松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1999年5月

塾生レポート

日本の外交政策を考える ~対中国ODA外交~
矢板明夫/卒塾生

 
 江沢民氏の訪日、石原新都知事の発言に続き、日中関係に又、新たな問題が発生しそうだ。

 6月6日、日本輸出入銀行は突然、対中国政府開発援助の資金供与の方針変更を発表した。これまで、輸銀は中国政府への公的資金の融資に破格の低金利、長期の一括供与、中国側主導の供与対象選定など特別の優遇措置を与えてきたが、これらをすべて廃止するという。

 輸銀の対中資金供与の具体的な新方針は、

 (1)
中国への融資の金利は資源ローンで財政投融資金利に〇・二%ほどの手数料を乗せただけの例外的な低利で、他国への同種のローンより三%も低いなど、対中特別低金利が採用されてきたが、これをやめて他国並みとする。
 (2)
資源ローンなどの供与の五年とか九年の長期一括方式という中国だけの特別扱いをやめて、単年ごとにする。
 (3)
融資対象プロジェクトは中国側が作成したのを輸銀側が事後承認する形だったのを改め、輸銀側が事前にチェックするようにする。
 (4)
各プロジェクトの内容に踏み込んで調査しなかったのを改め、個別にチェックする。
 (5)
中国側は日本からの輸銀融資について国民向けにほとんど知らせず、輸銀側もそれを放置してきたが、今後は各種マスコミでの報道を積極的に求める。

 輸銀の対中資金供与は七九年以来、中国政府あてに資源ローン、資金協力ローン、投資金融などの形で、当初は石炭や石油の開発に、近年では空港、高速道路、橋、発電所などのインフラ建設に投入されてきた。その総額は九八年末に三兆二千二百四十億円を超え、対中ODAの総額を上回り、経済発展を目指す中国にとって、大事な資金源である。 

 輸銀が今回中国の特別扱いをやめたのは日中関係をめぐる政治情勢や中国の経済発展、日本の財政状況などの変化が理由だとみられる。この点に関連して輸銀北京駐在員事務所の宇都宮章首席は「いまや日本も中国を普通の国とみなし、対等で率直な立場から中長期の安定的な両国関係を目指すべき時期になったといえる」と説明している。
 しかし、これだけの説明では明らかに説得力の不足で、中国を納得させられない。この政策変更を受け、中国のマスコミは早速大変厳しい反応を示している。
 私は今回の方針変更は評価すべき点とそうでない点があると考えている。しかし、総合的に見て、やはりまずかった部分が多いと思う。

 まず、評価すべき点。

 (1)
ようやく外交上のガードとしてODA(正確にいうとODAではないが、趣旨が同じなので、ここで同等と見なす)を使ったこと。
 (2)
特殊化したの両国の経済協力関係をいくらか正常にしたこと。

 この二点である。また、日本の財政状況や国民感情を考えて、今回の対中国金融政策の調整はやむを得ないだろうとも思う。

 しかし、問題点は以下である。

 (1)
タイミングが悪すぎる。せめて、小渕首相訪中の後にして欲しかった、両国関係を悪化させ、江沢民氏の訪日と同じように、せっかくの首脳外交を台無しにする恐れがある。
 (2)
是正の程度が大きすぎた。20年間も放置した政策を一気に金利、時間、査定、全部是正したら、中国にとって日本から借りるメリットがほとんどなくなった。始めて使った外交カードなのに、一回それをなくす恐れがある。
 (3)
「中国のマスコミによる報道を積極的に求める。」という態度はナンセンスだと思う。日本の経済援助に関して中国での報道が少ないことは確か問題だが、しかし、これは日本の言うべきことではない。脅迫しているように聞こえて、逆効果になるでしょう。第一、こんな先例は国際的に聞いて事がない。かつて、日本の経済成長時代、新幹線や高速道路などの多くの建設費は世界銀行から融資を受けたにもかかわらず、ほとんどの日本国民はそれを知らない。先進国が発展途上国を助けるのは国際的な義務で、結果として自分の国も潤うことになることはほとんどだ。(結果を見て、日本の対中国援助もそうである。)日本は今中国に対して言うべきことは、「宣伝しろ!感謝しろ!」ではなく「人権と民主主義」ではないかと私は考える。(今年の6月4日、天安門事件十周年、私が滞在する北京市内のホテルはCNNとBBCのテレビ 番組の受信をできなくした、しかし、NHKはとめられていない、なぜなら、NHKは中国政府を批判しないからだ、日本人として情けない思いをした。)

 いずれにせよ、今回の対中国政府開発援助の資金供与の方針変更を受け、これからの日中関係は山場を迎える、7月訪中する小渕首相の外交手腕に期待したい。

1999年5月 執筆
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