研修活動塾生による、現在までの研修活動を一部ご紹介いたします。

2017年 1月

研修活動3・4年目 「幸せな生き方~生きづらい時代の克服~」シンポジウム

松本彩/松下政経塾第34期生

「幸せな生き方~生きづらい時代の克服~」シンポジウム[1] 「幸せな生き方~生きづらい時代の克服~」シンポジウム[1] 「幸せな生き方~生きづらい時代の克服~」シンポジウム[1]
 1月22日 千葉県松戸市民劇場にてシンポジウム「幸せな生き方~生きづらい時代の克服~」を実施いたしました。
 
 線維筋痛症という病気を抱えた当事者、石村桂子氏を迎え、松戸市議会議員の山中啓之塾員と現役医師の高橋宏和塾員とともにシンポジウムを開催いたしました。
 当日は約40名ご参加頂き、ワークショップ形式を中心に会場全体で生きづらさについて考えました。
 
 第一部は石村さん御本人の声からスタートしました。
 線維筋痛症は全国で200万人*いると推測されている病気です。しかし、原因もきちんと解明されておらず、治療法がない上、難病指定がされていないという現状にあり、認知度も低い病気です。私も石村さんに出会うまで、この病気を知りませんでした。
 全身が常に痛く、日によっては激痛で動けない日もあると話してくれました。彼女が訴える病気を抱えた辛さは、全身の痛み、病気の見えづらさ、経済的な不安、治療できないこと、合う薬がないこと、当たり前のことができないこと、の6つだそうです。私は彼女の痛みや不安の100%全てを理解することはできませんが、このシンポジウムを通して様々な不安や生きづらさと闘っていることを知りました。
 
 その後、第一部のワークショップでは会場の皆様から線維筋痛症の生きづらさについてイメージをしてもらい、話し合って、解決策の提案を発表して頂きました。短い時間の中での話し合いでしたが、「病気をまず知ってもらうために講演活動をしたり、ブログを書いたりしてはどうか」や「現実から逃げても良いのではないか」、「完治した人の事例を探してその人がどのようなプロセスで治ったのかを知ってはどうか」など様々な意見が出てきました。
 
 第二部では生きづらさ全般に焦点を当ててワークショップを実施いたしました。参加者それぞれの方に自分自身の生きづらさについて話し合い、発表してもらいました。多くの方々が「人間関係」について挙げていたことがとても印象的でした。
 
 今回のシンポジウムを通して感じたことは、皆、それぞれ何かしらの生きづらさを持っているということです。そしてその生きづらさを作り出しているのもまた私たち自身だということも強く感じました。
 生きづらさを解消するにはほんの少しだけお互いにお互いのことを相手の立場に立って考えることが大切なのではないでしょうか。そのためには、まずはわかってもらえるように自分が生きづらいと思っていることを整理し、言葉にし、伝えることが必要だと考えます。私自身もできることからやっていこうと思います。
 
 週末の大切な時間にわざわざ会場まで足をお運び頂きました皆様、また、様々な形でご支援頂きました皆様、本当にありがとうございました。
 今回のフォーラムが次の誰かのために繋がる活動となるよう、頑張って参ります。
 今後ともご指導、ご鞭撻のほどお願いいたします。
 
<出典>
*1 http://www.jfsa.or.jp/page0101.html(線維筋痛症友の会HP)

