論考

Thesis

今年度の活動指針

政経塾最後の3年目に入る今年、この2年間で固めてきた理念・ビジョンを具体化する段階に入ったと実感している。「松下政経塾」と言えど、この社会を根本的に考え直し、改革していく気運が弱まっている中で、私は大きな文明史的転換を意識しつつ「日本文明」に基盤を置いた活動を展開していく所存である。

 前回の月例でも述べたように、現代社会が瀕している危機はわずかなシステムの歪みどころの話ではなく、数百年・数千年に一回の大きな転換期がもたらしているものである。特に、人間・特に先進国や都市住民が享受している科学技術に基盤を置いた利便性の高いライフ・スタイルは、自然との協調、という人間の最も基本的な生存条件を忘却の彼方に消し去ってしまっている。人間がここまで傲慢になった時代は、世界史で見ても初めてではないだろうか。

 では、日本文明のどの部分が世界に貢献できるのか。この問いが私にとって最も重要な問題意識となるだろう。簡潔に答えるとすれば、それは日本の「宗教観」と「自然観」と言える。両者は根源的には同じと考えることもできる。日本という国においては、人間が自然を超越して君臨するという思想は発生することがなく、生活文化の中に自然を崇拝する習慣を取り込んでいた。

 最近、こうした主張を唱える人達もちらほらと出てくるようになった。物質的な豊かさをほぼ達成した感のある現代社会で、次の課題として精神的な部分に注目することは至極当然と言えるかもしれない。「ものの豊かさからこころの豊かさへ」、「ゆとりの教育」、「癒し系」、「エコ・ツーリズム」、などなどこうした部分への関心を表す言葉も巷には氾濫している。しかし、この本質は一体どのようにして生かしていくか、を具体的な形で社会に取り込んでいくことはなかなか難しい。私はこうした困難な作業をテーマに選んだ自分の運命を呪いつつも、具体化作業に向けて活動を続けた。

 以下、今年度の活動内容を大枠で紹介する。

1.国際交流事業

「侘び寂び」、「以心伝心」など日本精神の粋を言葉や形で示すことは非常に難しい。こうした課題に10年来取り組んでいる大阪の任意団体「J-ART」 の国際交流事業(2002年日韓国民交流年事業メインイベント)で、責任者として日本文化の海外紹介に努める。

2.環境プラント事業

 日本古来の完全循環型リサイクル社会を現代版にアレンジし直して、関西を中心にごみゼロ社会・環境先進地域を実現していく。現在株式会社の立ち上げの最中であり、設立後(株)福永微生物研究所のTF菌システムを利用した「生ごみ堆肥化プラント」建設を働きかける。

3.ブランニュー・京都運動

芸術文化・精神文化における日本の中心地・京都。自分の出身地であるこの都市から日本文化に基盤を置いた社会を構築するために社会運動を広げていく。現在、月一回ペースでのテレビ番組、知事直属の諮問委員会メンバー、など可能な突破口から運動を広げていく予定である。

 大きく分類すると以上3点であるが、その他これまで培ってきた人脈から積極的に世直しのプロジェクトを仕掛けていく。現場が見えにくい活動であるかもしれないが、人類が直面している根本的な課題を解決するべく活動に邁進する所存である。

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二之湯武史の論考

Thesis

Takeshi Ninoyu

松下政経塾 本館

第21期

二之湯 武史

にのゆ・たけし

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