Thesis
現在、あらゆるヒエラルキー型組織が息詰まり、ネットワーク型組織へと転換していく過渡期にあると考えられるが、ひと足先にコンピュータの世界では、ネットワーク重視の利用形態が既に普及している。80年代に開発競争が進んだスーパーコンピュータにいわゆる端末がぶらさがるという形態から、各端末の処理能力の向上により、LANという形態の利用が一般的になっている。このLANが、企業を超え、コンピュータの機種を超え、各種のオンラインサービスを超え、さらには国境を超え、個人にまで広がったものが、インターネットといってもよい。かつて人類は農耕技術をもって集団や国家の形成を計り、蒸気機関を手にして企業や資本の成長を計ったが、このLANからインターネットへの発展は同様の社会構造の変革をもたらすものと予測する。そして実はインターネットの思想の中に、将来のネットワーク社会のありかたの原形が込められているのでそれを簡単に列挙する。
これらのインターネットの特徴が来るべき社会にどう反映するのかを次に簡単に列挙する。
昨年、生誕100周年を迎える故森信三先生は、「自主独立にして、しかも出入り自在、円心あって円周がなく、円の中心者たちが互いに手を取り合う”開かれたコンミューン”でなければならない」という言葉を残している。
また今年、生誕100年を迎える宮本賢治は、岩手花巻に世界を見、「イーハトヴは一つの地名である。強いてその地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕してゐた、野原や、少女アリスガ辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは著者の心象中に、この様な情景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。
そこでは、あらゆる事が可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従へて北に旅する事もあれば、赤い花杯の下を行く蟻と語るこもできる。罪や、かなしみでさへそこでは聖くきれいにかがやいてゐる。」(注文の多い料理店広告文より)という言葉を残している。
こうした先達の思想とインターネットがもたらす来るべき社会が、私にはオーバーラップして見える。勿論、『風土』創刊号の冒頭インタビューの中であったように、情報化社会が進めば進むほど、人間の心もそれに連れて洗練されていかなければいけない。
私も、入塾以来続いている茶道や、今年より始めた禅を通じ、心に磨きをかけることも忘れずに、日本の情報社会化を推進していきたいと思う。
Thesis
Tatsuya Kuroda
第14期
くろだ・たつや
事業創造大学院大学副学長・教授
Mission
人工知能(AI)、地方創生、リベラルナショナリズム