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長崎県五島列島の福江島に移り、早や4ヶ月になろうとしている。インターン先としてお世話になっている「NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会」において初めに任せて頂いたプロジェクトは、海洋エネルギーについて県内の皆様に広く知ってもらうためのイベントであった。その取り組みについて報告する。
筆者が実践研修の現場として活動する長崎県は日本有数の海洋県である。島の数は日本で最も多く、また、海岸線の長さは北海道に続き日本で二番目である。また、離島が多いため県域は東西213km、南北307kmと九州本土と匹敵する広さとなっている。このような地理的特性は長崎に水産業や造船業などの海洋産業を育み、さらに近年では「海洋再生可能エネルギー」に関連する分野に注目が集まりつつある。
2014年には長崎県内外の企業が出資した「NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会(以下、協議会)」が発足、関連分野への参入や、付随する事業創出への取り組みを開始した。協議会自体も主体者となり、海洋再生可能エネルギーに関する設備の設計・製造や、潮流発電装置の実証の取り組みを始めている。徐々にではあるが、様々な取り組みを通じ、協議会は当該分野の中核となりつつある。
筆者は「エネルギー融通国ニッポン」の実現を目指し、3年前、松下政経塾に入塾した。今年4月から開始した『実践活動』では、そのミニチュア版となる「エネルギー融通地域」を長崎県五島列島に作ることを目指し、協議会のコーディネータとして活動を始めた。五島は洋上風力発電設備や潮流発電装置が実際に設置される海域であり、同時に様々な課題に直面する現場である。実践活動ではそれら課題解決に少しでも貢献すると共に、実際に地場エネルギーへの開発投資が雇用を生み、域内総生産を引き上げることを実証したいと考えている。
さて、五島に移り、協議会のコーディネータとしてはじめて任せて頂いたプロジェクトは長崎で始まりつつある海洋再生可能エネルギーの取り組みを広く知ってもらうためのイベント「日本財団・海と日本プロジェクト 海洋産業フェスタin Nagasaki」であった。協議会にとっても初めてのイベントであり、助成申請から段取り、実施まで全て手探りの中でプロジェクトを実施した。
(海洋産業フェスタ in Nagasakiのチラシ)
イベントは7月16日(土)から18日(祝:海の日)に長崎県美術館にて開催した。助成採択が4月下旬にずれ込んだことから、実際に準備が始まったのはゴールデンウィーク後となった。協議会事務局と一緒にプロジェクトチームを発足させ、関係機関および企業への趣意説明とご協力をお願いする日々が続いた。とりわけ苦労したのが「協賛金のお願い」と「イベント内容の検討」であった。
協賛金については助成額の関係から、本イベントのためだけに200万円以上を集める必要があった。また、幅広い方々に興味を持ってもらうためのイベントをどのように行うか、連日議論が続いた。
(深夜までおよぶ企画会議の様子)
実質的に2ヶ月しか準備時間が無い中、本当にイベントを成功させることができるのか頭を悩ませることも何度となくあったが、徐々に協力が集まった。協賛金については最終的に32社・団体様が趣旨に賛同してくださり、とりわけ長崎商工会議所からの全面的なバックアップを頂けた。
イベントの中身については“体感型コンセプト”のもと、海のお仕事を色々と体感してもらうアイデアが生まれ、それを展示やイベントの形で具現化するよう努めた。とりわけ、渋谷潜水工業様にご協力いただいた「潜水士体験」、長崎大学工学部山本郁夫先生にご協力いただいた「水中探査ロボット操作体験」、長崎総合科学大学工学部松岡和彦先生にご協力いただいた「ソーラーボート操船体験」、日本風力エネルギー学会・五島市の皆様にご協力いただいた「浮体式ペットボトル洋上風車作成体験」など、実際に身体を使って感じるイベントを中核に据えた。それらに加え、「海のお仕事体験館」を設け、海中ロボット、浮体式洋上風車、海洋資源開発などの展示と説明を行うべく準備を行った。
当日の運営には長崎大学、長崎総合科学大学を始めとする学生ボランティアをはじめ、長崎新社会人ネットワークの皆様にも随分とお手伝いいただいた。
(イベント当日の様子/左上:潜水士体験、左下:イルカ型海中ロボット、右上:長崎海洋大使報告会、右下:ソーラーボート操船体験)
物心両面で多くの方からお力をお借りした結果、三日間ののべ来場者数は七千人以上となり、盛況のうちにイベントを終了する事が出来た。テレビやラジオ、新聞でも広く取り上げられ、とりわけKTNテレビ長崎では報道番組で計4回の特集を組んで頂いた。今回のイベントの趣旨である「長崎で海洋エネルギーについての取り組みが始まっていることを、県内の皆様に広く知ってもらう」ということについては、一定の成果が得られたのではないかと思う。
(イベント運営スタッフと筆者)
同時に、今回のイベントを通して自分自身の至らなさも改めて気づかされた。松下政経塾生として3年目に入ったが、なかなか自分自身の性根というものは変わっていない事に気づかされ、日々精進が必要だと思わされることも多かった。
以上、この4ヶ月で実施した「海洋産業フェスタ in Nagasaki」について報告した。長崎の海洋産業および海洋エネルギーの取り組みにとっても一定の成果が得られ、また、私自身にとっても実りの多い取り組みであった。
最後に、今回のイベントにご協賛・ご協力いただきました皆様、当日お手伝い下さった皆様、そして、企画段階から一緒に取り組ませて頂きました高比良様、大串様、森永様、押田様、平様にこの場をおかりして深く御礼申し上げます。
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Seiichiro Kimura
第35期
きむら・せいいちろう
(一社)離島エネルギー研究所 代表理事/(公財)自然エネルギー財団 上級研究員/九州大学 招聘准教授
Mission
「2045年エネルギー融通国ニッポン」の実現