論考

Thesis

湘南改革者会議の呼びかけ

一月末に英国より帰国後、外交シンクネット「NAP」(→塾報2月号参照)の立上げ準備のため、様々な人々の所に伺い、ブレストを行っている。特に、昨年まではあまり接触の無かった、同世代の人間でNPO等を主宰している人々とよく話す機会を持つ。他にも、一月から、継続して参加しているテレビの討論番組等で、同世代の人々、特に政治に関心のある人々の意見をよく聞くようになった。

 私は今まで、あまりそういう活動をしている人々とのコンタクトが無かったので知らなかったのだが、彼らのエネルギーやネットワークの広さには正直驚かされた。日本にも、多くの志ある若者が、政治を志向し、様々な活動を行っている。

 しかし、成熟した英国の政治シーンと比較すると、問題意識を感じざると得ないところがある。簡単に言えば、それは、政治的なフィロソフィーの欠如と、諸団体間のコラボレーションの不足だ。

 英国で、同世代の若者達が、シンクタンクの代表や政府のメンバーとして政治に関わる姿に大きな感銘を受けて帰国した。何故英国では、それだけ年齢に関係なく様々な政治的な活動が活発におこるのか。私は、その原因を、英国の政治風土とも言うべきものに求めている。簡単に言えば、英国では、老人から少年に至るまで、保守思想のフィロソフィーを共有する団体や諸個人、もしくはリベラリズムのフィロソフィーを共有する団体や諸個人が、保守党・労働党の政党組織を中心に、フィロソフィーを共有する者同志でコラボレートしている。若者達は、斬新な発想で、様々な政策・ビジョンを年長者たちに提供し、年長者たちは、若者達に、その見返りに、様々なチャンスを提供している。

 翻って、日本の政治シーンを見ると、日本には、特に冷戦構造崩壊後、そう言った政治的フィロソフィーが失われてしまった。フィロソフィーが無い故、世代や団体等の物理的範囲を越えたコラボレーションが行われない。
 また、これは、戦後の日本人の習性になってしまったのだろうか、日本では政治を特別視する傾向が強いように感じる。自分たちの生活と切り離して、「政治はこうあるべき」だとか「情報公開」「住民参加」「地方分権」「首相公選」など、政治の箱物の話ばかりに終始し、一体どういう社会を私達が望んでいるのか、という話にならない。これでは、人々の魂もこもらないし、政治に興味のない人を巻き込むことも出来ない。

 そんな問題意識から、同世代のNPOや学生団体のリーダーを中心に、①我々の世代の求める社会ビジョンの共有 ②①を実現するための政治参加及び諸団体間のコラボレーション の2つを目的に、「湘南改革者会議」への参加を提唱している。他にも、本当に改革のビジョンを持っている政治家等の参加を呼びかけたいと考えている。以下が、その呼びかけ文並びに企画書(予定)である。関心のある方は、連絡頂ければ幸いです。


「湘南改革者会議」の呼びかけ

~どんな日本を創りましょうか? どうやって創りましょうか?~

呼びかけ文

 現在の日本の新世代の政治・政策志向のNPO/学生諸団体は、その黎明期を経て一応の基盤を確立しつつも、新しい日本を生み出すような展望が描ける状況には至っていない。
 私達は、その理由として、新世代の人間たちもまた、政治を特別視していることにあるのではないか、と感じている。良い社会を創るのが政治の役割であるわけだから、良い社会とは何か、そして政治を使ってそれをどう実現するか、というのが最もシンプルな議論だと思う。しかし、政治を特別視する日本の風土は、「政治を良くしよう」「国民の意思を政治に反映させよう」と言った、やや堅苦しい箱物の議論(制度論)に傾いてしまいがちな傾向を感じる。堅苦しい制度論ゆえ、私達の魂はこもらず、求心力にイマイチかける現状を生んでいる。

