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実践活動報告(その3) ~松下政経塾・塾員会賞を受賞して~

平成28年度より、松下政経塾審査会の最高得点者に松下政経塾の卒塾者の集まりである塾員会から「塾員会賞」が贈られることとなった。大変栄誉なことに、筆者はその第一回目の賞を頂く事ができた。本稿では、普段お世話になっている五島および長崎の皆様へ御礼を込め、筆者の活動の現状についてご報告する。

 松下政経塾の塾生は年2回、各自の活動に対し審査が行われる。審査は、「取り組む社会課題の現状分析・解決アプローチ」や「今後の活動計画と将来の実践」に関する内容など多岐にわたる項目について行われる。塾生にとってポイントとなるのは、一定以上の評価を獲得できなければそれ以降の活動計画の見直しが必要であるという点であり、自身の活動が引き続き実施できるか否かの節目ともなる。



 筆者はこの4月より、NPO法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会(以下、クラスター協議会)のコーディネーターとして五島に居を移し活動を始めた。同時に、五島市再生可能エネルギー産業育成研究会(以下、育成研究会)のコーディネーターも兼務させて頂き、五島における海洋エネルギー産業に地元企業が参画する機会を拡大する役割を担わせて頂いている。

 具体的な日々の活動としては、既報の通り、2016年7月には公益財団法人日本財団様からの助成を受け、「君の未来を体感しよう!海洋産業フェスタ in Nagasaki」を実施し、長崎県下における海洋エネルギーに対する啓発稼働を行わせて頂いた[1]。また、同年8月からは長崎県様の補助事業「洋上風車メンテナンス拠点化形成推進」をクラスター協議会の一因として調査ならびに具体的検討作業を行っている。これらと並行し、育成研究会の勉強会をおよそ2ヶ月に1度、五島市様と地元産業界の皆様と一緒に行わせて頂いている。



 ところで、筆者が何故、五島に居を移してこれら活動を行っているのかという点について既にご存知の方もいらっしゃると思うが、一言でいうと五島の持つ可能性とビジョンに強く魅了されたためである。五島列島はエネルギー自給率を高め、それによって外部からエネルギー資源を調達する費用を少なくし、ゆくゆくはエネルギーを外部に輸出する事まで可能な日本でも稀有な地域である。そして、もしこれが実現すれば島内経済における負担の一つとなっているエネルギー資源調達コストが内部化され、地域経済の活性化に寄与することができると考えている[2]。

 五島市も自治体としてその可能性を追求しており、平成26(2014)年に策定された「五島市再生可能エネルギー基本構想[3,4]」では、平成42(2030)年までに、海洋エネルギーによる自給率100%以上を目指すと明記されている。筆者は松下政経塾1、2年次の基礎課程中、国内の様々な場所を訪問させて頂いたが、その中で、五島市の具体的なビジョンおよびロードマップと、その実現に向けて着実に歩み始めていた事に大変強い感銘を受けた。そこで、実践課程の3年次より、五島市への移住を決め、活動を開始したのである。



 今回の審査会のプレゼンでは、上述した五島での活動状況に加え、この上半期で行った講演・講義や論文執筆、委員会出席状況なども報告した。大変有難いことに、最近は多方面からお声かけ頂く事が多く、2016年4月より11月までで以下の実績を残す事ができた。




表1. 委員等実績一覧(2016年11月末日時点)



表2. 講演・講義実績一覧(2016年11月末日時点)



 ただし、これら活動の多くが前職等でご関係を持たせて頂いた方からお声かけが多く、どうしても学術寄りの場での講演が多かった。一方、筆者は五島で活動する中で、これら五島で行われている世界最先端の取組みが、関係者以外にそれほどど知られていないという事を感じることがある。今後、エネルギー自立の視点における五島の魅力について五島の皆様と一緒に共有するような取り組みも行っていきたいと考えている。



