論考

Thesis

政党はどこへ行く?

今回は、今後の日本の政党の行く末について考えます。
 55年以来、ほぼ一貫して政権を握っている自由民主党ですが、「食える」こと、世界に「追い付き、追い越す」ことを目標に、中央集権かつ国家統制的な政策運営をしてきました。官僚が時代の先を読んで、人、モノ、カネを鉱山、鉄鋼、電気、自動車へと集中投下し、富を地方や労働者に分配することでその目的をほぼ達成しました。しかし、73年のオイルショック以降、日本は低成長時代に入り、自民党は予算の分配権と巨大な官僚組織を維持するために、赤字国債を出し続け、いつしか国民全体が「食える」ことより、自分たちの組織が「食える」ことを優先するようになりました。そして、低金利政策に支えられたバブル経済の下、政府も企業も自分の実力を勘違いし、無駄な公共投資に加え、過剰な不動産や株の投機を繰り返しました。

 90年から始まったバブルの崩壊により、株式市場の低迷、金融機関の不良債権問題等の抜本的解決がなされぬまま、日本経済は底なしの不景気に突入しております。橋本行政改革は省庁再編に留まり、財政改革もすでに軌道修正を余儀なくされています。結局、政・官・業の癒着による利権構造(自分たちの組織を「食わせる」ための安定した構造)を自ら切り崩すことはできないことが明らかになったわけです。

 そこで、新「民主党」は、中央集権に対しては地方主権を、国家統制的政策(過剰な官僚規制)には市場重視の政策(規制緩和)を掲げ、民間と地方、市民(NPO)が自由かつ主体的に活動できる社会の実現を目指すことでしょう。小沢氏の自由党は、さらに急進的な市場重視の政策を掲げつつ、民間、地方、市民などの個性よりも国家的秩序を重んずる考えでしょう。旧公明勢力は、弱者救済と国際平和を掲げ、内外での競争的社会への移行の中で独自の役割を果たすでしょう。共産党は、弱者救済を掲げる一方、党組織内が統制的である限り、勢力拡大には限界があるでしょう。

 結局、自民党に共通な目的は利権維持にあるので、政権を手放せば、文字通りに、自由党派(国家的秩序を重んじ、統制的、梶山、亀井等)と民主党派(民主的ネットワークを重んじ、連立調和的、加藤、山崎等)に分裂し、そこで初めて日本における2大政党制の素地が完成するでしょう。その日が早く来るように、全力を尽くして行こうと思います。

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黒田達也の論考

Thesis

Tatsuya Kuroda

黒田達也

第14期

黒田 達也

くろだ・たつや

事業創造大学院大学副学長・教授

Mission

人工知能(AI)、地方創生、リベラルナショナリズム

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