松下政経塾 The Matsushita Institute of
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1998年9月

塾生レポート

日本の対台湾政策を考える(5)三つのノー
矢板明夫/卒塾生

 
 江沢民中国国家主席の訪日が延期された、表向きは長江流域と東北地方に起きた洪水が原因になっているが、本当の理由は日中間台湾問題交渉の難航ではないか、と関係者の間で話題になっている。
 江沢民氏の台湾問題に取り組む姿勢は本気である。新中国の第三代指導者として歴史に名を残すには、台湾問題の解決が期待される。昨年の第十五回党大会でライバル喬石氏を退け、本当の権力頂点に登り詰めて以来、江沢民氏は台湾を孤立させる猛烈な外交攻勢を展開し始めた。アメリカ、ロシアを歴訪し、米中、中 ロ関係を安定させ、香港の返還の式典を盛大に行い、世界中に中国の存在を大いにアピールし、さらに今年、アメリカ大統領を中国に迎え、台湾問題三つの不支持を表明させた。
そして、今回の江沢民の訪日はこの外交攻勢の延長線にある。日本の首相にアメリカと同じく対台湾三つのノー(台湾独立の不支持、二つの中国もしくは一中一台の不支持、台湾の国際組織への加入の不支持)を誓わせ、できれば日中両国政府間の条約として明文化させたい。「そうすれば、台湾は完全に国際社会で孤 立し、中国に妥協してくる」という狙いである。

 日本は中国から突きつけられたこの要求の前に大変なジレンマに陥っている。三つのノーを明言すれば、台湾を見捨てることになり、国際社会からも「アメリカ追随、中国に弱腰外交」と悪評される。しかし、明言しなければ、アメリカ抜きで中国を敵に回す恐れがある。 外務省は中国の再三の要求をかわし、この問題 を曖昧にして、乗り切ろうとしたが、しかし、中国の反応は思ったより激しく、江沢民氏の訪日を延期された今、いよいよ態度を表明しなければならなくなった。どうせ立場を明らかにするなら、日本の国益を十分汲み取って、独自の意見を出してほしい、ここで、私は日本の三つのノー政策に対して提言をしたい。
 地理的にも、歴史的も、国際的な立場もアメリカと違う日本は、自国の基本理念である平和主義と民主主義を最優先にし、アメリカと違う対台湾政策を出すべきである。

 まず、三つの不支持を分けて考えることから始める。
 一つ目の台湾独立の不支持に関しては、台湾の独立勢力を応援するかどうかの話であり、支持すると台湾の内政を干渉する恐れがある。さらに、中国との関係を踏まえ、東アジアの平和と安定を考えた時、日本政府は台湾独立不支持を表明して当然だと想う。不支持とは台湾の独立勢力をサポートしないという意味で、将来台湾人民が民主的手段を通じて独立を選択した時、日本政府が台湾を承認しないということではない。従って、この表明は民主主義を反することではない。

 二つ目の「二つの中国、或いは一つの中国一つの台湾を支持しない。」に関して、日本は中立の態度を表明すべきだと想う。2100万人の台湾人民を無視するような今までの外交政策を改め、台湾という政治実体を認めていく方向に変えていくべきだが、しかしながら、二つの政府がともに「中国はひとつ」と言明している以上、日本政府はこの考え方を尊重すべきである。従って、ここで支持も不支持も存在しない、中立という立場は妥当である。

 三つ目、台湾の国際組織への参加の不支持に関してだが、日本はこの問題で中国側からの要求を承諾することはできない。むしろ台湾の国際組織加盟を支持することを打ち出すべきである。まず、私たちの国家理念から、台湾人民の幸福と福祉を追求する権利を肯定しなければならない。
 さらに言えば、台湾の国際組織の加盟は日本の国益にもなる、特IMFやWTOなどに台湾を迎えることにより台湾の国際責任をもたせ、日本の負担を軽減させることができる。諸条約上、日本は台湾の国としての国連加盟を応援することはできないが、しがし、オブザーバー参加という選択肢がある、かつて、パレスチナ民族解放組織は、ずっとオブザーバー参加として意見を国際社会に訴えてきた、台湾の二千百万人口は今、全く国際社会に意見を反映する場を持っていない。隣国日本として、台湾に力を貸すべきである。
 江沢民氏を迎えるに当たって、時にはたくましく、時には慎ましやかに、筋を通った対中国外交を展開すべきである。

1998年9月 執筆
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