばマレイシア全体の1494ドルに対して北マレイシアは1148ドル、タイ全体の1247ドルに対して南部タイの769ドル)、その市場拡大効果は薄い。

(政治的インセンティブ:Political Incentive)

<5>相互開発作用:Effect of Mutual Development

 ペナンとマレー半島を結ぶ橋が完成し、ペナンのこの地域における拠点的機能が強化されている。マレイシア北部だけでなく、北方GT地域の拠点をも目指している。
 また、特に観光資源についてはこれら3地域には相互補完性が強く働いており、3地域の組み合わせにより国際的な長期滞在型のリゾート開発が有望視されている。
 実際に、この地域の中心に位置するマレイシアのランカウイ島を地域観光のセンターにしようと、マレイシア中央政府による開発が進められている。現在、ビーチとホテルの整備、ショッピングセンター、国際空港、国際会議場の開発が進められ、島全体がデューティーフリーの指定を受けている。

<6>地域の政治的安定:Regional Political Stability

 北方GTにおいては中央政府が直接、経済開発に携わっており、そうした意味で北方GTプロジェクトの存在は3カ国間の政治的安定に直接寄与しているといえる。

<7>辺境地開発:Development of Frontiers

 北方GTを構成する地域は何れもそれぞれの国に於いては辺境地帯であり、辺境地開発として各国政府が北方GTに寄せる期待は大きい。

(形成推進環境:Environment to Promote)

<8>政治の経済化:Political Change to Point to Economic

 特にインドネシアのスハルト政権が経済政策を対外開放志向に変更したことが大きい。

<9>地方分権・地域主義:Authorizing to Districts and/or Localism

 インドネシアにおいてはGT内の地方政府に対する経済自主権の付与が広範に行われており、また、入国ビザの免除等、国境措置についても域内に対しては特別措置が採られている。
 しかし、マレイシア及びタイについては中央政府主導による開発が行われており、マレイシア、タイ間には既にナショナリズムの衝突が起っている(ペナン港とソンクラー港の争い等)。

(問題点:Coming Problem)

 域内の拠点としては一応マレイシアのペナンが挙げられるが、世界的レベルから見てその貧弱さは否めない。各国がそのナショナリズムを捨て地域内の利益を優先し、ペナンの機能強化が図れれるかがポイント。
 また、観光の新しい拠点としてランカウイ島の開発が行われているが、近隣のタイのプーケット島との競合を排し、如何に協力して国際観光マーケットに打って出れるかもポイント。
 つまり、マレイシアとタイの協力による地域内の拠点の速やかな強化がこの北方GTの正否を分けると考えられる。

 (3)東部アセアングロース・エリア
Mindanao-Sabah Sarawak-Brunei-Sulawesi Growth Area

(経済的成果:Economic Fruits)

 東部アセアンGAは、フィリピン南部のミンナダオ島、マレイシア領ボルネオのサバ・サラワク両州及びラブアン島、ブルネイ、インドネシア領カリマンタン及びスラウェシ島といった東南アジアに分布する他の局地経済圏と比べその広範性が特徴である。
 しかも、ブルネイを除き、その他の地域は何れも辺境地であり、また、ブルネイにしても石油及び天然ガスといった一次産品に頼った経済であり、この東部アセアンGAには一次産業以外の産業は発達していない。

 1993年、フィリピンのラモス大統領の北スラウェシ訪問をきっかけに始動し始めた。

 特に、アジア開発銀行の主導により、マニラ、バンダルスリブガワン等域内の都市で開発に関する研究会が開かれている。まだ、具体的な動きには至っていない。

(市場的インセンティブ:Market Incentive)

<1>生産要素代替:Supplement of Factors of Production

 ブルネイ、マレイシア・サラワク州、インドネシア・スラウェシ島の石油、マレイシア・サバ州、インドネシア・カリマンタン島、フィリピン・ミンナダオ島の南洋材といった一次資源に頼る経済であり、めぼしい生産要素の補完性は見出せない。

<2>地理的取引費用の逓減:Depressing Cost of Trade

 地域が広大であり、かつ、域内最大のボルネオ(カリマンタン)島内においても道路網の整備が行われておらず、移動は専ら航空機による。
 ただし、こうした正式な交通網とは別に、マレイシア領ボルネオとインドネシア領カリマンタンの間には公然と密輸船が往来している。フィリピンの南部諸島においても同様である。マレイシアのラブアン島とブルネイ間のジェットフェリーのように、局地的は交通網の整備が行われている。

<3>民族・文化的繋がり:Cultural and Ethnic Relationship

 何度も指摘したように、マレイシアとインドネシアは同系の民族により構成されている。また、フィリピン人も民族的にはこの系列に入る。加えて、フィリピン・ミンダナオ島にはフィリピン人イスラム教徒が存在し、フィリピン国内の宗教対立に結果としての難民として多くマレイシア領内に流れ着いている。