 私達は、こう言った問題意識から、一度そういった堅苦しい箱物の議論を取り払って、「自分達は、こういう社会を欲している」「だから政治でその社会を実現しよう」というダイレクトな議論を行うことを皆に提案したい。今一番重要なことは、我々は箱物の議論を乗り越えて、自分達の欲する新しい日本社会のビジョンを共有し、その実現にために協力して行動することではないか。理想・ビジョンの共有は、様々な既存団体や人々のコラボレーションを更に促進することにつながる上、結局は政治を変える一番の近道だと考える。「政治家や官僚は国民の声を聴け!」というよりも、「俺達は、こういう社会を求めているから俺達のいうことを聴いてくれ!」と打ち出して行くことの方が、政治も変わるハズだ。

 本会議では、あくまでタタキ台ではあるが、「こんな社会を俺達は求める」、つまり私達のビジョンとして、以下の2つを提示したい。

 1つは、「アジア太平洋との融合で新生する日本」。今までの枠組みを取り浚い、周辺諸国との融合を促すことで、日本の旧態依然たる悪弊の部分を是正すると同時に、より「日本は日本らしく」個性を伸ばす形で日本を新生したい。中国を始めとするアジア太平洋諸国は、年配者にとっては危険な不安定要因かもしれないが、私達若者にとっては、非常に魅力的な広大なフロンティアだ。
 具体的には、アジア太平洋での自由貿易圏構想等を支援し、世界に開かれた日本・世界に開かれたアジアを創って行きたい。

 2つめは、「産業社会から情報社会への大転換」。二次産業中心の今までの社会観・社会制度を抜本的に変えていきたい。今までの日本は、集団的な効率性を至上命題として国を挙げて追い求めてきた。しかし、情報社会では、個人の集団への忠誠心に依拠した集団の効率性よりも、自発的な個人個人の創造性こそが重要になる。コ・オペレーション(共同作業)から、コラボレーション(創造的協調)へ、である。今までの箱物中心公共事業から、個人個人の才能を最大限引き出すための、教育を始めとする人材投資へと、政策をまず変えていきたい。次に、公共事業で、景気を「下支え」するのではなく、アイディアと能力を持った若者たちの将来のために、「積極的に」お金が使われる社会を実現して行きたい。具体的には、公共事業から教育を始めとする人材投資への抜本的転換、並びに、公的な資金を始めとする「後向き」に使われがちな資金を、「前向き」なリスクマネーに転換する仕組みを確立していきたい。

 以上2つのビジョンをタタキ台に議論を進めていきたい。もしビジョンが共有されるのであれば、では次に具体的にそれをどうやって実現していくのか、その方法論について議論したい。その成果を受けて最後には私達の今後のコラボレーション計画を、共同声明という形で確定したい。

互いに、自分たちが欲する社会のビジョンを共有しよう。
理想が共有できたら、互いに自分たちの殻に閉じこもらず、大胆にコラボレートしよう。
政治家を始めとして有力者にも積極的にアクセスして、私達の理想を実現していこう。

それが、「湘南改革者会議」の開催を呼びかける私達の「想い」です。

  • 佐藤大吾(NPO .JP副理事長・株式会社インターパーソナル代表取締役)
  • 佐野哲史(ステーツマン 前代表)
  • 鈴木 烈(財団法人 松下政経塾 塾生)

<企画>
日時:3月17日(土)14時~18日(日)12時
場所:神奈川県茅ヶ崎市 財団法人松下政経塾施設内(予定)

スケジュール

17日(土)
14時~・会の趣旨説明
14時15分~17時・参加団体毎の発表
17時~18時30分・ブレスト・議論
18時30分~20時・懇親会
20時~・飛び入りゲストとの議論等。

18日(日)9時~12時・共同宣言文、行動計画書の策定

<参加予定団体>(要請ベース)

  • NPO .JP(ドットジェイピー)
  • ステーツマン(選挙支援団体)
  • NAP (外交専門シンクネット)
  • WISH (外交政策研究の学生シンクタンク)他

<主催>

  • NAP立上げ準備委員会

<ゲスト参加を依頼する政治関係者>(案)

  • 鈴木寛(慶應大学SFC助教授)
  • 渡辺喜美(衆議院議員)
  • 他松下政経塾出身の政治家には、参加を要請中。

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Retsu Suzuki

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第20期

鈴木 烈

すずき・れつ

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