 さて、以上の内容を審査会にてご報告差し上げたところ、大変有難いことに、審査対象全12件の発表中最高得点を頂く事ができた。私の行っている活動のほぼ全ては、私一人で行っているのではなく、五島および長崎の様々な関係者の皆様と一緒にやらせて頂いており、その意味でも、五島および長崎が目指そうとしている事に対して今回、評価を頂いたと考えている。また、最高得点を頂けたことから、平成28年度の塾員会総会にて、松下政経塾の諸先輩を前にして五島での取り組みをお話させて頂く機会を頂いたが、何人かの先輩から、「今度、五島に行くよ。」と仰っていただいた。五島の取組みを少しでも多くの方に知って頂くという点で、微力ながらお役に立てた部分もあったのではないかと思っている。

 海洋エネルギー導入の取組みはわが国でもまだ始まったばかりであり、現実のプロジェクトの中では様々な課題が山積している。しかしながら、ポテンシャルの大きな「洋上風車」および「潮流発電」が地域に受け入れられ運転され始めることは、五島はもちろんのこと、ひいてはわが国のエネルギー自給率を大幅に向上させ、将来、エネルギーを他国と融通するまでに至る可能性を持っている。五島のため、また日本のために、引き続き貢献できる人物になれるよう、五島での研修ならびに研究活動を今後も継続していきたい。




図1. 塾員会での活動報告




図2. 塾員会賞の授与式(第1期:逢沢一郎塾員より)



謝辞

 本賞の受賞は、五島および長崎にて関わりを持たせて頂いております皆様および塾で小生の活動を支えて下さっております職員の皆様のお蔭であり、いつもご指導、ご鞭撻いただいておりますことへの感謝をここに記させて頂きます。

 とりわけ、福江商工会議所の清瀧会頭様、白石様、早瀬様、五島市再生可能エネルギー推進室の井川室長様、北川室長補佐様、古賀係長様、三井主査様、大座様、荒木様、出口様、小浦様、長崎海洋産業クラスター形成推進協議会の坂井理事長様、小松副理事長様、高比良事務局長様、松浦統括コーディネーター様、松尾事業コーディネーター様、サイモンロバートソンコーディネーター様、北川様、海際様、戸田建設の佐藤部長様、野又所長様、牛上課長様、中村様、(有)イー・ウィンドの橋本社長様、田上専務様、渋谷潜水工業の渋谷社長様、渋谷課長様、杉内課長様、平野様、長崎大学の山本教授様、長崎総合科学大学の池上特命教授様、松岡准教授様、九電みらいエナジーの寺崎本部長様、清原課長様、江島様、日本財団の吉田室長様、石川様、青柳様、中嶋様、長崎県の廣田局長様、森田課長様、明石課長様、山田課長補佐様、中村係長様、田尻様、石川様、時津様、岩松様、九州大学の板岡教授様、広瀬招聘教授様、柳様、谷グリーンエネルギー研究所の谷様には、多岐にわたりご支援頂いておりますこと、この場をお借りして深く御礼申し上げます。今後とも変わらぬご指導を頂けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 最後に、無理を言って五島に一緒に来てもらった妻いぶきと、妻の異動を許して下さった、福岡大学の宮本教授様、長崎大学の増﨑教授様、妻を受け入れて下さった五島中央病院の皆様にもこの場をお借りして御礼申し上げます。



参考文献


[1]木村誠一郎: 実践活動報告(その2)~日本財団・海と日本プロジェクト「海洋産業フェスタ in Nagasaki」の取り組み~(https://www.mskj.or.jp/report/3357.html), 松下政経塾・実践活動報告(2016)

[2]木村誠一郎: 2045年エネルギー融通国に向けた私の挑戦(https://www.mskj.or.jp/report/3353.html), 松下政経塾・塾生研究レポート(2016)

[3]五島市: 五島市再生可能エネルギー基本構想, http://www.city.goto.nagasaki.jp/contents/city_ad/pdf/saiene_kihonkousou.pdf(2014)

[4]五島市: 五島市再生可能エネルギー前期基本計画, http://www.city.goto.nagasaki.jp/contents/city_ad/pdf/saiene_zenkikeikaku.pdf(2014)


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Seiichiro Kimura

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木村 誠一郎

きむら・せいいちろう

(一社)離島エネルギー研究所 代表理事/(公財)自然エネルギー財団 上級研究員

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