論考

Thesis

選挙に思う(アメリカ篇)

11月7日に21世紀の最初のアメリカのリーダーを決める大統領選挙が、下院、上院、地方議会選挙などと、同時に行われた。大統領選挙は史上稀に見る激戦と言われたこれまでの世論調査を反映し、一時は僅差でブッシュが勝ったと報道されたものの集計の不備のため、再集計が行われ未だ勝者は決まっていない。いずれにしてもブッシュが勝った場合は全体の得票では負けたままの獲得選挙人での勝利となり、このような事態は112年ぶりのことであるらしい。選挙後には今後の動きについて様々な情報が飛び交い、日を追うごとに益々、混迷を深めて行っているという具合である。これまで1年間以上かけて行われてきた大統領選挙であるが戦いはまだまだ熱く続きそうだ。今月は今回の選挙について思うところを述べてみたいと思う。

 アメリカの大統領選挙は約1年間かけて行われる。その間、メディアは連日、これに関する報道を行い、新しい大統領になるであろう候補者達の情報量は凄まじく多い。それは候補者の生い立ちから、人格、これまでの実績から、政策の違いなど細かく報道され、どの候補者がより大統領にふさわしいか厳しい目で細部にわたって比較されている。そのような中で候補者は自分の政策を国民に伝えるため、多大な努力を払う。今回の最大の争点は今後10年で3兆ドルに及ぶ財政黒字をどのように使うかであった。これに対してブッシュは減税を主張し、ゴアは将来の社会保障などのために貯金を主張したものであるがここでは今後10年の計画をそれぞれの候補が綿密な調査、研究を行い訴える。そして相手候補に間違いが認められるときは厳しい追求が行われ、それは高齢者医療制度を例に取ればブッシュのメディケアのプランをゴアが「最初の4、5年は、高齢者の95%が助成を受けない計画だ。」と批判するなど、その政策が行われた場合、どのような結果が将来もたらされるか有権者達に示される。今後の国の行く末を長い期間に渡って有権者に示すことが大統領の資格につながっていたと言えよう。特に、3回にわたる大統領候補のテレビ討論会は息をのむ攻防であった。これまで接戦と言われた大統領選の結果はこの討論会での勝敗が影響したと言われただけに今回の討論会は大きく注目された。最初は司会の1問1答、2回目は座談形式の討論、3回目は会場の有権者の質問に答える形式で行われたが、ここでは緊迫した雰囲気の中、有権者は候補者の発する言葉を一言も聞き漏らさないように耳を傾け、両候補の違いを見極めると共にどちらがふさわしいかを見極める。そこでは、内政、外交、中絶など広い範囲にわたって考え方を問われる。勝敗は政策だけに限らず、討論の中での語り方など総合力で判断され、1回目の討論ではゴアがブッシュを議論では攻め立てたものの、ブッシュの発言をたびたびさえぎったり息をついたりして相手をばかにする態度を見せたことが不評を買い、ブッシュに世論調査でリードを許すようなときもみられるなど、そのリーダーを選ぶときの厳しい基準は熾烈なものであり、印象的であった。

 今、日本では森政権が支持率を失い、解散総選挙の可能性も囁かれ始め、新しい国のリーダーを選び直さなければならない事態が近づきつつある。これまで日本のリーダーは議会制民主主義のもとで与党内の派閥的な力学の中から選ばれてきており、それが国民とリーダーとの乖離を引き起こしている。ポスト森が誰かと言う話も日本で出始めているが、その候補者が何を目指しているのかは未だ明確ではない。一方、アメリカでは国民を巻き込んで、激しい長期的なビジョンの戦いのもとリーダーが選ばれる。今回の選挙は未だ、結果が決まらず、双方決め手を欠いていたとも表現されるが、有権者にとってはどちらが良いか決めかねるほどのレベルの高い戦いであったと言えよう。低迷する日本において今後の国の再建策をリーダーの候補者によって戦わせ、国民を交えた議論をしていく、アメリカのようなレベルの高い、リーダーを選ぶ過程が今後、必要ではなかろうか。

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平山喜基の論考

Thesis

Yoshiki Hirayama

平山喜基

第20期

平山 喜基

ひらやま・よしき

衆議院議員鬼木誠 秘書

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選挙と地方分権から民主政治を考える 食料問題 首相公選制

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