松下政経塾 The Matsushita Institute of
Goverment and Management

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2020年8月

塾生レポート

政治家に求められているモノとは
須藤博文/松下政経塾第39期生

林芳正参議院議員(山口県選挙区選出)の国会事務所にて、4カ月にわたりインターン活動をさせていただきました。残念ながら、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、私のインターンシップは途中で中止となりましたが、1人の国会議員を通じて、政治家とはどうあるべきなのか、政治に何が必要とされているのか、私なりに考えたことを報告いたします。

 

【目次】
1、スケールの大きい政治家になるために
2、学び続ける強さ
3、政治家に求められる人間力
4、おわりに

1、スケールの大きい政治家になるために


写真1 林芳正議員のもとでインターン開始
(2019年12月26日撮影)

 2019年12月から2020年3月まで、林芳正参議院議員(山口県選挙区選出)の国会事務所にて、インターン生として受け入れていただきました。
 林議員は、松下政経塾の関係者ではありません。また、私の主たる研究実践テーマである再犯防止・更生支援等にかかわる法務委員会には所属しておらず、いわゆる「法務族議員」でもありません。さらに言えば、私は山口県出身でもなければ、恥ずかしながら山口県にも行ったことがありません。
 では、なぜ、私が林議員のもとでのインターンを私が望んだのかを示したうえで本論に入りたいと思います。
 私の素志は、「国民目線の法律づくりと再犯防止・更生支援」であり、目指す国家ビジョンは「安全安心の笑顔あふれるくにづくり」です。2018年4月、松下政経塾に入塾して以来、自分自身の専門性を生かせる再犯防止・更生支援の研究・研修に注力をしてきました。その中で、「国民目線の法律づくり」をするためにも、より幅広く研究や研修をかさねる必要があると感じたのは、①子どもの教育、②食に関する問題、③安全保障という3点でした。

①子どもの教育に取り組もうと思ったのは、2019年2月に、北海道家庭学校という児童自立支援施設にて、非行をしてしまった子どもたちと生活を共にする経験をしたのがきっかけです。公教育や家庭環境が十分に整っていないことが非行の主たる原因になっていると強く感じました。7年間の塾講師をした経験もあり、私も一人の父親として教育について生涯かけて向き合っていくべき問題だと思っています。


写真2 北海道家庭学校にて
(2019年2月24日撮影)

②食に関する問題が重要だと気付いたのは、2019年6月、障がいを抱えた方たちとともに農作業の現場に入り、実習に入ってからでした。農福連携の現場で感じたのは、まさに農業には福祉力があり、人を回復させる効果があると肌で感じました。また、「食」という漢字が「人」を「良」くすると書くように、非行少年たちに食事を提供し、居場所づくりをしている元保護司の中本忠子さんにもお会いして、より一層、食が重要であると思うようになりました。


写真3 農福連携実習
(2019年6月18日撮影)

③外交・安全保障については、2018年秋、CGS(陸上自衛隊幹部学校)の方々との合同研修や富士学校での自衛隊生活体験研修をしていく中で、国家防衛の在り方を考えさせてもらう機会をいただきました。「安全安心なくにづくり」をする上で、より国際的な外交・安全保障の知識は、政治家として必要不可欠であると気付かされました。


写真4 自衛隊研修
(2018年10月24日撮影)

 松下政経塾に入塾してから、松下政経塾出身の国会議員の先輩にお会いする機会やご指導いただく機会に多く恵まれてきました。そこで、実践課程に入ってからは、松下政経塾出身ではない国会議員のもとでインターンをしたいと思っていました。さらに、教育・農業・防衛の3分野について、「自分の言葉」で政策を語ることが出来る政治家のもとで国会インターンをしたいと考えました。そんなときに、林議員の秘書の方とお話しする機会をいただきました。林議員といえば、25年にわたる国会議員経験を有し、防衛大臣、内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)、農林水産大臣、文部科学大臣を歴任し、現在は参議院憲法審査会会長や税制調査会小委員会委員長代理、日中友好議員連盟会長など幅広い分野で活躍されています。素晴らしいご縁をいただいたと思い、秘書の方を通じて、林議員への面会を申し込みました。
 日を改めて、政策通として知られる林議員にお会いしました。林議員のもとで、政治家とはどうあるべきかを学び、スケールの大きな政治家になりたいという思いを素直に伝えたところ、快くインターン生として引き受けていただきました。

