松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1999年9月

塾生レポート

台湾大地震
矢板明夫/卒塾生

 
 9月21日の大地震は台湾史上最大の天災である。一夜にして、台湾全島を悲しみのどん底に落とし入れた。死者2200人以上、負傷者8800人、南投県、台中県など、台湾中部のいくつの地域は壊滅的な打撃を受けた、経済損失は計り知れない…
 この地震に対して、国際社会の反応はすばやかった。レスキュー隊、義捐金、救援物質等が世界各地から迅速に台湾に届き、各国のマスコミも台湾に対して空前な関心を示した。自然災害を目前にして、「助け合う」という美しい人類愛の一面を私達に見せてくれた。
 同時に、国際関係という視点から、今回の地震は私達に多くの示唆を与えてくれた、今後の台湾問題解決の行方にどのような影響を与えるのか、台湾、中国、そして、日本、今回の地震でなにを学ばなければならないのか。検証してみたいと思う。

1、 台湾:

 世界は決して台湾を見捨てていないこと。国連の一員でなくても、国際社会で孤立していても、困難がある時は、みんなが助けてくれるものだ。この事実を確認できたことは台湾にとって大きな収穫である。台湾のマスコミは今回の報道でよく「地球村の一員」という言葉を使っている。非常に良い言葉だと思う。台湾もこの地震をきっかけに、自分が世界で孤立している妄想から脱出して、外交政策を調整する必要があると思う。1日も早く中国とのバラマキ外交合戦を停止し、台湾の資金と技術力を持って、本当に必要とする国へ送り、援助する。地球村の一員としての義務を果たすべきである。

2、 中国:

 対台湾政策を根本的にみなさなければならない。今回の大地震の時さえ「一つの中国」を振りかざして国際社会の人道的な台湾救援に政治的な「感謝」を表明し、台湾の民衆のみならず国際社会からも顰蹙を買ってしまった。このような政策を続けるかぎり、中国が望む台湾との統一は遠ざかっていくだけである。中国は今回の地震で学ばなればならないのは、台湾問題はもはや自他ともに認める立派な国際問題だ。全世界が台湾に関心を寄せていること。今回、台湾問題とあまり馴染みのないドイツまで、国会の開会式で台湾大地震の犠牲者のために全議員が黙祷した。武力行使のような人災によって、台湾が犠牲者を出すなら、国際社会の強い姿勢は想像できる。

 確かに台湾問題の解決は中国人と台湾人が相談して決めることだが、しかし、一方による武力行使は、全世界を敵にまわす覚悟がいる。国際社会の価値観はもう変わっているのである。「人権は国家主権を凌ぐ。」中国は台湾問題で国際社会の理解と支持を得るためには、まず台湾政府を対等な政治実体として認めることから始まらなければならない。

3、 日本:

 日本は今回の台湾大地震の対応は大変評価できるものだと考える。当日夜、日本からの緊急援助隊がシンガポール隊と共に一番乗りし、空港で一秒も休まずに災害の現場に駆けつけた、規模も最大で250名、機材も最新鋭、訓練、規律も最高とあって、地元のマスコミに高く評価された。
 台湾と日本の外交を担当する亜東関係協会の林金茎会長は産経新聞のインタービューにこのように答えた:「今回の緊急援助隊の派遣と日本人から熱い支援は台湾人の多くに、日本と台湾はもともと兄弟のような緊密な関係にあるのだ、ということを再認識させた。」

 台湾の親日世代は今の総統の李登輝氏までと言われています、近年、日本は台湾を見捨てている、無責任だ、何もしてくれない、という諦めと反発は台湾のマスコミに年年強くなってきた。
 政治的に日本はアメリカと中国という板ばさみにあい、確かに台湾問題で積極的に貢献するところは少ないが。しかし、今回の救済活動で日本が活躍できたことは今後の日本のアジア外交にとって非常に良いことだ。
 中国への配慮第一という日本の外交パターンを繰り返すことなく、一番早くレスキュー隊派遣に成功した小渕首相の決断に拍手を送りたい。
筆者も今、日本の阪神大震災の復興経験を台湾に紹介しようと、東京と兵庫を往復し、台湾と連絡を取りながら、自分の出来ることをしたいと考えている。

 今回の地震が私達に多くの示唆を残してくれた、マスコミの報道によって、全世界が台湾に対する関心が高まり、台湾の置かれている国際外交状況、中国との関係に対する国際社会の意識が広まった。国際情勢が変わる中、これからの台湾と中国とどう付き合っていくのか。この地震をきっかけに、私達が真剣に考えなければならない問題だ。
                            以上

1999年9月 執筆
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