論考

Thesis

イベント成功10か条

10月に行なったイベント「戦争と深谷」展が成功裏に終ったことは10月の月例報告で報告したが、本間塾員からイベント成功の要諦をまとめ、同志に伝えよとのアドバイスをいただいたので、たった1度のイベント成功でおこがましいのだが、感じたことをまとめてみる。

1)大義名分 

まず大切なのは、イベント開催の大義名分がしっかりとしていることだ。これがスタッフ全員に周知徹底されていることが、イベントの中身の充実、ひいては観客動員力にまで響いてくる。「戦争と深谷」展では、今年が戦後50年目にあたること、いままで深谷では同趣旨の展示会がなかったこと、周辺市町村では活発に同様のイベントがおこなわれていたこと、そして今開催しなければ戦争体験者の生の声を伝え、当時の事実を解明し、資料を収集することが困難になることなどがあげられる。

2)スタッフは5~8人程度 

船頭多くて・・・では会議でのエネルギーばかり消耗し、イベント準備は進まない。今回も当初「深谷未来倶楽部」(会員約80名)全体で話し合っていたのだが、途中から「実行委員会」(9名、実質6名)を組織して全体会で進捗状況を報告するように改めた。

3)人選はチンギスハン流に、必要な人材をしぼって徹底的に口説く 

多弁で動かない人より、訥弁でも着実にこなす人を引き入れる。人選段階でその人の得意不得意を見極め、仕事の分担をイメージしておく。適任の人材がいたら、徹底的に口説く。今回のスタッフも、郷土史家(資料収集)、商業デザイン事務所経営者(展示デザイン)、市会議員(対行政交渉)、郵便収集家(軍事郵便、展示デザイン)、青年会議所理事(広報と資金収集)と多種多才であった。

4)会議はテキパキとアットホームに 

だらだらした会議ほど苦痛なものはない。毎回、議題となる項目を明示し、スタッフに配布することが必要。そうした隠れた部分に熱を入れることがスタッフからの信頼を醸成するもととなる。一方で、時間借りの会議室では時間が気になり、落ち着いた議論は難しい。「戦争と深谷」展の会議は自宅の和室で行ない、和気あいあいと打ち合せを重ねた。

5)信用を得るために行政の後援を 

任意団体が必要な機材、資料などを借りたり、公共施設を借りたりするのはなかなか難しい。行政の後援があると、こうしたことがスムースに進む。今回も深谷市と市教育委員会から後援をいただき、市民から資料の借用を受けるときに大いに助かった。

6)資金集め、情報収集、広報にと既存組織をうまく活用する 

イベントの趣旨に沿う既存団体の活用は、いくらボランティアによるイベントとはいえ不可欠である。今回は、資金(募金)と広報(ポスター貼り、ビラ配り)に青年会議所、情報や資料収集に遺族会、郷土文化保存会などの協力をいただいた。

7)新聞等の広報メディアを活用する 

正規のプレス発表だけでなく、日頃から地域担当記者と親しくしておくと何かとこちら側に配慮した記事を書いてもらえる。市役所の広報課ともパイプを作っておこう。今回も市の広報で2回、テレビ東京のまちおこし番組にも取り上げてもらった。

8)イベントに協力してくれる印刷会社を捜す 

ポスター、ビラ、会場パンフなど、印刷にかかるコストは大きい。今回もある印刷会社の経営者に趣旨に賛同して頂き、半額程度で印刷をお願いすることができた。

9)あくまで楽しく 

今回のイベントの準備期間は約4カ月であったが、予定通りに準備が進まず、いらだつこともあった。また、スタッフも個性派ぞろいであったので、自分の主張が受け入れられず面白くないと思った方もいたようだ。それでも、ある方が「楽しくやろうよ」と言ってくれたお蔭で、皆の肩の力も抜け、いい展示会ができたのだと思う。ボランティアは仕事ではない。楽しくできなければうまくいかない。

10)結局は熱意の強さ 

塾主が「熱意は磁石」とおっしゃったように、熱意の強さによって人も、ものも、金も、情報も集まってくる。いろんな壁にもめげずに、熱意をもってことに当たれば、おのずから海路が開けてくる。このことを実感できたことが今回のイベントを企画して得た私の最大の収穫であった。

 以上、10か条としてまとめてみると、ほぼ同様のことが選挙活動にも言えるのではないかと思う。従って、もし政治家を志す方が地域での足掛りを持てずに困っておられるのなら、「大義名分」のある「熱意」を込められるイベントを主宰してみるのもよいのではないだろうか。

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黒田達也の論考

Thesis

Tatsuya Kuroda

黒田達也

第14期

黒田 達也

くろだ・たつや

事業創造大学院大学副学長・教授

Mission

人工知能(AI)、地方創生、リベラルナショナリズム

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