Thesis
島根県益田市役所での3ヶ月間のインターン(研修)を以下の通り報告する。
期 日 | 平成14年6月27日(木)~9月27日(金) | |
受入先 | 島根県益田市役所 合併推進室 | |
目 的 | 1.益田市役所での業務を通して、市政の現場、政策決定過程を把握する | |
2.市役所職員の方々とのつながりをつくる | ||
3.3ヶ月間益田市で生活することで、人的ネットワークをつくる | ||
4.様々な地域での行事に参画する |
益田市は島根県の最西端に位置し、北は日本海に面し、西は山口県に接する。基本データは以下の通り。
市制: | 平成14年6月27日(木)~9月27日(金) | |
人口: | 島根県益田市役所 合併推進室 | |
市民の市役所に対するイメージ | ||
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今回の研修では「市町村合併」の事務を担当する「合併推進室」にお世話になった。今年6月1日に発足したばかりの新しい部署である。益田市は今からちょうど50年前の昭和27年に周辺の村と新設合併して市制を施行した。昭和30年には他の6村を編入し、現在に至っている。市町村合併とは将来の地域のまちづくりを考えることである。また、合併論議ではすべての項目にわたって調整が必要となる。県や国との関係を見ることができ、地方自治のあり方を考えるよい機会にもなった。
益田市は隣接する美濃郡美都町・匹見町の2町と任意合併協議会を設立し、協議をしていくことになった。現在の益田市も以前は美濃郡に含まれ、昔から一体性の強い地域である。下図に示すように、益田市が人口では大部分を占める。しかし、面積では益田市が県下第二位、匹見町が県下第三位となっており、合計すると広大な面積となる。これは市では全国12位の広さを持つ広島市とほぼ同じ広さであり、現在合併論議がされている枠組みを考慮しても県下第一位になることが予想される。
人口(人) | 面積(km2) | ||
益田市 | 50,128 | 300.44 | |
美都町 | 2,691 | 132.64 | |
匹見町 | 1,806 | 300.08 | |
合計 | 54,625 | 733.16 |
今回研修中に感じたことは市役所での情報と、市民の意識に大きなギャップがあることだった。今から6年前、益田市は私立大学誘致問題で揺れた。行政は誘致を打ち出した後、各種説明会、広報への掲載など情報を提供していた。私は当時益田市には住んでいなかったが、毎月広報や新聞等の報道を目にしていたし、問題は十分に理解していたつもりである。しかし、市民の反応は違った。「行政が一人歩きしている」「いつの間にか勝手に決まっている」「情報提供がない」といった声が聞かれた。結局、市民の不信感を拭うことができず、大学誘致を推進していた当時の市長は、誘致反対を公約に掲げる候補に敗れ落選することになった。新市長は公約どおり誘致を撤回したのである。
先日行われた益田市議会で市町村合併の質問に立った議員はこの大学問題を教訓に十分な情報提供を行うよう要望した。私もまったく同感である。しかし、残念ながら今回の市町村合併についての市民の方々の関心は薄い。原因は双方にあると私は思う。前述の大学問題同様、普段からあまり情報を得ようという姿勢があるようには感じられない。それと同時に行政にも積極的に情報を提供しようという意欲も感じられなかった。実際に今回行政の側から見てみてより実感できた。
地方分権がこれからさらに進み、各自治体、地域は自己決定・自己責任を負わなければならない。そのとき「情報」は何よりも重要なものであるはずである。市民も自分達の問題としてより「情報」を求めていくべきであるし、行政も「サービス業」であるならば顧客に言われる前にするという姿勢が必要ではないだろうか。益田市のホームページを見てもその姿勢が問われても仕方がないように思う。
情報公開条例が各地で施行されている。「情報公開」とは「来たら見せてやる」ものである。行政は「情報発信」をもっとしていくべきである。広報で足りなければ、「メールマガジン」など他の方法も考える時期に来ているのではないだろうか。しかし、いくら「発信」しても受け手がいなければ効果は薄い。「情報共有」までいって初めて意味があるのである。それにはわかりやすく伝える行政の努力も必要だが、市民の意識改革が何よりも必要である。少なくとも毎月広報に掲載されたり、報道されている問題について、知らないなどと言うべきではない。わからなければ行政に対しての要望をもっとしていくべきである。実際市町村合併についても出張して説明をする旨を広報に掲載していたが、自治会から1件、経済団体から1件しか希望がなかった。納税者、主権者としての自覚が求められている。
イメージは良い方でも悪い方でも中々変えることは難しい。市役所に対して良いイメージを持つ日本人は残念ながらほとんどいないであろう。しかし、これから「自己決定・自己責任」の時代には、市民と行政が「二人三脚」のように相互の信頼関係を築いていかなければとてもやっていくことはできない。先に挙げた市民のイメージは全員に当てはまるわけではない。しかし、どのような組織でも一部のイメージが全体のイメージになるのである。また、民間企業であることでも行政がすれば批判の的になることもある。政治や行政に対して文句を言いさえすればよいという風潮があるのも事実である。この点については市民の意識も変えなければならない。しかし、行政は税金でまかなわれている。企業に例えれば、行政にとって市民は「顧客」であるだけでなく「株主」でもある。今後の市政運営をよりよいものに、また協働でよりよい地域をつくっていくために、少しでも悪いイメージを払拭するよう懸命な努力をすべきであると私は考える。
3ヶ月間益田市で暮らし、多くの発見、仲間、出会いがあった。お世話になったすべての方々に感謝をしたい。市町村合併論議はこれからまだまだ続くが、一人でも多くの市民、町民の方々に自分達の問題として議論をしていっていただきたい。
また、益田市は人口5万人の小さな町であるが、大きな可能性も感じた。そのためには人口の約1%を占める500人弱の職員を抱える市役所の果たすべき役割は非常に大きい。益田市の「リーディングカンパニー」として益田市役所が貢献するための具体策を今後提案していきたい。
都市データパック2002年度版 東洋経済新報社
Thesis
Shintaro Fukuhara
第22期
ふくはら・しんたろう
株式会社成基 志共育事業担当マネージャー
Mission
「地域主権国家・日本」の実現 ~人と地域が輝く「自治体経営」~