Thesis
最近、日本において文化戦略の重要性が議論され始めている。これまで欧米諸国に比べて文化の重要性を認識してこなかった我が国であるが、21世紀において文化が持つ不可欠な役割を徐々に理解しているのだろう。
ここでそもそも文化とは何であろうか?文化という言葉自体が持つ定義が非常に曖昧なだけに議論するのが非常に難しいのがこの分野である。ここでは以下に2つの定義をあげる。
①ある集団が歴史を経て形成してきた精神的規範・生活様式・価値観・社会道徳
企業経営を論じるときに「日本的経営」という言葉を使う。また、「日本的考え方」「日本社会」など、大きな社会の中で暗黙のうちに守られているルール、システム、価値観がこれに当たる。
② ①を踏まえてある集団が生み出す芸術・美術その他準じるもの
ルネサンス絵画、ハリウッド映画、壮大な宗教建築、などある社会が共有している精神から必然的に生み出される芸術表現、物理的表現がこれに当たる。
ではなぜこの時期に文化戦略の重要性が議論され始めているのだろうか?私なりに見解を述べてみたいと思う。
①グローバル社会の中での生命線
ここ数年の日本社会の顛末にこの答えが明確に示されている。
経済においては、「日本型経営」の有利が一気に崩れ自国企業の相次ぐ倒産の中で外資系企業の激しい進出を許し、株主の20%が外国人とも言われている。「グローバリゼーション」の合言葉の中でアメリカ式経営が世界のスタンダードとなり各国は不利な経済競争の中にいる。まさにアメリカ文化が世界を席巻した好例と言えよう。
このような一国の経済構造を覆す力を持った文化に対処できるような自国文化をもっていることは必要である。
②「文明の衝突」時代におけるシンパの必要性
ハンチントン教授は21世紀を「文明の衝突」の時代と呼んだ。今後の国際関係は相容れぬ文明間の争いにシフトし、その中で各国は文明的に近しい国家との友好関係を重要視しなければならないとした。
ヨーロッパ諸国、東南アジア諸国の中で、反米感情が高まってきているのは彼の提唱する時代の大きな流れに沿うものである。同盟関係、友好関係、という視点から文化というのは非常に重要な意味を持っていると言えるだろう。
③経済的効果
先にあげた定義の中で特に②に関係する部分である。イタリア、フランスのブランド品や観光産業、アメリカのハリウッドや留学生はゆうに数兆円を超える産業規模である。経済構造がハードからソフトに急速に移行している現在、こうした文化を基盤とした産業は市場規模・成長率ともに期待大である。
まず現在日本が保有している文化の中で、実際に影響力をもっているものをピック・アップしそれらを元に戦略を構築することである。以下、私が世界に対して訴求力をもつと考える日本文化を列挙したい。
①アニメーション
日本のアニメーションは現在唯一汎世界的に人気を博している文化である。市場規模でも数兆円に達し、海外への浸透度も高い。
②環境問題
日本人が数千年かけて構築してきた生活規範である「自然との共生」という概念が21世紀における環境問題における日本のリーダーシップを可能にする。
今後諸外国の文化機関に注目してレポートを作成する予定である。
Thesis
Takeshi Ninoyu
第21期
にのゆ・たけし