論考

Thesis

食糧安全保障と自由貿易

今年の研究テーマの一つに自由貿易と食糧安全保障を据えた。今月は何故、このテーマなのかという研究の目標を報告したい。

自由貿易と日本農業

 近年、新たな経済発展の仕組みとして地域での自由貿易が主流になってきている。なぜそうであるかは先月の月例で報告したとおりであるが、4月にも2005年までにアメリカがFTTAの交渉を終了させると発表するなどその動きは急速に発展し、日本のみが取り残されそうな勢いである。日本もシンガポールとの交渉は開始しているが、まだ最初の試みであり日本の市場は閉ざされたままであるといえよう。

 日本での自由貿易の構想が進まない一つの理由に農産物の問題がある。日本が自由貿易を始めることを望まれている相手国の多くは東アジア、東南アジアなど農業国が多く、その国と自由貿易を行うことは農産物がそれらの国から大量に輸入され、競争力のない日本の農業は壊滅してしまうという懸念からである。現にネギ、シイタケ、い草などの農産物が中国から大量流入したことにより、日本のそれらを生産する農家は打撃を受け、4月にセーフガードが発動されたのは記憶に新しい。セーフガードの発動後3年間は対象国は対抗措置はとれないが(中国はWTOに加盟してないのでこの限りではない)、裏を返せば3年以内に日本の農家は競争力を回復せねばならない。しかし、現状では難しく、日本の農業も大きな岐路に立たされているといえよう。以上のように自由貿易を考えるとき、農業を保護することのみに捕らわれると自由貿易に乗り遅れた日本の他の産業は競争力を失い、先月の月例で報告したように国際舞台での交渉力を失うなど日本の国益を損ないかねず、また、自由貿易を進めることは日本の農業を壊滅させ、日本の食糧安全保障体制を不安に陥れかねない。そこにこの問題の難点があるといえ、日本の食糧を自由貿易の中で如何に確保していかねばならないかという重要なテーマがあるといえよう。

日本の食糧政策と世界の食糧動向

 ここで日本と世界の食糧事情について見てみたい。平成11年度版の「食料、農業、農村白書」によれば日本の食料自給率はカロリーベースで40%である。昭和40年には73%、60年には53%であったものが急速に低下した結果である。このような現状に鑑み、政府は平成22年までに自給率の向上を目指し、数値目標を45%と定めている。仮に実現したとしても半分以上は外国からの輸入に頼らなければならず、世界の食糧事情に日本の食糧安保は左右されることに変わりはないといえる。そこで世界の食糧事情に目を転ずれば短期的には不安定性の増大が見込まれるとともに、中長期的には逼迫すると考えられる。既にそのような兆候は現れており、95/96年度にはアメリカの天候不順による不作から穀物の在庫が逼迫、また、99/2000年度にもアメリカの作付面積の減少や干ばつ等から穀物生産が消費を下回る事態を招いていた。
 このように現在でも天候の影響により世界の食糧事情は悪化する危険性を多くはらんでいるが。長期的に問題なのは今の発展途上国の食料動向である。中国やインドなどの発展途上国は人口の増大が見込まれるとともに、所得の増大に伴い畜産物消費の拡大による飼料用穀物の増大が世界の食物需要量を大幅に増加させかねない。中国系経済紙が1996年に発表した報道によれば、2010年に中国で約1億3900万トンの食料が不足するという予測があるが、この不足量は世界の1年間の穀物総輸出量の約半分に相当する。そのような中、最近の日本の食料の輸入相手国の内訳を見てみると1980年の輸入額シェアは北米からが46.2%、アジアからは34.3%であったが、1994年にはアジアが42.5%、北米が36.2%と割合が逆転しており、将来、食料不安を抱えるアジアに日本の食料依存はシフトしてきていると言える。

食糧問題の解決のためには

 食糧問題の解決のためには短期的には自国の食料を自国で確保すべく、食料自給率の向上は目指すべきであろう。しかし、食料自給率が40%まで低下した今、世界の食料動向の不安を考慮すればそれは根本的な解決にならない。今後、高騰する可能性のある世界に流通する食糧を購入する外貨の獲得も重要であるが、すぐ近くに存在する将来、世界の食料体制を不安に陥れるであろうアジアの食料不安の解消の努力を日本政府はしていくことも望まれる。方策としては農業技術の移転を行いアジアの生産性向上を図るとともに、未だ低い率にある中国の灌漑設備などのインフラをODA等で整備するなどが考えられる。
 そうして日本だけではなく、アジアの視点でアジア食糧安保体制を築く努力をすべきではなかろうか。今後このような観点から日本の食料外交を提言していきたい。この問題を解決することにより、日本、アジアの食料を将来的にも確保するとともに、日本の農業を拓かれたものにし、アジアの自由貿易体制の発展へと繋がっていくものと考える。

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平山喜基の論考

Thesis

Yoshiki Hirayama

平山喜基

第20期

平山 喜基

ひらやま・よしき

衆議院議員鬼木誠 秘書

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選挙と地方分権から民主政治を考える 食料問題 首相公選制

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