論考

Thesis

ああ、日本

1月29日深夜、マスコミや国民を巻き込んだ大騒動の末に田中真紀子外務大臣が更迭された。鈴木宗夫衆議院議員とのNPO問題をめぐる疑惑が事の発端であるが、この問題はマスコミで大きく連日取り上げられ、国会もこの問題で空転するなどさながら国家の一大事が起こったかのような大騒ぎであった。それを受けて就任以来、高支持率を維持しつづけた小泉首相は支持率が急落し、小泉人気にも翳りが見え始めた。就任以来、小泉人気はマスコミにも多く取り上げられるなど空前の政治ブームを巻き起こした。しかし、ここに来て私には政治が本来行くべき方向から、違う方向へと進んでいるように思えてならない。何故ならば、小泉政権は長引く日本の不況からの経済の立て直しを就任のメインテーマにして来たが、その後景気は回復するどころかどんどん悪化しておりとどまるところを知らない状態に陥っているからだ。外務省騒動など「ワイドショー政治」の影で日本の株価は下がり続け、9月の同時多発テロの影響はあったとは言え、約1万4千円であった株価は9千5百円を一時割り込むなど、3割も下落し、今や9千円台を維持できるかどうかが今後の焦点になりつつある。その間の国民の資産の損失は多大なもので、ある調査によれば5月には403兆円の時価総額が2月5日には262兆円に減ったと推計されており、実に140兆円もの国民の資産が短い間に失われているのである。さらに、銀行においても不良債権は増え続け、スタンダード&プアーズの格付けでは先日、東京三菱銀行の格下げが発表され、「Aマイナス」から「BBBプラス」となり、日本の銀行からAランクの銀行が姿を消すことになった。「痛みのある構造改革なくして景気回復なし」の合言葉で発足した政権で未だその痛みがはっきりしない中、これ以上の痛みを国民に強いることは不可能な状況に来ているのではないかと言わざるを得ない。

 株、国債、円の価値が同時に下がる「日本売り」の状況の中、先日G7が行われたが「日本は列車の最後尾にいてはならない」と指摘され、日本が世界経済の足を引っ張らないように釘をさされるなど、日本の経済に対する外国の信用もかなり失われている。数年前、自民党の幹部が「桜の花の咲く頃には・・・」と景気回復を示唆するような言葉があったのが思い出されるが、ここ数年は毎年、春前になると日本経済危機説が囁かれており、今年の桜の花の咲く頃には経済崩壊が起こるのは避けて欲しいと切に願うところであり、これは世界の人の願いでもあるだろう。

 そのような中、財務省からショッキングな試算が発表された。それによると、今後、名目経済成長率を年0.5%、消費者物価指数の伸びを年0%と仮定した場合、今年度末で400兆円弱の国債発行残高が、2015年度末に836兆円に膨らむと予想した。現在の国債・地方債をあわせた残高は、700兆円であり、この700兆円が、2015年には1,100兆円を越えることになる。そうなれば日本国民はGDPの2倍の借金を抱え込むことになり、これを避けるための改革は急務である。

 だれが嘘をついたかと犯人探しをしている間にも、私達の資産は目減りし、負債はとどまることなく増えている。政府も政治家も国民も日本の]一番、何が問題かを考え直し、真摯に取り組まなければ取り返しのつかないことになるだろう。

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平山喜基の論考

Thesis

Yoshiki Hirayama

平山喜基

第20期

平山 喜基

ひらやま・よしき

衆議院議員鬼木誠 秘書

Mission

選挙と地方分権から民主政治を考える 食料問題 首相公選制

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