<4>市場拡大効果:Magnification of Market

 域内は低所得地域であり、市場拡大効果は期待できない。一人当たりのGDPが1万6000ドルを越えるブルネイに至ってもその僅少な人口からGDPは44億ドルとカンボジアの倍ほどでしかない。

(政治的インセンティブ:Political Incentive

<5>相互開発作用:Effect of Mutual Development

 マレイシアはブルネイ沖に浮ぶ連邦政府直轄領のラブアン島を香港返還後のアジアの金融センターを目指して現在開発中である。併せて島内には商業施設並びにリゾート施設を整備している。
 勿論、全島デューティーフリーに指定されており、既にブルネイの人々の週末のショッピング、リゾートゾーンとして賑わっている。

<6>地域の政治的安定:Regional Political Stability

 4カ国の首脳が集まる会議も開かれるなど、徐々に連携が醸成されつつある。

<7>辺境地開発:Development of Frontiers

 ブルネイを除き、東部アセアンGAは市場的インセンティヴに導かれた局地経済圏ではなく地域開発的要素が強く、各国の思惑も専ら辺境地域の開発にあると言っても過言ではない。

形成推進環境:Environment to Promote

(政治の経済化:Political Change to Point to Economic)

1963年のマレー連邦とサバ、サラワクの合併(マレイシア)時に、新植民地主義だと非難したインドネシアのスカルノ前大統領やサバ、サラワクの領有権を主張したフィリピンとの間で国際問題にまで発展して因縁の場所である。その後、スカルノの失脚、フィリピンとの交渉を通じて和解し、ASEANの結成へと至った。しかし、まったくシコリが残らなかったかと言えば嘘になる。特に、フィリピン国内では国民の大部分を占めるキリスト教徒とミンダナオ島など南部に分布するイスラム教徒との宗教対立、独立運動といった問題があり、イスラム教国マレイシアとはギクシャクした問題となっていた。実際に多くのイスラム難民がサラワク州に流れ着いていた。しかし、1996年になってフィリピン政府は国内のイスラムグループと和解し、マレイシアもこれを好意的に受け止めた。この一件で、東部アセアンGA内の政治的問題は解決されたといってもよい。

(地方分権・地域主義:Authorizing to Districts and/or Localism)

 インドネシアについてはGA内の地方政府に広範な経済自治権が与えられており、また国境措置の特例も認められている。また、マレイシアについてもラブアン島は連邦政府の直轄地であるものの、サバ、サラワク両州については、マレイシア半島部に比べ、地方自治の気運は強い。フィリピンについてもミンダナオ島の地方政府が研究会等、国際会議に出席し、意欲を見せている。

(問題点:Coming Problem)

 東部アセアンGAは規模が余りにも広範で、かつ生産要素の補完性も全地域的に成り立っていないので、全地域的な局地経済圏の形成までには、まだ遠い道のりであろう。今後は例えばラブアン島とブルネイであるとかいった局地的な相互的な繋がりを強め、その広がりを待つというスキームになるのであろう。

(4) その他の「局地経済圏」(概観) Others(General Survey)

(華南経済圏)

 1979年以降、本格化した中国の「改革開放政策」は、広東省、福建省に設置された「経済特区」を以って始まったといっても過言ではない。これら広範な経済政策自主権を持つ経済特区は在外華僑の直接投資を原動力に急速な経済発展を成し遂げた。特に香港とそれに隣接するシンセンを中心とした局地経済圏は、労働賃金格差(香港4000香港ドル、シンセン850香港ドル/月)を背景に、香港企業のシンセンでの委託加工(受入側が土地、工場施設、労働等を提供し、委託側が設備、技術、資金等を提供し、かつ委託側が生産物のデザイン、規格などをすべて決め、生産物全量を受け取るというもの)を中心にその経済的相互依存を高めた。その後、シンセンから珠江デルタ地域、広東全省と経済政策自主権の付与地域が広がるとともに、香港を中心とした華南経済圏も地域的広がりを見せた。

 このように局地経済圏の先駆的存在として君臨してきた華南経済圏ではあるが、中国中央政府の長江流域開発重視へにシフトから、1997年7月の香港返還後の華南経済圏の行く末を危惧する声が高まっている。

(両岸経済圏)

1978年11期3中全会で採択された「改革開放政策」以降、中国特に福建省と台湾の経済交流は民の先走りを台湾当局が後追いで認めていくという形で進展した。ただし、中国側の提案である三通(通郵、通航、通商)は台湾当局の反対で実現しておらず、貿易については香港経由の間接貿易の形での拡大を採っている。台湾の対中投資については80年代後半以降伸びを見せている。特に多くの台湾人のもともとの出身地で言葉、風俗習慣を共有する福建省へは投資の全体の半分程度が集中している。