2、学び続ける強さ

(1)会議・打合せは真剣勝負


写真5 政務調査会の冒頭挨拶の様子
(2020年2月25日撮影)

 林議員の1日は多忙を極めます。
 朝食を取りながら、政党の政務調査会から始まる日もあります。GIGAスクール構想(小中学校の児童生徒にPC端末を整備するなど学校のICT環境整備を行う文部科学省の政策)、量子技術やAI技術など最先端技術の利活用、著作権法改正など様々な分野において、先進的な取り組みをしている企業や個人からのヒアリングや、提出法案や予算案について担当官庁からの説明を受けたうえで質疑や意見交換を重ね、政党としての方向性を示していきます。
 このときのファシリテーターや意見集約がなんとも上手だと思いました。それぞれの意見集約をし、論点を明確にしていくのです。司法の世界でも、お互いの主張が入り乱れることが多く、分かりやすく主張と証拠を解きほぐし整理してくれる職人のような裁判官が稀にいらっしゃるのですが、林議員には似たものを感じました。
 また、こういった政務調査会を行う前に、各省庁の審議官が法案説明やヒアリング概要に関する事前レクチャーを行うため、林議員の部屋に訪れます。そのときの官僚の方々の緊張感が、同室しているインターン生の私にも伝わってきます。林議員は、1秒たりとも時間を無駄にしませんし、何よりも、各省庁の取り組みを横断的に俯瞰しているので、段取りが十分でなかったり、説明に穴があるとすぐ見抜かれてしまいます。
 しかし、当該会議や打ち合わせ次第で国民の生活に大きな影響を与えることもあるのですから、この緊張感はあって然るべきだと思いますし、国会議員の仕事が、行政へのチェック機能という一面を有しており、国民の代表者であることからすれば、事前レクチャーといえども、一回一回が真剣勝負なのだと改めて思いました。そして、真剣勝負を終えた後、ちょっとした雑談をして、緊張を解いてから会議を締めるのも人柄だなぁと感じました。

(2)衆知を集める


写真6 学生たちとの活発な意見交換
(2020年2月6日撮影)

 コロナウィルスの感染拡大防止のため、一部状況は変わってしまっているようですが、毎週末、地元の山口県に戻り、地元の声に耳を傾けることも忘れません。国会にいると最先端・最新の事例を受け取ることが出来ますが、地元の声の全てが国会に届くわけではないからです。
 また、日中友好議員連盟の会長である林議員に対中国外交について話を聞きたい学生、今後の大学教育の在り方について考える専門家たちなど多くの企業や学生などの訪問も積極的に受け入れています。質問にも時間の許す限り、真剣に答え、様々な意見に対し、アンテナを張り続けていました。
 議員会館でのインターン生も快く引き受けています。25年間の中で受け入れたインターン生の人数は151人(私が151番目のインターン生)です。国会議員の仕事を知ってもらうとともに、学生は就職をするにあたって、政治を身近に感じることで、どんな風に社会に貢献していくべきなのか考える機会となっているようです。歴代のインターン生が集まるような会を開いてインターン生同士のつながりも出来ました。また、林議員が講演やテレビ収録を行うときは現場に駆けつけて一緒に見学をさせてもらったり、勉強会では受付などのお手伝いをさせてもらったりもします。インターン生の意見や質問にも真摯に耳を傾けてくださり、まさに「衆知を集める」実践をしていることがよく分かりました。

(3)「朝食勉強会」という学びの場


写真7 朝食勉強会の様子
(2020年1月28日撮影)

 皆さんは、「政治資金パーティ」と聞いてどんなイメージを抱くでしょう。
 夜、華やかなホテルで、食べ物とお酒を囲みながら、政治家や企業の社長をはじめ有力者や支援者が、金屏風の前で次々と登壇をして順番に演説をするというものではないでしょうか。私自身、あまり多くの政治資金パーティに行ったことがありませんが、多くの政治資金パーティがそのような形式をとっていると思います。
 私が驚いたのは、林議員が主催する政治資金パーティが「朝食勉強会」という形式をとっていることです。当然お酒が出ることはなく、お弁当を食べて、コーヒーを飲みながら80枚近くの分厚い資料をもとに林議員の話を聞くというスタイルをとっています。資料の中には、最新事例や具体的な数字を盛り込んだ現状分析から導き出された今後の政策などが詳細に掲げられています。この朝食勉強会は、決して華やかではなく、非常に地味な活動ではありますが、難しい話を分かりやすく、噛み砕き、ポイントをしっかり伝えるという本来政治家に求められる非常に重要な役割を果たしていると感じました。

