論考

Thesis

米国の行政改革から学べること

ある政党の全国研修会でマッキンゼー日本支社のプリンシパル上山信一氏の興味深い講演(テーマ「米国の行政改革に学べること」)を聞いたので報告する。
マッキンゼー社といえば大胆な企業コンサルティングで有名だが、その企業改革の手法を行政改革に応用し、特に米国の行政改革事例を参考にして、日本における具体的な行政改革の道筋を示していただいた。
 始めに、企業改革には・リーダー・タイミング・手法の3つが揃わないと成功しないのだが、一方、行政改革には・成果が計りにくい・有権者の問題意識を喚起しにくいなどの難しさがあることを指摘した。

 次に橋本首相の行政改革が機構改革に終始していると批判する一方、米国クリントン政権の行革は行政の運営方法の改革であると主張した。
まず、行政職員に国民を顧客と考えてサービスを提供することを求め、その結果を具体的に評価するシステムを確立したという。
また、予算の増額や職員の増員要求に対しては、有権者に分かりやすく説明する責任がある(GPRA法)とし、さらに議会からGAO(民主党の提案している行政監視院)が、ホワイトハウスからは予算局(日本では大蔵省主計局にあたる)が2重にチェックしていると指摘した。

 そもそもこうした連邦政府の行革の先駆けになったのは、州や市などの先駆的な自治体であったという。
オレゴン州は、ゴールド=シュミット知事のもと、『輝くオレゴン』という長期計画を立て、極めて細かい項目まで行政評価ができるようなシステムを確立した。
その結果、シアトルはアイビーリーグの学生アンケートで住みたい都市ナンバー1に輝いた。
また、カリフォルニア州サニーべール市では、2週間ごとに予算の執行をチェックし、無駄なコストを抑えるよう努力させ、そこで節約した予算の一部は、各部門の自由裁量で使えるようにした。
このシステムにより、同市は水道料金を4割下げることに成功したのである。
こうした米国の行革の成功事例からみると、

  • トップダウンで高い目標を設定する、
  • 徹底した情報公開により政策を評価する、
  • 外部の経営がわかる人をプロとして投入すること

が重要であるという。

 これを日本に適用すれば、行政の運営方法の改革が可能となる。
まず、2、3の自治体を改革し、目に見える成果を早く示し、ノウハウと人材を育成する。
また、国レベルでも、民間版行政評価委員会などから2、3の重点分野(公共事業、教育、福祉など)で「行政評価」を試みる。
そこで、民主党の主張するような日本版GAOと内閣直轄の予算局を創設し、予算に斬り込んでいく。
その際、組織(省庁や局)に予算がついている現状を改め、組織横断型のテーマ別予算を組み、これに具体的な数字による「行政評価」を行なうことが大切であると提案した。

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黒田達也の論考

Thesis

Tatsuya Kuroda

黒田達也

第14期

黒田 達也

くろだ・たつや

事業創造大学院大学副学長・教授

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人工知能(AI)、地方創生、リベラルナショナリズム

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