2016年 12月

研修活動3・4年目 実践活動報告~子どもの貧困の現場から学んだ、居場所づくりの重要性~

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~子どもの貧困の現場から学んだ、居場所づくりの重要性~[1] 実践活動報告~子どもの貧困の現場から学んだ、居場所づくりの重要性~[1]
今回の活動報告では、子どもの貧困の現場である西淀川子どもセンターでのスタッフ業務を通じて、学んだことを報告いたします。
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 ‘子ども食堂’という、様々な家庭環境にある子どもに食事を提供する活動は昨今ブームで、多くの場所で取り組まれています。またその他にも、学習支援や、レク活動に力を入れている団体もあります。 そのような中、心の葛藤を抱える子ども達に、心の拠り所となる居場所を作りたいという思いで活動しているNPO法人があります。それは、大阪府西淀川区にある西淀川子どもセンターです。私は2年前から子どもセンターとご縁を頂き、現在、スタッフとして活動に参加しています。活動内容は、子ども達と一緒にご飯を作って食べたり、学習支援をおこなったり、キャンプに一緒に行く活動など幅広く行っています。このレポートでは、スタッフとして活動して見えてきた、子どもの貧困の現場での率直な気づきについて報告いたします。
 
1.外部評価がされにくい活動
 
 活動に参加してまず感じたことは、このような活動に対しての成果が表現しにくく、分かりにくい、また、行政などの機関に成果を報告しにくいということです。特に、子どもセンターのように心の拠り所をつくることに力を入れている団体では、それを客観的な数値などで表すことが簡単ではありません。これは、学習支援の成果と比較して考えれば分かりやすいと思います。学習支援の場合、テストが何点上がった、どこの高校、大学に何名進学した、ということが数値として示すことが簡単です。そのため、その活動の評価が得られやすい傾向にあります。その一方、子ども達の居場所作りの活動となると、‘子どもの顔色が変わった’‘子どもの発話の回数が増えた’というような報告になります。そのため、活動の価値を的確に伝えることは課題の1つであります。
 正直に言えば、私も活動に参加した当初、これらの成果をどのように捉えていいのか分かりませんでした。しかし、子どもセンターに来て、変わっていく子ども達を目の当たりにして、私の考えも変わりました。そもそもセンターに来る子ども達が置かれている状況は、想像以上に深刻であり、現状を分かっていなかったと痛感しました。
 
2.複雑な状況下の子供達
 
 子どもセンターに来る子ども達の置かれている状況は様々です。そのため、私達スタッフが安易に話しかけると、想定していない答えが返ってくることがあります。例えば、「兄弟は何人?」と聞くと、「最初は2人で、途中で2人増えて、今は4人になった。」、「学校は楽しい?」と聞くと「1学期から全く行ってない」という答えが返ってきます。また、子どもセンターでは、主に夕ご飯を提供していますが、土日に来る子ども達は、朝ご飯、昼ご飯を食べずにセンターにやってきます。休日は、給食がないために、子ども達はお腹を空かして過ごすことが多いのです。同じ理由で、「夏休みが早く終わればいいのに…」とつぶやいた子どももいました。2017年の日本で、このような現実があります。
 
3.居場所づくりの重要性
 
 多くの子ども達と触れ合う中で、特に、居場所づくりの重要性を痛感した体験があります。それは大志くん(仮名、中学生)との出会いです。私が会った当初は、ほとんど発話をしない子どもでした。発話をしない以前に、顔もまともに見てくれない状態でした。しかし、一緒に料理をつくったり、遊んだりする中でコミュニケーションを取り、少しずつ発話の回数が増え、声の大きさも徐々に大きくなっていきます。そして、率先して料理や手伝いをしてくれるようになり、自分よりも年下の子ども達の面倒を見るようになります。最近では、勉強がしたいという本人の希望で、英語、数学の学習にも積極的に取り組んでいます。出会った当初は、何か思い悩んでいるような暗い表情でしたが、何かに取り組みだしたことが原因なのか、顔色もよく、少しイキイキとし始めました。
 私はこの体験から、そもそも人間はとても弱い存在であり、安心安全な居場所がなければ、意欲的に行動することができないと感じています。誰かが関心をもってくれている、誰かが見ていてくれている、そういった自分の居場所があるということが、精神の安定だけでなく、さらなる行動の一歩を踏み出すために必要であると思います。
 
