Thesis
お盆明けの8月17日、埼玉県深谷市の市民文化会館大ホールにて、2年前に一般市民が集まり結成したまちづくり団体、深谷未来倶楽部(会長 橋本稔氏)が主催して、映画『人間の翼』上映会を行なった。
映画の上映会を私が発案したのは6月に入ってからで、ターゲットにしていた例年10月に行なわれる深谷市の戦没者追悼式が急遽8月の終戦記念日に繰り上り、準備期間が2か月を切る状態での上映準備であった。慌てて前売り券を用意したものの、当てにしていた回覧板告知が間に合わず、記者会見を開いても近隣市町村の戦争関連事業の記事に埋没してしまう有り様だった。それでも(社)深谷青年会議所や若者の政治参加を呼びかける20クラブの仲間達がポスター200枚を市内に掲示、各地のイベントに出かけてはチラシ3000枚を配布してくれた。さらに、8月13日にはご多忙の中、地球市民の会代表で「人間の翼」九州上映委員会会長の古賀武夫氏に来深していただき、「天国の石丸進一は私をしてこの映画を創らせ、今を生きる我々へ熱いメッセージを送り続けている」とのお話を歓迎会にていただく。そこでスタッフ一同大いに感激し、士気が高まった。その後、テレビや新聞で「人間の翼」の特集が組まれるという幸運が重なり、問合せが急増、前売り券も順調に売れ出した。
当日は晴天にも恵まれ、会場の深谷市民文化会館を市長を始め約千人の市民が埋め尽くした。私は、一人でも多くのスタッフに『人間の翼』を見てもらいたかったので、あいさつの後一人で受付に残り、スピーカーから流れる石丸進一の声を聞いていた。それでも、6月末、長崎諌早湾の視察の帰りに佐賀の古賀同人宅に泊めていただき、映画を見せていただいた時の感動が込み上げてきた。仲間に聞くと、上映中は多くの方々がハンカチを手に鑑賞され、あちこちですすり泣く声が聞こえていたという。それを裏打ちするように、上映後のアンケートには「とても感動した」という文字が幾重にも連なっていた。会場の感動の熱気が伝わったのか、数日後の埼玉新聞には写真入り3段組みの上映会の記事が掲載されたのであった。
私はこの上映会が、来場者に石丸進一を始め当時の多くの若者が思う通りに生きたくても生きれなかったこと、その無念さを噛みしめていただき、さらに何不自由なく生きられる今の時代に感謝しつつ、もう一度自分の人生を見つめ直し、光り輝いて生きていって欲しい、その契機になってくれたものと信じている。
Thesis
Tatsuya Kuroda
第14期
くろだ・たつや
事業創造大学院大学副学長・教授
Mission
人工知能(AI)、地方創生、リベラルナショナリズム