松下政経塾 The Matsushita Institute of
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2003年3月

塾生レポート

持続可能パフォーマンスの指標化
原田大/卒塾生

 
 企業や政府が活動していくにあたって、現在の社会では、社会・人権問題や環境問題などが、必須課題として突きつけられている。従来はこれらの分野における取り組みを負担と感じて渋々やるといった向きも多かったが、最近ではこれらの分野に積極的に取り組むことが、経済的な利益にもつながるという認識が広まりつつある。

 企業活動の例を見てみよう。最近は環境面の取り組みとして、ISO14001の取得や環境報告書の発行に取り組む企業も多い。こうした活動への評価は、金融市場の側からも注目度が高い。環境にいい活動をしている企業を投資対象としたエコファンドも、日本では1999年に発売されて話題になった。面白いのは、企業の側が、自社がエコファンドに組み込まれているかどうかに関して、非常に関心を持っているようだ。証券会社の話によれば、他のファンドでも自社の株式が組み込まれているかどうかの問い合わせはあるものの、エコファンドの場合は際立って関心が高いようである。また、ヨーロッパではダウ・ジョーンズ・サステイナビリティ・インデックス(DJSI)という、環境にいい活動をしている業界のトップ企業に関するインデックスがある。こちらも1999年に導入されて以来、サステイナブルな企業のパフォーマンスが通常のダウ・ジョーンズで扱われている企業よりも高いことなどから、注目度は高い。企業のウェブサイトなどでも、シェル、コダックなど、自社がDJSIでどう扱われているかを紹介しているところもある。

 社会活動に関する部分でも、企業社会責任(Corporate Social Responsibility, CSR)や、それに伴う社会責任投資(Social Responsibility Investment, SRI)に対する関心が高まっている。代表的な株価指標としては、雇用・労働問題や人権問題を評価に組み入れたFTSE4Goodインデックスや、軍需産業やアルコール、タバコなどに関連する企業を除外するDomini400 Social Indexなど、いくつかの指標が開発され、注目を集めている。

 年金など大口の資金が、今後こうした環境指標、社会指標に基づいて本格的に動くようになると(実際、一部動いている)、これは企業行動、引いては社会行動を変える大きな要素となる。

 政府も、ひとつの事業主体としては、民間企業と同じように環境・社会両面から評価されるようになろう。特に地方自治体の場合、国民から選ばれて住んでもらえるかといったところから、今後は地方債の格付けといったとことにまで影響は及ぶと考えられる。

 また、政府にはひとつの事業主体という側面とは別に、社会のなかで活動する企業や団体などのアクターに対して、税・財政、法律・規制などを通して影響を与えるという側面もある。例えば、先ほどの年金の話をすれば、公的年金(約150兆円)、郵貯資金(約250兆円)、簡保資金(約110兆円)などの半公的な資金を環境指標や社会指標にしたがって優先的に運用したときのインパクトは、計り知れない。また、税制による社会誘導の例として、オランダの例を紹介しよう。オランダでは、社会的な投資に対し、個人一人あたり約450万円の控除が認められている。中央銀行と財務省は、風力発電などのグリーン事業を認定し、それに対して投資しているファンドの配当が非課税になるのである。このグリーン事業の内容としては、森林景観および有機農法に関する「自然プロジェクト」、風力発電、太陽光発電、水力発電に関する「自然エネルギープロジェクト」、エネルギー効率がよく、環境にやさしい素材を使用し、環境負荷の少ない建築方法を取った住宅建設に関する「住宅プロジェクト」、「自転車」、「環境技術」などが対象とされている。この優遇税制政策は、政府による直接投資政策と比べて、33倍の効果があったという。1997年のある特定のグリーン・ファンドで見た場合、グリーン・ファンドを通して民間資金を呼び込んだ場合は8億3000万ベルギーフランでできたものを、政府の直接投資で行った場合には280億2000万ベルギーフランの費用がかかっていたという試算結果がでている。

 このように、指標の作成、税制措置などによって社会システムを動かすことにより、大きな政策効果が期待できる。今後公的部門は、政策目的に従って自立的に民間資金が動くような指標、システム作りを、積極的に行っていくべきであろう。もちろん、その前提として、自らのパフォーマンスをさまざまな指標で計って証明していくことも重要である。

2003年3月 執筆
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