 中国側の経済重視への政策転換が、未解決の政治課題を残しつつも、両岸の経済交流を増大させた最大の要因であることは疑いの余地はない。逆にこうした経済交流が両岸を対立から対話の方向へと導く役割を果たしたとも言える。事実、台湾の投資はその集中している福建省経済にとっては欠かせないものとなっているし、台湾の対中輸入制限の結果生じる年間250億米ドルにも上る対中貿易黒字はその対日赤字を補って余りあるものとなっている。政治的不安定さを越えた経済的相互依存度は確実に上昇している。現在、両岸の経済交流の拡大の相互開発作用の一つとして、台湾が香港返還以降の香港の機能代替を狙って高雄に貿易センターの構想を計画している。

 今後、この成功のために、台湾当局は「三通」解禁という政策転換に迫られるだろう(既にその兆しはみせている)。「三通」解禁に、一層地理的取引費用の逓減が図られ、特に台湾・福建省といった地域的レベルの経済は急速に一体化が進むであろう。地域的な経済的繋がりは地域の安定を一層保障するであろうが、ただし中国国内の中央・地方の関係如何によっては、この地域的安定イコール中台の関係の安定とは必ずしも言えない事態も想定される。

(バーツ経済圏)

 東西冷戦の終結及び中ソ和解の兆しの見え始めた1988年8月、プレム首相から引き継いだタイのチャチャイ首相は「インドシアを戦場から市場へ」というスローガンを掲げ、越境貿易で自然発生的にできた「バーツ経済圏」を本格的な局的経済圏に発展させる政策を採った。クーデター後のアナン政権もこの政策を引き継いだ。バーツ経済圏はタイを中心に隣国のカンボジア、ラオス、ミャンマー、そしてヴェトナムを含むとされている。最近はこれにメコン側流域開発計画が重なり中国の雲南省をも含む勢いである。

  バーツ経済圏の成立は当初、タイと隣国との貿易取引を中心とする市場指向的な特徴を示していたが、1991年のカンボジア和平協定調印以降の和平の到来はインドシナ地域へのタイからの投資を活発化させた。ただし、まだ、タイとその周辺諸国の労働賃金格差がタイからの海外直接投資を進めるほどのインセンティヴとなっておらず、当面はこれまでの市場志向の経済的繋がりを引き続き強めていく動きが続きそうだ。
 しかし、ヴェトナムの石油やメコン川の水資源(ラオスの水力発電、カンボジアの淡水魚等)、各国特徴のある観光資源といった生産要素の補完性は存在しており、こうした生産要素を志向する資源加工型の産業や観光業といった分野の投資は増加している。バンコクをハブとする各都市への航空路も整備されつつあり、また、陸路についてもメコン川を渡る橋が整備されたり、雲南とシンガポールを繋ぐ鉄道の計画があるなど、地域内の移動費も改善されつつある。また、タイ族、華人・華僑、小乗仏教などを媒体とする民族的文化的な繋がりも緊密なものがある。 また、バーツ経済圏は政治不安定なミャンマーをその内に抱えており、経済優先の緊密化が地域の安定、ひいてはミャンマー国内における政治の安定化に繋がることも期待されている。

(5)まとめ(Conclusion)

 以上の分析を各項目ごとに3段階に評価(優、良、劣)し一覧表にまとめると以下のとおりとなる。

           (1)    (2)   (3)    (4)    (5)   (6)    (7)    (8)    (9)シジョリーGT   優  優  優  良  優  優  優  良  良 北方GT      劣  劣  良  劣  良  優  優  優  良東部アセアンGA  劣  劣  良  劣  劣  優  優  優  優華南経済圏     優  優  優  優  優  優  優  優  優両岸経済圏     優  劣  優  優  劣  優  優  良  優バーツ経済圏    良  優  優  良  優  優  優  優  良(注)(1) 生産要素代替:Supplement of Factors of Production   (2) 地理的取引費用の逓減:Depressing Cost of Trade   (3) 民族・文化的繋がり:Cultural and Ethnic Relationship   (4) 市場拡大効果:Magnification of Market   (5) 相互開発作用:Effect of Mutual Development    (6) 地域の政治的安定:Regional Political Stability    (7) 辺境地開発:Development of Frontiers    (8) 政治の経済化:Political Change to Point to Economic   (10) 日本を巡る局地経済圏の行方        The future of Sub-Regional Economic Zones around Japan        取り纏め中        (日本における局地経済圏構想)        (成功への道)   (11)結語~アジア経済発展の今後の展望及び日本の対応     Conclusion~The prospect of Asia economic development and the correspondence     of Japan      作成中

 ~以上~

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高橋幸也の論考

Thesis

Koya Takahashi

高橋幸也

第15期

高橋 幸也

たかはし・こうや

Executive Vice President, Panasonic Energy of North America

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企業経営、管理会計、ファイナンス、国際経済

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