 引き続き、子どもセンターでの活動を通じて子どもの貧困の現状を知り、また、子ども達と関わる中で、どのような支援が求められているのかを探求していきます。

2016年 9月

研修活動3・4年目 実践活動報告~貧困の連鎖をいかに断ち切るか、フィリピンでの経験と大阪での講演から~

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~貧困の連鎖をいかに断ち切るか、フィリピンでの経験と大阪での講演から~[1] 実践活動報告~貧困の連鎖をいかに断ち切るか、フィリピンでの経験と大阪での講演から~[1] 実践活動報告~貧困の連鎖をいかに断ち切るか、フィリピンでの経験と大阪での講演から~[1]
3年目も半年を過ぎ、残り半年となりました。今回の活動報告では、フィリピンでの研修と大阪府茨木市でさせて頂いた講演についてご報告します。
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 近年、日本国内において、「貧困の連鎖」という言葉をよく耳にします。では、「貧困の連鎖」が続いた結果、貧困が固定化してしまった社会とはどのようなものなのでしょうか。また、貧困の連鎖を断ち切る方法を考えるために、考慮すべき点とはどのような点なのでしょうか。日本語学校でのボランティアスタッフをおこないながら、そこで感じたスラム地区の貧困についてレポートします。
 
 貧困から脱出するには教育が重要であることは当然ですが、教育だけでは貧困を解決することはできず、貧困を形成している要因は複雑であるということを痛感しました。フィリピンでは特に、クラブメンタリティーという考え方が貧困形成に大きく影響しています。クラブメンタリティーとは、貧困から脱出しようとする人がいると、その人の足を引っ張り、再び貧困に戻そうとする考え方です。例えば、出稼ぎに行くチャンスを掴む人がいても、家族や親族がその一人の給与を頼りにします。そのために、いくら一人が稼いでも貯蓄をすることが難しく、生活環境がなかなか改善されないという現状があります。現地の多くの若者からもこのクラブメンタリティーの考えがフィリピンに根付いているということを伺いました。貧困の連鎖を断ち切るには、社会に根付く考え方や社会の成り立ちをつぶさに考える必要があります。
 また、支援が充実していることにより、自立心が育まれない状況も生まれています。フィリピンでは、様々な貧困世帯を支援する活動があります。食事の提供から仕事の提供まで大変幅広くおこなわれています。しかし、支援が多いことが生む負の面も生じています。スラム地域の子供たちを雇い、マニラで自然食レストランを経営するユニカセの中村八千代さんからも「スラム地域の子ども達は、何もしなくても食事を得ることができる。そのために、仕事を一生懸命しようとする意欲があまり高くない。」と伺いました。支援を充実させながら自立心を育むような支援とはどのようなものなのか、考え続けなければならない点だと思います。
 貧困から脱出するために、脱出したいという思いが重要であることは言うまでもありません。その思いを阻害するものをなるべく少なくし、育むためにはどうすればいいのか。貧困の連鎖を断ち切るために考慮しなければならない重要な点として、フィリピンでの学びを今後に活かしていきたいと思います。
 
 また、出身の大阪府茨木市において、貧困の連鎖を断ち切るための就学前の取り組みの重要性とこれからの就学前教育について講演させて頂きました。PHPほんわか女子の会の皆様が企画して下さり、当日は茨木市からだけでなく京都や滋賀、遠くは東京から総勢40名の方が足を運んでくださりました。子育てを経験された、また、まさに真っ最中の皆様から、乳幼児期の子育ての悩みや疑問など率直なご意見も伺うことができました。今後の就学前の在り方を考える上で、専門家や研究者だけでなく、実際に子育てをされている皆さまのご意見は貴重であると考えています。この場を借りて、PHPほんわか女子の会の皆様、ご参加頂いた皆様に御礼申しあけます。
 
