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1996年1月

地域雑誌『風土』創刊
黒田達也/卒塾生

 
 昨年の2月頃から創刊の準備をしてきた地域雑誌『風土』が、この1月28日やっと1996年春号として創刊された。創刊号では、深谷および周辺地域に住む18名の方々が、普段の生活の中で見聞きし、感じたことを趣くままに活字にしており、A6版約70ページの小冊子に仕上がっている。私は、編集代表とは名ばかりであったが、創刊号の全体構成と巻頭特集のインタビュー、手書き原稿のワープロ化(これは実際は妻がやったので、私は校正しただけ)をお手伝いした。発行費用は、発行元の博字堂印刷が一旦全額を負担し、会員(執筆希望者は通信費2千円で入会できる『風土の会』に入会する)が友人等に贈りたい冊数だけを1冊5百円で購入するシステムだ。さらに、数十部は市内の書店にも並べられ、市立図書館にも寄贈された。今後は季刊誌として3か月に1冊の割合で発行していく予定である。

 今年、生誕100周年を迎える故森信三先生は、「人間は、何人も自伝を書くべきである。二度とないこの世の”生”を恵まれた以上、自分がたどった歩みを子孫に書き残す義務がある」と言い、著名な政治家、経済人や芸術家よりも、地に埋もれた人達の人生の歩みの中にこそ、いぶし銀のような光を見出すものだと力説されている(『風土の会』会員でもある、社団法人実践の家常務理事寺田清一氏の編著書『森信三語録 心魂にひびく言葉』より)。そして、自伝とまではいかないものの、身近に生活する者がどんなことを感じ、考え、生きているのか、お互い紙面の上にさらけ出し、その中に”いぶし銀の光”を見い出しながら高め合っていきましょうというのが、この『風土』のコンセプトなのである。

 さて、巻頭の特集では、「風土人探訪記」と題し、毎号若き”風土人”(郷土をこよなく愛しつつ、同時に日本や世界の動きに耳をそばだてている人。歴史や伝統、文化を大切にしつつ、進取の精神にあふれる人。頑固さを持ちながら、柔軟さを兼ね備える人。本文より。)を発掘し、インタビューしていくことになった。創刊号では、某国立大学経済学科を卒業後、米国の大学院入学、大手リゾート会社入社を蹴って、築地たむら系列の箱根のホテルで皿洗いから6年間修業した、地元老舗旅館の六代目石川克正氏に登場していただいた。包丁1本にぎったことのなかった石川氏が、調理師学校や他の料理屋から派遣された同期を抜いて一番で卒業できたのは、並々ならぬ努力があったに違いない。”かつて政経塾にあったもの”を石川氏の中に感ずることができ、実は私自身が大変勉強になったのである。

 私は、リクルート事件を通じて、政官業の癒着と中央集権的社会構造に日本の将来への危機感をいだき、政治を志した。また、「百花繚乱の国づくり」「地域から日本を変える”ちにか”」という運動に共鳴して政経塾に入塾した。今、その”ちにか”運動の中で大きな役割を担っていた『地域から日本を変える』という月刊誌が廃刊になろうとしているが、残念ながらそれを惜しむ声は少ないようだ。いかに”いぶし銀の光”を見出し続けることが難しいことか。決して著明人や海外のもの珍しい話題で読者の関心を引くことなく、この『風土』を編集発行し、自分流の”ちにか”運動を続けて行きたいと思う。

1996年1月 執筆
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