松下政経塾 The Matsushita Institute of
Government and Management

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1998年5月

塾生レポート

台湾民主進歩党駐米代表処
矢板明夫/卒塾生

 
6月5日、私は台湾民進党のワシントン代表処を尋ね、国会組長兼法律顧問の林国維先生を取材した。

問:民進党のワシントン代表処はどういうお仕事をされていますか。スタッフは何人ですか。

答:この代表処は3年前、施明徳党主席の時に作りました、主な目的として、民進党とアメリカの国会との連携を深めることです、アメリカの政治家にわれわれの主張を訴えていく、いわゆるロビー活動ですね、他には、海外の青年人材育成や台僑の親睦活動なども主催しています。スタッフは張旭成代表(立法委員、非常勤)を含めて4人、それと大学院生インターンは何名かいます。

問:台湾(中華民国)の外交部の代表処(台北駐米経済文化代表処:実質の台湾大使館)との関係はどうなっていますか。

答:関係は良好ですよ、90%以上の考え方は一致していて、いろいろ協力し合っています、ただ、われわれは野党ですから、政府を代表する彼らと立場違います、又、彼らの仕事に対してチェック機能を果たしています。例えば、国民党の代表処は元々政府の代表処と一緒になっていまして、「それはおかしい。」とわれわれはずっと指摘してきた、あまりわれわれがうるさくいうので、彼らはこの間別れてくれましたよ(笑)。与党であっても、やはり政府と政党は違いますから。彼らが別れたことは台湾の政治にとって大変良いことだと思います。外交部の代表処はすべての台湾人の利益を代表すべきだと思います。

問:他の台湾政党の駐米事務所との関係はどうなっていますか。

答:建国党とは仲良くやっています、ほとんどの行事は一緒に主催しています、われわれの理念とはほとんど同じですから、ただの方法だけの違いだと思います、海外での支持者もほとんど共有しています。それ以外、国民党とは少し距離を感じていますが、ことによって協力できます、新党はわれわれより中国と仲良くやっているでしょう(笑)。

問:海外の台僑(もしくは華僑)はあなた方の活動をどのように受け止めていますか。

答:実は、私はこの仕事を始めた時は大変悲観的でした、しかし、実際始めてみると、すごく手応えを感じるので自信は少しずつついてきたのです。やはり私たちは一番台湾利益を代表しているからだと思います。例えば、今、私たちの仕事の中にキャンパス巡りと言うのがあります、アメリカの各大学を回り、若い台湾留学生にわれわれの主張を訴えるのです、いま、私たちの支持者は各学園で1000人を超えました。留学生の組織の名前もほとんど中華学生総会や中国学生総会から台湾学生総会に変更されました。われわれの若い支持者は台湾の政党の中で一番多いと思います。一方、国民党と新党の主催する活動はわれわれと対照的です、ほとんど年配の方しか参加しません。このことは私たちの仕事の業績だけではない、時代の流れが私たち民進党に向いてきたからだと考えています。

問:やはり最終的に台湾の独立を目指されているのですか。

答:これはすごく大事なことです、私たちが繰り返し主張しているのは、台湾の独立ではなく、台湾の主権です、この間、陳水扁市長が米国にきた時、「台湾の将来は台湾人による住民投票によって決められる、そして、住民投票は私たちの最後の手段です」と講演されました。陳市長の話は私たち党内の合意です。

問:最後の手段はどういう意味ですか。

答:つまり、中国に武力侵略される時はじめて使う手段です。

問:中国の最近の主張を見ると、台湾を武力攻撃するのは二つのケースだけだと言っています。「一つは台湾独立を宣言する時、もう一つは外国勢力が台湾海峡に介入した時。」つまり、両方とも最後の手段だと言っています。このままいくと、いつまでも現状維持ですね。

答:中国共産党は自分の約束を守るかどうかは一つの疑問です、もしも守った時、しばらく現状維持ですね。ただ、中国は日々変化ています、中国の民主化が成熟したら、 台湾問題に対する考え方も少し変るでしょう、われわれがそれを期待しています。

問:ご活動されている中で、ワシントンの中国大使館から妨害を受けたことありますが。

答:あまりないですね、ただ、時々人民日報や新華社とかの記者だと自称して、向こうの人が取材をしにきます、きた回数の割に向こうのマスコミにわれわれは一度も登場しませんね(笑)。この間、陳水扁市長がきた時、向こうの記者が陳市長の宿泊ホテルやスケジュールをばかり聞いていた。人身安全に関わる問題なので、もちろん教えなかったけれど、やはり私たちの動きを向こうが監視していると思いますね。

問:いま、台湾で行われている民進党の党主席選挙についてですが、候補者によってはかなり違う政策を掲げています、この選挙の結果を受けて民進党のここな代表処の仕事は大きく変るようなことはありますか。

答:それはありません、われわれの指導者の中に、仮に対立があったとしても、それは中期的展望と長期的展望の対立です、いずれも台湾の利益を最優先にしていることを疑う余地はありません。そして、ここの代表処は台湾利益を代表する第一線です、誰が党主席になっても、私たちの仕事はいままでと変りません。

問:最後に、民進党の海外政策の中で、日本についてどのように考えていますか。

答:私たちには駐日代表というのがありますが、代表処はまだありません、大事な隣国ですから、もっと力を入れなければならないと考えています。一方、日本ももっと台湾に関心をもって頂きたいと思います。

問:本日、お忙しい中、長い時間本当に有り難うございました。

わたしはこれまで、国民党、民進党、建国党などと多くの政治的立場の違う台湾人を取材してきた。目的の違いは大きいけれども、しばらく現状維持という手段は違わないことにお驚きを覚えた。特に、台湾利益を最優先するという主張はどれも殆ど同じように聞こえる、理想や理念の対立というけれども、私の素直な印象として、意外と感情的な対立かもしれない。 この取材の二日後、台湾で民進党の党主席の選挙が行われた。台湾独立色の強い林義雄氏が第八代目党主席に選ばれた。今年年末の総選挙は林義雄体制で望むこととなった。迎え撃つ国民党は前回の地方選挙の敗北を雪辱すべく、背水の陣を敷いてきた。まだ半年の時間があるにもかかわらず、各党はもすでに選挙態勢に入っている。台北と高雄の市長も同時に改選される。台湾の情勢は目を離せない。

1998年5月 執筆
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