Thesis
常々、この月例報告でも報告している通り、私は日本・世界の変革にとって日本文化(精神文化・生活文化)の必要性を心から痛感している。だが、「文化」という言葉は恐らく最も曖昧な日本語の一つであろう。そのため周りから見ると、なかなか私の活動の本質が見えにくいかも知れない。今月の報告は、実際の具体的な活動報告とすることで、より鮮明に私の活動内容を明らかにしたい。
世界が地球規模での環境問題への対策を必要としている。大きな目で見ると、人間のあらゆる活動はこの地球上で行われている訳であり、地球環境問題には最も力を入れて全人類が取り組まねばならない。
日本は古から数千年にわたって農耕社会を基礎とした文化を築いてきた。人間の屎尿・食べカスまで全て肥料として再利用する、いわば完全循環型社会を実現していたわけである。いわば現代よりも進んだシステムを生活文化の中で達成していた。
この肥溜めに存在する微生物を利用した独自の発酵システムを開発した福永微生物研究所とタイアップし、このプラントの100分の1の模型を作成、8月26日から南アフリカ・ヨハネスブルグで行われる地球環境サミットに出展することとなった。
日本の農耕社会の知恵を現代に蘇らせるこの試みが成功すれば、もはや焼却処理は必要なくなり炭酸ガスの排出は劇的に抑えられるであろう。そして、こうした社会を日本が世界に先駆けて実現できれば、環境先進国として世界中の人間が日本に学びに来るだろう。
ASEAN諸国を中心に、東南アジアは「世界の成長センター」と呼ばれ、日本が歩んだ同じ道を歩もうとしている。しかし、開発・発展の一方、深刻な環境汚染・公害が発生していることもまた事実である。またその一因が、日本の総合商社などに代表される大規模な木材・魚介類の買い付けによる廃棄物である。
こうした汚染を解決したいという現地の声は根強い。東南アジアへ進出している友人からのコネクションで我々にこうした案件が飛び込んできた。上記の環境プラントの実験検証は既に行われており、環境の劇的な改善が証明されている。後はこの案件を正式な政府ルートに載せていくことであろう。
以上の二つの事業はともに、日本の農耕社会が数千年にわたって培ってきた文化が現代に再び花開いたいい例である。
初めての2カ国共催となったFIFAワールドカップも大成功のうちに幕を閉じた。2002年はこの大イベントをはじめとして、「日韓国民交流年」として多くの交流事業が予定されている。J-ARTが行う韓国国立劇場との交換事業もそのメイン・イベントの一つである。
韓国国立劇場は文化観光部直轄の国立劇団である。6月21,22日にJ―ARTがオーガナイズした「ウル王 大阪公演」は大阪市の主催を取り付け、日本で最初の国立劇場公演となった。結果は2日とも1000人の満員で大成功を収めた。
10月15,16日には、J-ARTがソウルの国立劇場で公演を行う。こうした芸術交流は最も一般的には親しみやすい交流であろう。
大阪は古代から海に開かれた国際色豊かな文化を育んできた。現代にいたっては日本画一化の波に飲まれ独自色は衰えたものの、やはり気性・食文化など大阪独特なものは多い。
その大阪市は、最近「水都再生」「文化集客都市」などスローガンを打ち出している。その一例が南港にある倉庫群を利用した「アーティスト・イン・レジデンス」である。J-ARTの表会長がその座長となって推進しており、その構想は「現代版出島」にまで膨れ上がる壮大なものとなりそうである。
運営手法も、恐らく民間を入れたPFI方式も可能であり(まだ未定である)、今まで世界に無かった文化的試みになることは間違いない。
松下政経塾の設立趣意書には、「天地自然の理とは何か、人間とは何か、日本の伝統精神とは何かを議論すること」とはっきり書かれている。人間とは、いくら資本主義が発展しようと、民主主義が発展しようと、自然の一部である。現代の都会ではそれを経験することは不可能だと感じ、古代から修行場となっているような山を登ることにしている。
こうしたものは、言葉にすると陳腐になるし、経験してはじめて理解できることが多い。ここでは、活動をしているという事実を報告するだけに留めて置く。
以上のように、「日本文化」という言葉をキーワードに、様々な切り口で活動を行っている。日本の自然観・人間観と現代の科学技術が上手く融合できれば、本当に豊かな社会が実現できると確信している。
Thesis
Takeshi Ninoyu
第21期
にのゆ・たけし