論考

Thesis

エコ社会への道 ~誰にでも簡単にできるエコ活動~

環境にいいことを始めようと思ったときの最大の問題は、何をしたらいいのかわからないということと、大変そうに見えるということ。普通は何かしようと思っても、ゴミの分別とか電気をこまめに消すというくらいしか思いつかないだろうし、横断幕を掲げて企業や官庁に乗り込んでいくのはちょっと勘弁、という場合が多いのではなかろうか。ところが最近は普段の買い物やちょっとしたイベントから地域通貨、募金といったものまで、気楽に参加できるものがそろってきている。

 まずは買い物。生活を維持するには誰でも、食べ物はもちろん洋服から日用品まで消費することは必要である。このときに、環境にいい生活をしたいから環境にいい商品を使おうと思っても、普通の店では売っていなかったり、たとえあったとしてもたくさんの商品が並んでいる中から選び出すのはなかなか大変である。この問題を解決してくれるのが“エコシティ21”というインターネット上のショッピングモール。このサイトでは有機無農薬野菜からオーガニックコットンの洋服、古い日本家屋の建材を再利用して作られた家具から無添加せっけんまで手に入れることができる。さらには環境汚染や添加物などが気になる、赤ちゃんを育てているお母さん向けの情報コーナーや、一味違った旅をしたい人向けに、旅先で環境修復活動をする旅行の案内などもある。ここまで何でもそろうエコ・ショッピングサイトは、日本初であろう。

エコシティ21へは、http://ecocity21.com

 環境に関するイベントも盛り上がりを見せている。日本ではあまり知られていないが、4月の22日はアースディ(地球の日)。これにあわせて東京・新宿の代々木公園とパークタワーを会場として、4月の20日から22日までアースディイベントがあった。作家のC.W.ニコル氏などが呼びかけている。広い公園の青い空の下で休日の午後を過ごす。参加するのに肩を張る必要のないイベントである。代々木公園会場ではフリーマーケットなどが開催され、パークタワー会場ではライヴトークや環境配慮型商品をもつ企業の展示販売会であるエコメッセなども行われた。

 アースディイベントの中に地域通貨LETSに関するライブセッションがあり、最近環境問題にも積極的に取り組んでいる坂本龍一も登場した。地域通貨の話題はあとで詳しく紹介するとして、ライブ後に行われた彼のインタビューから一つ。坂本氏によると、芸術が果たせる役割は環境問題をヴィジュアライズすること。例えば地雷撤去運動だと、手足のない子供たちの映像などが人々の共感を呼び、賛同者を集めている。しかし地球環境問題ということになるとなかなかイメージしづらい。ブッダみたいな人が出てこないと、とはいいつつも、環境問題を簡単に納得できるような形にできたらいいと述べていた。4月25日に坂本龍一氏プロデュースの新しいCD『ZERO LANDMIMNE』が発売されているが、このCDの売上は地雷撲滅キャンペーンに寄付される。こういうタイプの活動は芸術家のチャリティ活動として広くイメージされ、普通の人も積極的にかどうかは別として多く参加している。

インタヴューの詳細は、http://www.ecocity21.com/ecotimes/index.html
坂本龍一氏のサイトは、http://www.sitesakamoto.com/

 一方、円やドルとは違う新しい「マネー」を発行して、社会を根本的に変えていこうとする試みもある。それが各種の地域通貨である。地域通貨とは、各国中央銀行の発行する通貨とは別に、ある特定のコミュニティの中で通用する独自の通貨のこと。イメージとしては、よく小学生が父の日・母の日に送る「肩たたき券」のようなものだと考えればわかりやすい。地域通貨はいろいろなものが考え出されているが、LETSは元祖とも言えるもの。マイケル・リントン氏とエルニー・ヤコブ氏が創設したもので、カナダでは既に実用実験がされている。そしてこれから日本でも普及に向けた活動が始まっていく。環境問題を始め、コミュニティの崩壊、貧困などの根本的な問題点が現在のマネーシステムによってもたらされているとすれば、それに対する構造的変革を求める挑戦である。アースディイベントに参加していた「BeGood Cafe」でも、実際にレインボーリングという地域通貨が使われていた。その他にも、エコマネーという地域通貨が実際に試験運用されている。

LETSについての詳細は、
http://www.j-lets.net/(日本語)
http://www.openmoney.org/(英語)
レインボーリングについての詳細は、http://www.matsuri.net/rring/
エコマネーについての詳細は、http://www.ecomoney.net/

 もっと積極的に環境活動に関わりたいと思ったら、各種のNPO
GOのメンバーとなることもできる。しかし忙しくて労働力は提供できないという場合、募金をするというのも一つの方法である。しかしコンビニの店頭や街角でユニセフの募金箱を見ることはあっても、他のものについては知り合いでもいない限りよくわからないという面もあった。この状態を解決するのが“ぼきんやドットコム”。このサイトではいろんなNPO
GOの情報を得る事ができ、自分の気に入ったNPO
GOがあればネットショッピングとまったく同じ感覚で寄付することができる。きちんと領収書をとっておけば(送ってもらえる)税制面でも優遇されるので、従来より寄付もやりやすくなっただろう。

ぼきんやドットコムは、http://bokinya.com/

 このように最近は環境貢献が楽しく簡単にできるようになってきている。環境問題を解決する上で一番大切なのは、自分で何ができるのかを考えて、できる範囲のことからちょっとづつでも始めること。大げさに考えて自分にはできないと思ったり、自分ひとりが何かしても大海の一滴にすぎないとあきらめてしまっては、じりじりと環境は悪化し続け気づいたときには手遅れになってしまう。環境活動の質も大切であるが、多くのひとが気軽に参加できるように多様な活動を広めていくことがキーポイントになる。


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原田大の論考

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Dai Harada

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第21期

原田 大

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地域通貨を活用した新しい社会モデルの構築 環境配慮型社会の創造

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