Thesis
地方自治にとって、開発事業など土地利用は非常に重要であり、市民生活を左右しかねない。現行の法体系では「都市計画法」「建築基準法」などで基準が定められているが、基準がいずれも画一的なため個性あるまちづくりを進めたい自治体にとっては一つの障壁となっている。大分県湯布院や神奈川県真鶴のように住民・行政の努力により積極的にまちづくりを行っている自治体も存在するが、京都市も昨年6月に「京都市土地利用の調整に係るまちづくりに関する条例」を制定しまちづくりの新たな局面を迎えている。
(2)市民への周知 事業者は、事業構想について周辺住民を対象とした説明会を開催しなければならない。事業者は説明会の状況を市長に報告するが、市民は意見書を市長に提出することができ、事業者はそれに回答しなければならない。
(3)市長の役割 市長は事業者に対して必要な指導・助言ができる。それでもまちづくりの方針に一致しないときは勧告、土地利用調整審査会への諮問(6人以下の学識経験者からなる委員会)、手続きの公表、ができる。
開発事業に一定の枠をはめたこと、構想段階での届出・住民説明会を義務付けたこと、は評価できよう。しかし意見書や指導・助言の拘束力はどこまで有効なのか担保されていないし、結局事業者が押し切ってしまうという場面も見られるだろう。
最も評価されるべきはまちづくりへの積極的な参加を市民の責務として規定したことである。市民によってまちは如何様にも変わる。事業者のまちづくりへの理解とともに、地域社会に対する市民の積極的取り組みと行政とのパートナーシップが重要である。次の段階はこのパートナーシップの制度化であろう。
参考文献「京都市土地利用の調整に係るまちづくり条例」
Thesis
Takeshi Ninoyu
第21期
にのゆ・たけし