 引き続き、次世代の子供達が親の所得や家庭環境に関わらず、より良い教育の機会を享受できる社会の実現を目指して、力を尽くしてまいります。

2016年 8月

研修活動3・4年目 アメリカの移民第二世代を日本ファンに

佐野裕太/松下政経塾第34期生

アメリカの移民第二世代を日本ファンに[1]
自身のルーツが持つ歴史的因縁に拘泥しないアメリカのアジア系移民第二世代をいかにして日本ファンにしていくのか。日本の広報文化外交は彼らの信頼を勝ち取るために尽力をするべきです。
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 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、戦略的利益を共有する国々との関係をより強くしていくことが重要になっています。私は7月末から8月末までアメリカに滞在し、専門家・実務家へのインタビューやシンポジウムへの出席を通して、強固な日米関係の基礎となる好ましい対日世論を形成するために必要なことは何かを探ってきました。その中で、2つのことを強く感じました。
 1つは、アジア太平洋地域で生じている問題に対する日本政府の対策や考え方を、アメリカ社会に正確に伝えられる日本人専門家をワシントンDCでいかに増やしていくのか、という点です。ワシントンDCには大小多くのシンクタンクが存在しており、多岐にわたる政治関連分野の研究を行うと同時に、一般の人々も参加できるシンポジウムを頻繁に開催しています。ワシントンDCでのこれらの研究や議論は、米国政治や米国世論はもちろん、国際社会全体に大きな影響を及ぼしています。誤った情報に基づく日本に関する論評が行われないためにも、日本の立場を正しく説明できる専門家の存在がとても重要ですが、中国・韓国等に比べてアメリカにおける日本人研究者の数は少ないのが現状です。
 もう1つは、アメリカ国内のアジア系住民の考えや動きを正しく理解することの重要性です。領土や歴史認識といった近隣諸国と競合する問題が、アメリカなど第三国を舞台に争われるようになってきていることは、日本国内においても認知されるようになってきました。しかし、アメリカ国内におけるアジア系住民のあり様についてはまだまだ理解されていません。アメリカの大都市や西海岸ではアジア系人口が増加しており、彼らの存在感を無視することはできません。選挙においても、特定のエスニック集団が集住している地域においては、候補者は彼らの声に耳を傾けることが欠かせなくなります。特に、韓国系移民第一世代の中には反日的な感情を持っている人もおり、日本に対抗的なロビー活動が活発化しないためにも、日本としては彼らの動向に注視する必要があります。一方で、アメリカで生まれ教育を受けた第二世代は、第一世代とは異なり、日本に対してアンビバレントな感情ではなく好意的な思いしか持っていない人も多くいます。自身のルーツが持つ歴史的因縁に拘泥しないアジア系移民第二世代をいかにして日本ファンにしていくのか。日本の広報文化外交は彼らの信頼を勝ち取るために尽力をするべきです。そして、それこそが日本が歴史問題を乗り越えていくための一歩になるかもしれません。
 今回のアメリカ滞在で知り得た日本の課題に対して私自身がどのように貢献できるのか。今後は、このアジア系移民第二世代を日本ファンとして取り込んでいくための具体策を立案していきたいと思います。

2016年 7月

研修活動3・4年目 起業大国アメリカの苦悩から学んだこと

斎藤勇士アレックス/松下政経塾第34期生

起業大国アメリカの苦悩から学んだこと[1]
 2015年8月から1年間、ワシントンDCにおいて活動しました。この間、米国連邦議会での勤務等を通じて見た米国は、産業構造の変化から取り残され、そして格差の拡大に怒りを募らせた有権者が作り出した大きな政治の「うねり」に翻弄され続けていました。トランプ氏とサンダース上院議員という代弁者を見出したその「うねり」は、トランプ氏が共和党の大統領候補に選出されたことで、少なくとも11月の本選までは米国を揺さぶり続けることになります。
 
 米国は世界最大の「起業大国」と言っても過言では無いと思います。古くは繊維や鉄鋼、より最近では家電や自動車産業、パソコンなど、それまで米国を支えた産業の競争力が衰えても、そのたびに起業家が現れ新しい事業を起こし、あるいは既存の大企業が大胆に事業領域の転換に成功するなどして、米国全体としての経済は拡大してきました。2008年の恐慌以降の経済成長も、日本やヨーロッパの先進国と比べて、米国は最も高い伸び率を維持していますが、その源泉の一つが、シリコンバレーにみられるような活発な起業活動なのです。
 
