Thesis
9月に発生した米国における同時多発テロ事件は経済や治安など世界に様々な点で不安を巻き起こした。アメリカによるアフガンへの攻撃でこのテロ事件は収束しつつあるが、テロが報復の連続であった歴史を考えれば将来的に収束の仕方如何によっては新たなテロが呼び起こされる可能性もある。今回のテロでは世界の様々な仕組みの脆さを露呈させた。一時的であったにせよ金融は麻痺し大幅に株安が起こり、アメリカにおいては空輸が数日間麻痺した。今回のテロ事件では数日間の混乱で事なきを得たがこのような問題が長期化した場合、日本は国民の生活を守る上で重大な懸念事項を抱えていると思われる。それは食料であるが、現在日本はカロリーベースで60%を海外からの輸入に頼っている。そのようなことから世界の物流システムが混乱した場合、一時的な食料不安が日本において発生することも想定されよう。物流システムの混乱や一時的な世界の食料貿易停滞の要因は戦争の発生や原子炉などの事故による核汚染、世界的な異常気象、狂牛病などの疫病が大規模に発生した場合など多くのものが想定される。そのような中で一時的に国を食料不安から救いえるのは食糧備蓄制度である。今回は日本の食糧備蓄制度について報告する。
まず、日本の主食である米の備蓄制度であるが農業白書によれば農林水産省の方針は「150万トンを基本とし、一定の幅を持って運用」となっている。因みに平成10年の我が国の米の需要量を見てみると約1000万トンであり、単純に計算すれば我が国の米の備蓄は2か月分にも満たない。食料用小麦の備蓄については方針が2.6か月分。飼料用穀物も約1か月分しかない。食品用大豆に至っては5万トンと年間需要量の20日分である。
一方で他の先進国の備蓄制度を見てみよう。ヨーロッパでは2度にわたる大戦の経験から防衛政策の一環として食糧備蓄等の安全保障政策を行ってきた。スイスでは穀物、砂糖、食物油、コーヒー、ココア、飼料を6か月分備蓄している。ノルウエーでは小麦6か月分、飼料3か月分、砂糖、イースト、マーガリン1ヶ月分である。フィンランドに至っては食料用麦1年分、飼料用麦6か月分である。
緊急時には米麦等の緊急増産、他作物から熱量効率の高い作物への生産転換等の方針が我が国にはある。しかし、食糧備蓄が2ヶ月分に満たないことを考えれば緊急増産等は事態が起きてからでは間に合わない。先程見たように日本の備蓄水準は世界的には少ない水準にある。食料自給率が低い日本が自給率の高い国より備蓄が少ないのはおかしなことだとも言えよう。これからも世界を不安におとしめる状況は多く想定される。そのような中で国民の生活を守れない政府は存在意義が疑われても仕方がない。このような中で備蓄の増加、少なくとも緊急増産の収穫が見込める半年間を食いつなぐため備蓄は必要だといえよう。
Thesis
Yoshiki Hirayama
第20期
ひらやま・よしき
衆議院議員鬼木誠 秘書
Mission
選挙と地方分権から民主政治を考える 食料問題 首相公選制