松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1999年10月

塾生レポート

戦争精算省構想
矢板明夫/卒塾生

 
 冷戦の終結はいろな意味において、日本にとって大きな変革の節目と考えられる。日本の国内の自民党と社会党の「自由社会を守る」対「社会主義革命をめざす」というミニ冷戦もついに終わり、日本はやっと普通の国になった。そして、国際社会における敵も仲間(アメリカというパートナーはあるが)もいなくなったので、日本は自分の外交を考えなればならなくなった。
 戦後の日本は冷戦という大きな国際環境によって大変助けられた国である。朝鮮戦争の勃発は経済的に日本を助けただけではなく、戦争の精算もほとんど整理しなくてもすむことができた、終戦直後経済復興中の日本にとって非常に幸運なことだったが、しかし、今となれば、歴史はまだ精算しきれていない事実は国際秩序の中に、特に韓国、中国にカードを与えてしまったことになり、日本の外交にとって不利なこととなった。
 今までを振り返って見ると、相手が日本を必要とする時に、歴史はもう過去の事だから、未来志向に行きましょうと言われるが、両国に摩擦が起きると、歴史問題は再び登場する。1972年の時に中国の周恩来首相は戦後補償を放棄したにも関わらず、その後、ことがある度に歴史問題は中国によって持ち出されてきた。天安門事件の直後、再び国際社会で孤立に陥った中国は日本の力を必要とし、再び未来志向という言葉が登場し、天皇のご訪中も実現したが。しかし、98年の江沢民主席の訪日は、中国は歴史カードをこれからも永遠に使えることを証明して見せた。今、韓国の金大中大統領は歴史問題を乗り越えようと言って来ているが、これも韓国の深刻な経済危機と関係していると多くの関係者は見ている。数十年前、朴正煕大統領も同じことを言ったことは記憶に新しい。
 外国の政治家は歴史問題を外交取引の条件として使うしたたかさは日本の政治家は見習うべきだが。同じに、日本はやるべきことをやってこなかったことも又事実である。今なお残されている問題としては、慰安婦問題、強制連行労働者問題、香港、台湾の軍票問題(日本軍によって強制的に軍票を買わされ、日本の敗戦と共に紙屑となった。)中国残留化学兵器問題、などなど、山済みである。
 これらの問題を解決しなければ、日本は永遠にアジアの仲間になれない。いま、中国や韓国にいくと、根強い日本に対する不信感を感じる。確かに向こうの教育の方法は問題あると思うが。しかし、日本政府は歴史を清算しようという積極的な姿勢を今まで見せなかったことは実に責任が大きい。
 日本の外交は顔が見えないとよく言われる。あれだけのODAを次ぎこんで、ほとんどの外交効果がられていないことは大きな政治責任である。
 日本のアジア信頼回復のために、私は戦後清算省という新しい官庁を作ることを提案したい。世界経済ブロック化しているいま、アメリカという大きなマーケットに依存している現状には限界がある、21世紀に日本に残されている道は、アジアの進出しかない。
 戦後清算省、いわば、ODA政策の徹底的な見なおしである、今の日本のODA政策はよく歴史問題を考慮していて、暗黙の了解をとっているつもりだが、しかし、昨年江沢民国家主席訪日の際の3900億円もの円借款について中国の報道機関はほとんど報道していないし、まして、その経済効果について、おそらくほとんどの中国人は考えようとしていない。
 中国の北京に日中友好病院がある、日本のODAによって作られた非常に立派な病院であるが、ほとんどの中国人はそれを知らず、在中国日本人の専用病院だと思っている。私はある中国人に「なぜ中国がこんな高いお金お出して、日本人のために病院を作らなければならないの?」と非難されたことすらある。
 これからの援助は日の丸マークをつけて、すべての援助は日本からきたアピールを大大的にやるべきだという意見もあるだ、中国、韓国の民族感情は考えれば、おそらく逆効果であろう。
 私は戦後精算省は五年廃止とする臨時官庁として、財源は民間の寄付を中心とすれば、最小限のコストで最大限の外交効果が得られ、これからの日本の最大の国益に繋がると考えている。
 又、同時に国際協力省というものを作り、直接に日本の国益と関係なく、地球益のために日本の環境技術、農業技術、医療技術と資本を集約させ、全世界を視野に、本当に必要とするところを応援する。
 この二つの省を大きくアピールすれば、日本の外交はやがて、顔の見える外交へ変身し、世界から評価されていくのであろう。

1999年10月 執筆
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