 一方で、米国社会の格差の問題は、ベンチャー集積地として経済的なブームを謳歌している都市でこそ顕著に現れます。私はワシントンDCから日本への帰路の途中、テキサス州のオースティン市や、シリコンバレーを抱えるサンフランシスコ市など、ベンチャー企業で栄える都市を訪問しましたが、ホームレスの人数の多さに驚きました。特に、サンフランシスコ市では、都市中心部でもあらゆる通りに多数の物乞いが居て、小銭を要求されることなく5分も歩くことは不可能です。
 シリコンバレーで働く人や起業家などはサンフランシスコに住宅を求め、彼らの収入の高さも相まって住宅価格が急騰し続けています。米国の大都市にはシェルターと呼ばれる公的なホームレス用の宿泊施設が多数存在し、ホームレスであってもそのような場所で寝泊まりする人が大多数ですが、子供連れの家庭が家賃の上昇で住居を失いシェルターに寝泊まりするようになり、独身男性のホームレスが路上にあふれ出す結果になっているというのです。
 
 1年間のワシントンDCでの滞在や、米国内の各都市への訪問を通じて、活発な起業活動やイノベーションを通じて、生産性を高め、地域経済を活性化し、そして国際競争力を維持する米国の経済システムの強みを多く見出しました。しかし、ホームレス問題などが示すように、今の米国の状況は、「一部の富裕層や成功した起業家がまず豊かになり、やがてそれが昔ながらの仕事に就いているような人も含めた中間層以下にも "自然と" 広がっていく」という経済モデルの限界を示しています。また同時に、ベンチャー企業などが生み出すイノベーションは、経済を成長させたとしても、雇用の喪失につながる場合が多いことも事実です(ロボットや人工知能など)。イノベーションなどを通じて競争力ある企業を増やし経済のけん引役を生み出すことは引き続き私の研究・活動の主眼ですが、健全な再分配政策の下で、「平均」ではなく、あらゆる人々が安心して生活を送れる仕組みを同時に整えていかないようでは、国民の福祉は向上しないばかりか、社会不安が起こりかねません。
 残り半年の政経塾生としての期間は、この点を肝に銘じながら、国民全体の豊かさにつながる経済政策をまとめて行きたいと思います。

2016年 6月

研修活動3・4年目 実践活動報告~教育格差是正にむけた就学前の取り組み~

山本将/松下政経塾第35期生

実践活動報告~教育格差是正にむけた就学前の取り組み~[1]
二年間の基礎課程を終え、三年目の実践課程を迎えることになった。現在、ふるさとである大阪府の茨木市を中心に自身のテーマの探求を行っている。
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 「もっと早い年齢からの支援があればいいのに…」
 
 教育格差是正に向けて取り組んでいる現場で良く耳にした言葉である。なぜそのような言葉が良く聞かれるのかと言うと、就学前の取り組みが子どもの非認知能力(学習意欲や労働意欲・努力・忍耐力)の形成に大きく関係しているからである。その証左の1つとして、就学前の段階での取り組みがその後の人生(高校進学率、大学卒業率、持ち家率、平均所得など)に大きな影響を及ぼすことが指摘されている。まさに「三つ子の魂は百まで」という諺通り、就学前段階での取り組みが重要であると言える。
 
 就学前の取り組みが子どもの非認知能力(学習意欲や労働意欲・努力・忍耐力など)を高めるということは、就学前の取り組みいかんによって、その後の支援や制度の効果を高めることにつながるのである。また、非認知能力を形成する重要な時期であるにもかかわらず、この時期の子どもへの関与は各家庭に強く依存しており、また家庭以外のアクターが強く関与しにくいことを踏まえると、ここに大きな教育格差が隠れていると言えるのではないだろうか。
 