3、政治家に求められる人間力


写真8 家族や秘書が永年勤続25年表彰を祝う
(2020年2月14日撮影)

 選挙特集番組で、厳しい質問をぶつける辛口有名司会者に対し、理詰めで迫り、やりこめてしまう林議員のイメージが強かったので、初めてお会いするまで、少し怖い人なのではと勝手に思っていました。
 しかし、実際お会いしてみると、「人たらし」だと感じました。決して上から物を言うこともなく、変に下から媚びるような態度もしません。相手が議員、官僚、秘書、インターン、誰であろうが、対等な目線に合わせて話をしてくださるのです。
 どんなに頭が良くても、どんなに世界に重要な政策であろうと、「この政治家は嫌い」と思われてしまえば、この民主主義を基礎とした日本ではどんな政策でも実現できません。不利益を被る人であっても「この政治家がやることなら仕方ない」と納得してもらえるような人間力を鍛えなければならないと思いました。


写真9 議員会館に飾られている書
(2020年7月22日撮影)

 「実るほど頭の垂れる稲穂かな」
 林議員の父親である林義郎先生(元衆議院議員、通商産業省官僚出身、厚生大臣・大蔵大臣を歴任)の書が、議員会館の部屋に飾られています。そして、林議員自身も、常々、政治は謙虚に、かつ丁寧に行うべきだとおっしゃっていました。
 人たらしで、謙虚かつ丁寧に仕事をされているからこそ、25年間、国会議員として政治の最前線に立ち続けられているのだと感じました。また、こうした人間力があるからこそ、秘書の離職率が低く、長期にわたり支え続けたいと思わせているのだと思います。

5、おわりに

 「政治には期待しない」「政治家なんて誰がやっても一緒」「民間の方がスピード感ある」という声を多く耳にします。政治をあきらめてしまいたくなる気持ちはよく分かります。
 かくいう私も社会人になるまでは、ずっと政治アレルギーでした。政策が語られない選挙や、何を言っているのかよく分からない国会答弁などにウンザリしていたのも事実です。だからこそ、立法や行政が取りこぼした人たちのために、司法の現場で戦っていこうと思っていました。しかし、弁護士となり、法律や制度がどれだけ人々の生活に影響を与えるかを目の前で見てきました。政治をあきらめてはいけないと強く感じ、松下政経塾に入塾しました。
 そして、今回のインターンを通じ、法律や制度を作っている最前線の現場を見せていただいたことで、必ず自分も、この場で、多くの人たちの生活を幸せなものにするために活動し、尽力していきたいという思いが強くなりました。何よりも、政治は「命を守る仕事」だということも、今回のコロナ禍で痛いほど身に沁みました。
 しっかりと自分のビジョンを示し、具体的な政策を自分の言葉で語り、国民の皆さんに支えられ応援される政治家を目指していきます。そのためには、学び続ける姿勢、学んだことをしっかりと広める伝達力、そして謙虚さを含む人間力の3つが大切なポイントだと学びました。図らずも、「素直な心で衆知を集め、自修自得で事の本質を究め、日に新たな生成発展の道を求めよう」という毎朝唱和している松下政経塾の塾訓に辿り着きました。
 2020年にはコロナによる経済的打撃や、九州豪雨による水害などの疫病・災害で多くの方々が影響を受けています。このような危機的状況だからこそ、多くの方々が幸せになるための政策をしっかりと考え、語っていきたいと思います。謙虚、感謝の心を忘れず、邁進してまいりたいと思います。社会に訪れた闇夜を照らす一筋の光に、私はなりたいと思います。
 最後になりましたが、快く長期にわたるインターンを引き受けて下さった林芳正議員、秘書の皆様方に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。


写真10 闇夜に浮かび上がる国会議事堂
(2019年12月13日撮影)


写真11 インターンの様子
(2020年1月15日撮影)

(写真・著者)

2020年8月 執筆
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