Thesis
中国の西部大開発は、史上未曾有の大規模開発事業である。これを成功させるにはどうすればよいのか。私は、日本の全国総合開発の状況を調査し、開発の初期においては国家が主導する、開発の裏付けとなる法を早急に整備する、そして全国総合開発計画を制定すべきである、という結論に到達した。
2000年より、中国の西部大開発が本格的にスタートした。対象地域は、12省・市・自治区にわたり全国総面積の70%超、人口3億5500万人(全人口の28.5%)という、これまでにない大規模な開発計画である(※1)(図1)。
▲図1 |
この大開発の最終目標は、中国の経済建設の重点を東部地方から西部地方へとシフトさせることであり、それによって以下の点が改善されると考えられている。 (1) 国内の地域格差の縮小(1998年現在、東部と西部の経済格差は2倍以上に拡大している) しかし、西部の自然と経済的な基礎条件を考えたとき、この大開発が様々な困難に遭遇することは想像に難くない。既にいくつか問題に直面している。次の4点である。 (1) 環境問題:開発と環境保全の両立 日本の経験と教訓からの示唆 このような問題点を克服して大開発を成功させるために、私は日本の全国総合開発計画を先行事例として調査してきた。その結果、次の五つのポイントが中国の西部大開発の鍵を握ると判断した。 第一に、大開発の初期段階においては、開発は中央政府のコントロール下で行う。開発の規模と、国土の均衡的発展という政治的な目的を考慮すると国家的な取り組みでなければ実現できない。現在、各地方政府は大開発の機会を利用して、地元への利益・プロジェクト・資金を誘導するために互いに争っている。これは、日本が1950年代~60年代に特定地域総合開発計画と新産都市計画を推進した際に、各地域が対象地に選ばれようと激しい競争を繰り広げた状況に酷似している。このように、地方政府に大開発を委ねると、国土の均衡的な発展が損なわれる可能性がある。
(注1)『中国統計年鑑(1999年版)』中国統計出版社
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