 上記の点から、「教育格差の是正~就学前段階における取り組みの必要性~」をテーマに実践課程を行っている。実際の活動としては、地元の大阪府茨木市に戻り、就学前における子ども(家庭)の状況を把握する活動と就学前におこなわれている教育の現状を知る活動を行ってきた。
 
 前者で言えば、大阪府におけるひとり親家庭などの様々な家庭の生活の現状を知るために関係各所からヒアリングを行い、また、実際に親御さんからお話を伺う活動を行ってきた。後者では、保育園や幼稚園、主に大阪で行われている子育て中のお母さんの居場所作り活動を見学・ヒアリングを行ってきた。ただ、ここでは幼児教育自体を考察するよりも幼児教育の現場と親との関係や、親や家庭教育に及ぼす効果を調査している。未就学児は家庭で過ごす時間が多いために家庭での取り組みが重要であることは言うまでもないが、家庭のみが子育てに携わるのではなく、子育てサロンやつどいの広場といったコミュニティが母親の精神面の支えとして、また、幼稚園無償化などの制度が金銭面のサポートとして必要であると痛感している。 
 
 今後は、子育て中の親を支えたり、子育ての学びになる地域コミュニティがさらに機能するための考察を進めていく。また、大阪市が5歳児の幼稚園無償化の取り組みを今年度からスタートさせたこともあり、大阪市の事例の研究等から1歳児や3歳児からの無償化の実現可能性も考えていきたい。

2016年 5月

研修活動3・4年目 インドネシアで自国の魅力を伝える世界の国々

佐野裕太/松下政経塾第34期生

インドネシアで自国の魅力を伝える世界の国々[1]
民主化が進み、人口増加を続ける世界最大のイスラム国家インドネシアで、各国が自国のイメージ向上のため、積極的な広報文化活動を行っています。
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 私は、松下政経塾において、日本の広報外交をテーマに研究を行っています。今年の1月から3月まで、対ASEAN諸国の広報外交に関する情報収集のため、ジャカルタを拠点に、東南アジア地域で研修活動を行ってきました。
 
 インドネシアは人口2億5900万人の地域大国で、世界最大のイスラム国家でもあります。民主化が進み、人口増加を続けるこの国に、世界の注目が集まっています。その首都のジャカルタは、世界屈指のメガシティで、ASEAN事務局をはじめ、各国政府代表部、国際機関、多国籍企業などが集まっています。
 世界の多くの主要国は、自国の情報文化発信施設をジャカルタに置いています。私が見学・インタビューのために訪れた中から、3つをご紹介したいと思います。いずれの施設も、その国ごとの特色が顕著に出ており、日本が学ぶことのできる点が多くありました。
 
 米国の広報文化施設”@America”は、中心部の巨大ショッピングモール”Pacific Mall Place”の中に置かれており、“買い物のついでに”感覚で行くことができます。モール社会であるインドネシアの特性をよく分析した上での立地で、交通の不便なジャカルタにおいて“行きやすさ”はとても大切な基準だと思いました。中の大きなホールでは米国の有識者や著名人の講演が頻繁に行われており、米国の大学に留学したいと思わせるような仕組みになっています。
 “@America”の入っているモールのすぐ向かいのビルには、韓国文化院があります。日本では下火になっている韓流文化の人気も、東南アジアでは依然として高いものがあります。サムスン製の大きなテレビからは、韓国を紹介する魅力的な映像が流れており、韓国文化を体験できるコーナーもありました。
 一番スタイリッシュなのは、フランスの”IFI”でしょうか。大使館に併設しているため、警備が厳重で外観も無機質ですが、一歩敷地内に入ると、ビストロがあり、オシャレなオブジェがあり、美的センスはやはり抜群です。ジャカルタにいながらパリ気分が味わえるといった感じでした。
 
