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実践活動報告~日本財団×ベネッセ子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 後編(3)~

実践活動報告~日本財団×ベネッセ子どもの貧困対策プロジェクト 理念作成編 後編(3)~

私は大阪府箕面市において日本財団×ベネッセのプロジェクトに参画し、現場マネージャーとして活動している。本レポートでは、みのお拠点の理念、特に運営趣意書について説明する。そしてレポートの最後に、理念と共にプロジェクトを進めていく決意を述べる。
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 私たちの理念は次の5つである。外部向けに発信するメッセージ性の強い➀スローガン、私たちが目指すものを表す②綱領、スタッフが目指す人材を示す③信条、スタッフの日々の心構えである④心得、みのお拠点の存在意義と基本方針を文章で示した⑤運営趣意書、の5つである。本レポートでは⑤運営趣意書について説明する。
 
<運営趣意書>
 
 現在、日本には大量の物が溢れている。大多数の国民は物の豊かさを享受し、食べ物に困らず生活している。
 
 しかし、現代の日本においても、貧困は社会問題となっている。特に深刻な問題となっているのが、貧困の連鎖である。貧困の連鎖とは、低所得世帯の子ども達が、将来低所得者になる可能性が高く、貧困から抜け出すことができないことを指す。子どもを取り巻く環境は、子どもの学歴に影響し、また、物事に取り組む意欲にも大いに影響する。学歴は収入との結びつきが強く、意欲はすべての根幹である。これが、貧困の連鎖する構造である。私たちは、子ども達がこの連鎖を断ち切る力を潜在的に備えていると考えている。では、この力を適切に引き出し、育んでいくためにはどうすればいいのであろうか。
 
 私たちは国内外の研究成果を踏まえ、貧困の連鎖を断ち切る力を生き抜く力と定義し、子ども達の生き抜く力を育みたいと考えている。生き抜く力とは、果敢に挑戦する力、自ら考え選ぶ力、状況を冷静に振り返る力、仲間と関係を構築し協力する力、最後までやり抜く力の総称である。そして、この生き抜く力を育む場所として特に、次の2つを兼ね備えていることが重要である。
 
 1つは、そこが子ども達にとってほっと一息つける居場所であることである。そのような居場所が、子どもの心に安らぎを与え、さらなる意欲を育むのである。これは、生き抜く力を育むうえでの土台である。2つ目は、そこに子ども達に寄り添いながら、そっと背中を後押しする大人が存在することである。もっとも、子どもには人生を生き抜いていく力が潜在的に備わっている。だからこそ、私たち大人の使命は、子ども達の生き抜く力を最大限に引き出す環境を整え、成長を見守り、適切な助言を施すことなのである。
 
 私たちはこのような想いから、心から安心できる居場所をつくり、子ども達に寄り添いながら豊富で多様な体験を提供し、子どもと親に適切なサポートを実施することを決意した。これらの取り組みを通して、私たちは子ども達の生き抜く力を育みたいと考えている。
 
 将来生き抜く力を体得した子ども達が貧困の連鎖を断ち切り、それぞれの人生を歩んでいくとき、生まれた環境に左右されず、自らの力で人生を切り拓ける社会が実現すると、私たちは確信している。よって、私たちはこのような思いから、施設を運営していく次第である。
 
                             平成29年11月15日
 
<理念と共に>
 
 約3か月かけてスタッフと共に理念を作成してきた。一人ひとり考え方が異なるために、全員が納得する理念の作成は簡単ではなかった。しかし、意見が対立しつつも、そこからより良いものをつくろうと工夫を施してきた。理念が完成した今、私は2つの気づきを得ている。
 1つは、理念づくりを通して、みのお拠点の存在意義と基本方針を全スタッフと共有できていることである。この理念は、スタッフ一人ひとりの頭と心を使い、振り絞ってできたものである。言葉1つ1つにスタッフの思いが込められている。そのような理念作成の過程を経て、現在スタッフは同じ方向を目指し、仕事に取り組んでいる。
 私たちが目指す社会の実現には、スタッフの一致団結は必須である。一致団結とは、心を1つにして共通の目標に向かって力を合わせることである。スタッフと共に進めてきた理念づくりは、スタッフが共通の目標に向かって力を合わせる取り組みであった。つまり、理念づくりは一致団結の手段でもあったのである。理念づくりの過程は、スタッフに理念が浸透していく過程でもあった。みのお拠点には個性豊かなスタッフが揃っており、スタッフの考え方は十人十色である。しかし、理念については共通の考え方を全スタッフが持っている。
 もう1つの気づきは、理念が日々の判断基準になっているということである。これは、備品の購入という些細な仕事にも当てはまる。例えば、冬にこたつを購入するべきかを考える際にも、綱領に振り返って考える。どのようなものを揃えれば、ほっと一息つける居場所になり得るのであろうか、と。
 今後、活動が進んでくるにつれて、多種多様な仕事に追われることが予想される。子ども・保護者と向き合い、学校や市と連携し、視察・研修を受け入るなどが考えられる。まさにそのようなとき、理念は私たちの存在意義を再認識させ、日々の行動指針、判断基準となるのではないだろうか。これからも至る所で、理念の効用を実感しそうである。それを日々実感できることは今後の私の楽しみである。
 まだまだ私たちの航海は始まったばかりだ。これから荒れ狂う海に翻弄され、嵐の中を進まなければならない日もあるだろう。しかし、私たちには目指すべき方向を示した理念というコンパスを持っている。そして、その針が指し示す方向を全スタッフが信じている。日々少しずつでも前進し続ければ、目指す場所に到達できる。スタッフと力を合わせ、理念と共に歩み続けていく。

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山本 将

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