 インドネシアにいると、多くのインドネシア人が日本に親近感を持っていることを感じます。しかし、昨年のジャカルタ・バンドン高速鉄道の受注競争で中国に負けたことが象徴しているように、新興諸国の台頭によって、戦後日本が築いてきた信用・信頼だけでは国際競争に太刀打ちできない時代になってきました。この現象はインドネシアのみならず、東南アジア全体、世界全体に広がっていくのだと思います。各国は、自国のイメージ向上のため、積極的な広報活動をしています。刻々と変わる国際情勢の中で、日本の良さをより積極的・より効果的にアピールするために何をするべきなのかを常に考え続けなければならないと強く感じました。
 一方で、競争的側面のみではなく、多国間で協力して広報外交をしていくこともこれからの時代には必要になってくると思いました。例えば、韓国文化院の職員の方へのインタビューの中で、日本の国際交流基金との間で情報交換などの交流も行っているとの話を聞きました。広報外交の世界において、日本と韓国とはライバル関係になることが多いですが、今後は共通の利益に基づいて協力できることもあるかもしれません。また、米国の研究者の中には、“@America”を他の東南アジア諸国も含めた多国間交流のためにも活用するべきだとの声もあります。既存の価値観にとらわれない形での広報外交を考えていくべきではないでしょうか。
 
 現場で得た学びを生かしながら、卒塾まで残り1年を切った松下政経塾での研修を進めていきたいと思っています。
研修活動3・4年目 トランプ旋風に翻弄されるワシントンDCにて

斎藤勇士アレックス/松下政経塾第34期生

トランプ旋風に翻弄されるワシントンDCにて[1]
 34期生である私の松下政経塾生としての活動も、最終年度を迎えました。今年度の前半は引き続き米国連邦議会での研修を続け、その中で、米国や日米関係の考察も行いながら、私のテーマであるベンチャー企業振興策についての研究を進めています。
 
 米国連邦議会では、共和党の下院議員であるフレイシュマン議員(テネシー3区選出)の事務所に受け入れて頂き、米国の議員事務所の日々の業務に関わりながら、米国政治、経済の最新情勢に触れています。米国政治の大局的な動向を学ぶことはもちろん、議員事務所の日常業務に携わるという貴重な経験を通じて、米国の政治家がどのように有権者とのコミュニケーションを行っているのか、あるいはどのように自らの政策面での立場を検討、決定しているのかを現場で研修出来ています。私は卒塾後、政治家になることを志していますが、今回のワシントンDCでの経験は、自らの地元での政治活動と政治観・政策の立案の両面にとって極めて有益な機会になっています。
 
 米国政治の動向としては、やはり大統領選挙の年ということもあり、どうしても政治的な動き、関心は選挙の方に集中してしまっているのが実情です。トランプ氏を中心に、米国大統領選挙の話題は日本のメディアでも多く取り上げられていますが、一部のトランプ支持者やサンダース上院議員支持者の熱狂をよそに、ワシントンDCには何か無力感のようなものが漂っている気がします。前代未聞の選挙戦であると同時に、特にトランプ氏の日本に対する発言には困惑させられる一方ですが、米国憲法の第一章が「議会」であることにも表れているとおり、一般に理解されているよりも米国政治における大統領の権限は限られています。例えば、議会の承認無しに、予算の支出を伴う政策を大統領は実施することができませんし、大統領に議会を解散する権限は無い一方で、議会は、軽罪であっても大統領の不法行為を訴追し弾劾・罷免することができます。とはいっても、大統領の世論への訴求能力、アジェンダ設定能力は極めて高く、特に外交政策に対する影響は絶大なのも事実ですので、かつてない対応を日本政府が求められる事態になる可能性もあります。いずれにせよ、特に日本の立場からは、米国政治から目が離せない数か月になりそうです。
 
 私のワシントンDCでの残りの滞在は今夏までの短い期間ですので、あまりトランプ氏の動向ばかりに注目するのではなく、より長期的な視点で米国政治の将来を展望し、そして自らのテーマであるベンチャー企業振興策の研究に注力していく所存です。
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